ミーテの出自
「え、、、。」
ミーテは固まった。
マーリン学長は続ける。
「かつて魔王は多くの人々を吸魔鬼に変え命の魔力を奪わせていた。これは知っておるか?」
吸魔鬼?吸血鬼ならわかるけど。
「、、、はい。本で読んだことがあります。魔王と契約すると吸魔鬼になり人の血液から直接命の魔力を吸い取る事ができる。自然界から摂取する魔力よりも人間から奪う魔力の方が量も多く体に溜め込みやすい。ただ奪われた人間は命の源を失うから死んでしまう、確かそう書いてあったと記憶しています。」
「そうじゃ。我らの体には魔力が寿命としてある。魔王はその魔力を吸魔鬼を使い自らの妹、縁桜の中に溜めさせておった。そこで16年前、現国王は魔王討伐を掲げ兵をあげた。そなたの父ルドマンは魔法兵の1人として向かった。戦いは長引くかと思われた。しかし、縁桜が魔王討伐の際に此方に寝返り、魔王は無事に倒せた。それにより、魔王との契約が切れた吸魔鬼達は元の人間に戻った。まぁ、契約が切れたことで元吸魔鬼達はその後5~6年で亡くなってしまったのじゃが、、、。さて、ここからは機密事項じゃぞ。よいか? 」
お、おう。そういう過去があったのか。殆ど山で暮らしてたから、正直この世界について俺はまだまだ知らない事が多いな。
マーリン学長はミーテを見た。
「分かりました。」
ミーテは決意を固めた表情をした。
「縁桜は魔王の一族。そして体内には膨大な魔力がある。その事を知った国王は縁桜を秘密裏に処刑しようとした。だが処刑の日、ルドマンが縁桜を連れ出し、国外に逃亡した。」
か、駆け落ちだーーー!
「それじゃあ、私の父はこの国では、罪人になるってことですか!? 」
「まぁ、そういうことになる。」
「つまり、お父さんはこの国に助けてもらうことはできず、私はお母さんから魔力を受け継いだから魔王に狙われ、さらにはこの国の国王にも狙われ、下手したら、私、、、明日にでも処刑されるんじゃあ。」
ミーテの顔がどんどん青ざめてくる。
「ワン。」(大丈夫か、ミーテ?)
「トマト、私が死んだら、、、マーリン学長、トマトをお願いします。」
マーリン学長は首を振った。
「まだ死ぬとは決まっとらん。早とちりせんでくれ。ルドマンは確かに国王の命に背いたが公には魔王の一族は全て死んだことになっとる。ルドマンは表向き行方不明扱いじゃ。ルドマンがそなた達をわしの所に転送したのは、恐らくわしが縁桜の処刑に反対したからじゃ。安心せい。策はある。」
「どのような?」
「策を言う前に、そなた、掌を下に向けて、握り拳を作り、薬指だけを上げてみよ」
ミーテは言われた通りに薬指だけをスッと上げた。
「やはりルドマンの娘じゃ。魔法の才能がある。」
え?
今ので魔法の才能が有るか無いか判断すんの?確かに普通薬指だけを上げるのは難しいけど。
「先ず始めに、そなたは自らの魔力が膨大であることを隠すのじゃ。魔力草を食べた後に魔法を使うこと。そして魔道具でそなたの膨大な魔力を封印する事。そしてルドマンの娘であることを隠し、この国の平民出身としておくこと。次に、そなたはある貴族の養子となること。エマリカ学園に平民が入るには貴族の養子になるのが一般的じゃ。そしてエマリカ学園に入学する事。」
「何故わざわざエマリカ学園に入学しなければならないんですか?」
「先ずそなたは国外に出ると魔王に捕まる可能性がある。エマリカ国自体は国内の生態系を守るために非常に強い結界で覆われておる。外国からは虫一匹入れない。そなたがさっき襲われたと話した透明なカゲロウも入ることはできない。更にこのエマリカ学園にも別に結界がある。どんな魔法も通すことはない。それに、エマリカ学園なら、わしが色々助けることができる。そなたはこの学園で魔王に対抗できる力を磨くべきじゃ。」
「成る程。分かりました。」
俺はわかりません。いや、だって危険だろ?もし国王に見つかったら、、、その時はその時ってか?
