プロローグ 地獄に落ちました
本日お日柄もよく商売繁盛だった。
ただの紙切れなのに
「京のなんとか寺の高僧から頂いた水晶を練り込んだ御札です。」
と言って40万円。
エセパワーストーンで25万円。
さらにこれからカモになりそうな顧客3人get!
実にうまくいった。お日柄は別によくないか。今、どしゃ降りだし。ま、天気なんてどうでもいいや。
そう思い紫のフードを被った男は自分の占いの館を出た。
そして、昼食がてら近くのファミレスへ向かった。
道路に出ると、赤信号だった。
雨のなか信号が変わるのを待っていると、
グサッ
何が起こったか最初わからなかった。
自分の胸が真っ赤に染まり真ん中に鈍く光る包丁の先が見えた。
背後から刺された。
貫通している。
「死ね!、、、お前のせいで私は、、、私の人生は!」
低い女の声が聞こえた。
後ろを振り向くと、茶髪の、、、誰だっけ?
ああ、多分うちに前来ていた客だったかな?
さんざんカモにさせてもらったけど、そういや最近見なかったな。
薄れゆく意識のなか、その人の
「はははははははははははははははははは」
泣きながら笑う声が耳に残った。
目を開けると、目の前にはデカイ机とデカイ人が座っていた。
このデカイ人、顔が真っ赤だな。何となく閻魔大王っぽい。
「あの、ここは?」
「ここは地獄である。そしてわしは、閻魔だ。これから貴様の裁判を行う。まず名と職業を名乗れ。」
「、、、」
そうか、おれは死んで地獄に落ちたのか。自分の服を見ると血がついたままの服を着ていた。死装束は着せられてなかったようだ。
多分、葬式なんて無かっただろう。まぁ、当然だな。
閻魔が怒鳴った。
「さっさと名乗れ!」
「田中 一 職業サラリーマンです。」
とりあえず嘘ついてみた。
「、、、矢部倉坂マト、職業 詐欺師 だな。」
「知ってんじゃねぇか。でも詐欺師は違うな。占い師だよ。」
「似たようなもんだ。とりあえず嘘ついたからマイナス一点。」
マイナス?ポイント制なのか?
「嫌いな動物は?」
と閻魔は訊いてきた。
ポイント制なら本当のこと言った方がいいか。そもそも知ってるみたいだし。なら嘘つくだけ時間の無駄か。
「犬。」
「なぜだ?」
「人に媚び売って喜んでるのが嫌だな。特にトイプーとかさ。ああいう可愛いとか従順な犬見てるとイライラする。犬ってさ、人に従順だからって別に頭良かないしね。」
「ふむ。ひねくれておるな。」
悪かったな。ひねくれてて。この世は正しいことやってても生きていけないんだよ。
「うむ。こうしよう。お前は異世界地獄行きだ!!」
「は?」
もう判決出たの?早いだろ。なんだよこれ。異世界地獄ってなに?
「最近新しく作った地獄だ。貴様には異世界で転生してもらう。一番嫌いなものに生まれ変わってな。ついでに記憶はそのままで。」
「え?は?待、それなら記憶消してくれよ!」
「ではカウントダウンをはじめる。」
「まてまて!待ってくれ閻魔様!!」
「ニ」
「ニからかよ!」
「一」
今思えば、閻魔は俺の嫌いな動物を質問するまで把握してなかったんじゃないだろうか。
何故なら人の好き嫌いはその時その時で変化するからだ。
俺の名前と職業を当てられて更にポイントとか言うから、てっきり嘘つくと減点され、相手が全てを知ってると思い込んでしまった。
気付いたときにはもう遅かった。
「頼む!ストップ!」
「零。」
おれは光に包まれた。