ルドマン視点、魔王と衝突
ミーテの父親視点
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッカーン!
遂に炎のドームは外側の透明な結界もろとも砕け散った。
結界も炎のドームも消え失せ、そこに一人の男が舞い降りた。
漆黒の髪と瞳をもち、黒地に金色のすすきの刺繍がギラギラと光る二重回しの外套をはおり、踵の高い黒いブーツを履いている。
目の上にはターコイズブルーのアイシャドウが引かれ、耳朶には大粒のアメジストのピアスが揺れ、そして首には蛍光パープルの布製のチョッカーを巻いている。
手に銀の扇を持ち、薬指にはトルコ石の指輪をはめ、爪には蛍光パープルのマニキュアを塗っている。
魔王だった。
「久しぶりねぇ。あら、老けたわね、ルドマン。さくらを拐かして何処に逃げたかと思ったら、まさか貴族のあんたがこんな別の国の山奥で暮らしていたとはね。漸く見つけたわ。さくらの娘を渡しなさい。」
「久しいな。魔王、縁飛魔。貴様はまるで年をとっていない。あの時、殺したと思っていたが。相変わらず毛羽毛羽しい格好だな。」
「お黙り。」
魔王は銀の扇を振った。
ヒュッ
風の切る音がした。
見えない刃物と化した風が迫ってくる。
カーン!
その攻撃は私の前で跳ね返り魔王に向かった。
魔王は銀の扇を広げ、それで受け止める。風の刃は離散した。
「あらまぁ。囮を使って時間稼ぎしてたから何の準備をしてるのかと思ったら、跳ね返すトラップを仕掛けてたとはねぇ。」
「どうやって囮と分かった? 」
「切ったら犬が出てきたもの。」
「貴様、私の娘を殺すつもりだったのか!? 」
「そりゃそうよぉ。殺したって溜め込んだ魔力は消えないもの。動くより動かない方が捕まえやすいじゃない。ん? 」
引っ掛かった!
私は魔法を跳ね返すついでにその風にのせて竜巻の魔法のトラップを仕掛けた。
今魔王の周りは魔王を中心に、刃物の様に切り刻む竜巻が高速回転している。
「レズチミルナイオオ! 」
私は素早く唱えた。
「ちょっと! 心中の魔法じゃないの! あんた、あたしと心中するつもり? 」
私の心臓から光の触手が伸び、竜巻ごと魔王を縛った。
「かつて貴様を殺したはずだったが、今こうして貴様は生きている。なら、かつての魔法では足りなかったということだ。」
「いきなり心中魔法出すなんて!? あんたも死ぬのよ? 解ってやってんの? 」
「貴様の顔を二度と見ないため、二度と貴様に私の大切な家族を縛らせないため! 私は、、、ここで命を懸ける! 」
「ちょ! ちょっと待って! ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!! 」
光の触手が魔王の体内の心臓に到達した。あとは引き出すだけだ。
「、、、なぁんてね。」
魔王はにやりと笑った。
「禍法、シラアビキ。」
魔王が唱えた途端、透明なカゲロウの大群が一斉に白い触手と竜巻の方に向かって来る。
カゲロウ達が白い触手に触れるとたちまち魔法は解け、離散した。更に竜巻の中にカゲロウ達が巻き込まれると竜巻も無くなってしまう。
私の魔力は尽きてしまった。
「ぐっ、、、。」
自身の命の魔力も使ったため私は膝をつく。息をするのも苦しい。
「残念だったわねぇ。折角使った魔法が水の泡になっちゃってぇ。あんたが魔法を使うまで待ってたのよぅ。そもそもその心中の魔法の開発者はあたしなんだから。さぞかし魔力を使ったでしょうねぇ。でも解いたから今あんたは魔法は使えないけど死なない程度の状態ってところかしらぁ。」
何てことだ。魔王は復活を遂げただけではなかった。進化している。
魔王は銀の扇で優雅に自分を扇いだ。
「変ねぇ。この家に娘がいるかと思ったけど、人の匂いがしないわねぇ。」
「な、、、何故そう、、、思う?」
「この扇はね、扇ぐと匂いで教えてくれるのよ。」
そう言って
魔王はこちらに近づくと、
ゴンッ
手に持っていた扇で私の後頭部を殴り付けた。
私は気を失った。
「ルドマン、あんたはまだ死なせない。大切な役割があるからねぇ。あたしと来てもらうわよ。さてと、どこへ行ったのやら。またさがさないとねぇ」