「でも結界は転送魔法で越えられてしまうのでは?」
「転送魔法は何処でも転送出来るわけではない。転送魔法専用の特別な紙に色々と。」
ぐ~~~~~。
俺の腹の虫が鳴ってしまった。
ぐうー。
ミーテのお腹も鳴る。
そういや俺達夕食、食べてないな。
「こりゃいかん。若者が空腹では。あ、二人ともこっちに。」
マーリン学長に促され、俺達は書斎机の下に隠れた。
マーリン学長は天井に垂れ下がった紐を引っ張った。
チリンチリンと鈴の音が鳴る。
数分後、コンコンとドアをノックする音がした。
「入るがよい。」
ガチャリとドアが開き、執事服の男が立っていた。
「マーリン様、ご用件は?」
「ミルクティーとレモンティーとストレートティーとシチューとクロワッサン15個と魚のフライとサラダとゆで卵3個と厚切りのステーキ4枚頼む。」
「、、、そ、、、畏まりました。」
今、そんなに!? って言いかけたよな。
執事が出ていった後、俺達はソファに戻った。
「暫くしたら来るはずじゃ。」
一時間後
執事がサービスワゴンに注文の品を乗せて運んで来た。
その間俺達は書斎机に隠れる。
「食後にまたお呼びください。」
そう言って執事はドアを閉めて出ていった。
「さあさあ二人とも食べなさい。私も夕食としよう。」
マーリン学長がサービスワゴンから品をテーブルに並べていく。ミーテは取り皿にステーキを取り、俺の前に置いた。
いっただっきまーす。俺はステーキにかぶりついた。
美味しい!空腹に染み渡る肉汁!!!!
ミーテと俺はマーリン学長と一緒にその日の夕食を頂いた。
俺がステーキ1枚を平らげたところで顔を上げると、 ストレートティーを飲んでいたマーリン学長と目があった。
「そういえばその犬、トマトじゃったか。トマトは珍しい目の色をしておるな。オッドアイというやつか。」
ん? 俺の事だよな?
オッドアイ? 俺の目が?
ミーテが俺をひょいっと抱き上げてじっと俺の目を見つめる。
「右目が、、、緑になってる!?」
何故!?
「元々ではないのか?」
「いいえ。元々トマトの目は両目共に黒です。何で右目だけ緑色に? 」
「まさか、、、転送魔法の影響か? 転送魔法時に何か物が飛んで来たりとかはなかったか? 」
「そういえば、、、お父さんが何か投げてきたような。」
「ワン!」(あ!あれだ!緑色の石!俺にぶつけてきたあの石!)
でもそれがなんだってんだ?
「転送魔法の問題点の1つに混合というものがある。」
混合、、、嫌な予感がする。
「転送する際、不純物が転送魔法陣に入ると転送する物と混ざり合うことがある。」
「トマトの目に石が混じっちゃったってことですか?」
いー!!やーーーー!!!
「そういうことになる。」
肯定しないで~。
「何で父は石を投げたんでしょう?」
「転送魔法の混合は転送魔法陣内の一ヶ所でしか起きないと言われとる。もしかすると、その一ヶ所をトマトで起こさせて他を守るためだったのかもしれん。」
あのやろう! 俺を犠牲にしやがったのか。でも、ミーテに混合が起きないようにするためだったのなら、仕方ないのか?
今のところ視界は良好だ。
「治す方法は無いのですか?」
「混合を治せた事例は無い。」
マジかー。
「そうですか。トマト、大丈夫?」
「ワン。」(まぁ特に問題は無いし、大丈夫だ。)
若干不安はあるがな。
ミーテは心配そうに俺を見ている。
「転送魔法後には必ず24時間以内の健康チェックが必要とされとる。明日医者を呼ぶからその時に見てもらうと良い。まあ、今のところ大丈夫そうじゃ。」
「ありがとうございます。」
夕食が終わった後、マーリン学長は俺達を1つ下の階のゲストルームに泊めてくれた。そして風呂とベットとミーテの新しい服を貸してくれた。




