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しゃんしゃんしゃん♪ジョナサン♪

葉は色付いたかと思ったらあっという間に散ってしまう。後には寂しい枝を残して、なんてな。


雪が降り始めた。


その日、俺は生後約5ヶ月となった。犬年齢8歳。

俺の毛は増え、ふわふわでもこもこになった。


暖かい暖炉のそばには小さめの木が置かれている。そのてっぺんには小さめのカボチャが乗せられていた。


「これはね、カボチャツリーになるのよ。」


とミーテが教えてくれたが、そもそもカボチャツリーとはなんだ?


「あと2日でメリーカボチャね。」


最早クリスマスなのかハロウィンなのか分からない。この国独特の習慣なのだろう。

因みに今日、遂に、町に行くのだ!


「マキマキ、トマト、行くよー。」


今日のミーテの格好は白のブラウスの上に赤い上下繋がったスカートを着ていた。


か、可愛い。オーバーオールやズボンしか見たことなかったからたまのスカートは可愛いさを倍増させる。

だが上から、焦げ茶色のフード付きコートで、すっぽり覆ってしまった。

寒いもんな。


「ワン!」(行くぜ!)


「ワン。」(I can't.僕は、やめておくよ~。)


え?な、なぜ?

そういえば、最近マキマキ先輩はあまり元気が無い。ひょっとしたら風邪気味なのかもしれない。


マキマキ先輩はそこから動かない。


マキマキ先輩が行きたくなさそうなのをミーテは察した。

マキマキ先輩には家で留守番してもらうことになった。


そりに乗って、ではなく、トナカイ、でなくて馬のトンキーに引かせた荷馬車に乗って山を下る。

一応荷車の通れる道がちゃんと、、、あるわけなかった。山の森の真ん中だからな。ではどうしたか。


まず、俺、ミーテ、ミーテの父親が荷馬車に乗る。

次にミーテの父親が左手の薬指を荷馬車に右手の薬指をトンキーに向けて

「クムモオウヨシウヨジ。」と唱える。


荷馬車が浮く。


そう、さながらサンタのそりの様に。


すっげー。このフワッとした浮遊感。ジェットコースターの落ちる瞬間みたいだ。もしかしたら飛行機の離陸の時もこんな感じなのかな。俺、飛行機乗った事無いんだよなぁ。


浮いた荷馬車は父親の手綱のコントロールによって、空を駈けていったのだ。


これ鈴ならせば完全なサンタじゃん!


「ワンワンワン♪」(しゃんしゃんしゃん♪)


「トマト楽しそうね。」


おっと、ついテンション上がってはしゃいでしまった。ちょっと恥ずい。


風を切って荷馬車が走る。荷馬車の外の景色を見ようと伸び上がったら、

「落ちちゃうよ。」

と言ってミーテは俺を抱えて一緒に眼下の景色を見せてくれた。


雪景色した山々は壮観だ! でも風冷て~。


景色は山から平地へと変わっていく。荷馬車が下降し始めた。

灰色の壁でぐるりと囲まれている町がだんだん近づいてきた。


荷馬車は町の門の前で降りた。


ここが町かー!


町に入る前に凛々しい軍服を着た兵士にミーテの父親が紙を見せている。


通行許可証とかかな。


手続きを済ますと門をくぐった。

目の前には、分厚い布を屋根にしている市場がづらりと並んでいる。

果物や野菜、そして赤やオレンジ色のカボチャツリーの飾り等ありとあらゆる物が売られていた。

その後ろに赤いレンガ造りの建物が建ち並んでいる。そこかしこにお洒落な緑のガス灯が設置されていた。


昼間だからまだ灯りは灯されてはいないが夜になれば綺麗だろうなぁ。


石畳の道をトンキーに引かせながらミーテ達は町の中を進んでいった。


やがて大きなレンガ造りのオークション会場と書かれた看板の建物に入っていった。因みにトンキーは外で待っている。


中は一段高い白い舞台がいくつも点在し舞台の前には腰かける椅子がづらりと並んでいた。


「じゃあ、お父さん行ってくるね。」


そう言ってミーテは奥の舞台に向かって行った。


舞台の前の椅子は既に席が埋まっている。


壇上の机の上に次から次へとトリュフが会場の係員によって並べられていく。ミーテの他にも何人か人が並んでいた。


この人達もトリュフ採りの人達だろうか。


係員は左端のトリュフを計りに置いた。そして、ガランガランと手に持っているベルを鳴らした。


「さあ、始まりました名付けてトリュフオークション!左の419グラムのトリュフから参ります!」


次々に手が上がり、8000円、8500円、9000円と値段が上げられていく。

日本円じゃん!ドルとかポンドじゃないのか!?


その時後ろから声をかけられた。


「こんにちは。ミーテのお父さん、ご無沙汰してます。」


爽やかな声が聞こえた。


振り返ると、ミーテより恐らく頭一つ分背の高い青年がいた。


暗めの蜜柑色の髪と瞳を持ち、顔はまあまあ整っている。

目立つ程ではないがイケメンである。


「久し振りだね、ジョナサン。」


こいつがジョナサン!?

ま、まぁ見た目は悪くない。問題は中身、そう中身だ!


ジョナサンは俺の頭を優しく撫でてきた。


なんだこの見事なソフトタッチは、警戒出来なかった。


「君がトマトだね、僕はジョナサン。宜しくね。」


、、、犬にまで自己紹介するとはな。恐れ入ったよ。だ、だが俺はほだされないぞ。

悪い所少しでも見つけてやる!

別に卑屈になってる訳じゃないぞ。あくまでもミーテを気にしてだな。


ジョナサンは俺の頭を撫で撫でしている。


う、嬉しくなんかないぞ!

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