ミーテと父親の食い違い
次の日、ミーテは二階からタイトルが【Survie】と書かれた分厚い本を持って、
「木の下で本を読んでくる。」
と言って家を出た。
俺も走ってその後に続く。
ミーテは昨日の木の根本のに着くと、分厚い本を置いて、鉄の箱を取りだし、貰った小包を開けた。
中には【基礎魔法参】と書かれた本があり、ミーテは周りを確認すると、その本と分厚い本【Survie】を交互に読み始めた。
何でそんなまどろっこしいことを?
もしかして、魔法を学んでることを隠してるのか?
そんでカモフラージュとして家から持ってきた本も読むってことか?
ミーテの側に回って本を覗きこむと、【Survie】は何語か解らない言語で書かれており、【基礎魔法参】はもちろん魔法の呪文などがなんと日本語で解説されていた。
てっきりミーテのペンダントに彫ってある、よくわからん記号で書かれているかと思ったが。
そういえば、最初ヨーロピアンな異世界だったからてっきり英語とかフランス語が使われるかと思ったが、今までずっと日本語しか聞いてないな。
その後もミーテを観察すると、ミーテは父親の前では決して魔法を使わなかった。ミーテが使うとしたら結界の外の川で魔法の練習をするぐらいだ。
マキマキ先輩に聞いてみたら、ミーテの父親は
「ミーテは魔法を使えない。そういう才能が無いんだ。それに無理に使おうとすると体を害する。」
とミーテに教えてきたそうだ。
だけどミーテは使ってる。体も健康そのものだ。妙だ。
疑問を抱えたまま穏やかに時は過ぎていった。
あれから、2ヶ月が経った。
季節は移ろい、緑の葉はいつのまにか、鮮やかな赤や黄色に色付いた。
さあ、遂に特訓の成果、トリュフ狩りの開始だ!
「マキマキ、トマト、Go! 」
ミーテの合図と共に俺とマキマキ先輩は走った。
最初にトリュフを見つけたのはマキマキ先輩だった。
流石先輩、熟練の嗅覚をお持ちだ。
俺も負けてはいられない。
あの独特の匂いを探して走り、結界の境までいくと、なんか強い匂いが、多分トリュフなんだろう。
「ワオーン! 」
俺が合図を送ったらミーテはスコップを手に持って駈けてきた。掘り起こすと、白っぽいものが見える。
あれ? トリュフじゃないかも? なんか、白いな。
でも匂いはトリュフだよな。もしかして、、、腐ったトリュフ?
「こ、これは! 」
ミーテが驚愕の表情を浮かべている。
ミーテでもこんな顔するんだな。
目を見開いて、口をあんぐりと開けている。
なんか、ちょっと間抜けなお顔(笑)
「白トリュフ!!!!!」
へ? 白トリュフ?
「凄いよ! トマト! これ凄いレア物だよ! 」
そうなん? 腐ってたとかじゃないのか。
マキマキ先輩も此方にやって来た。
「ワン! 」(白トリュフ見付けたんだね! Excellent! 僕は人生で二回しか見つけたことなかったけど、トマトは一発目で見付けられたんだね。これなら、僕のあとを頼めそうだ。)
「ワン。」(いえいえそれほどでも。)
なんだか照れくさくなってきた。
トリュフ探しは楽しい。見つかるまでは宝物探しのようでワクワクする。
結界の中でしか探せないが十分な広さだろう。走ってる時、俺はもう、犬の本能に任せることにした。楽しいから。
そして見つけるとミーテが褒めてくれる。これも犬の本能として嬉しい。犬の本能として、だ。
その後も探して、一日でトリュフ合計5つ見つかった。マキマキ先輩が3つ、俺は2つだ。
マキマキ先輩曰く冬になるまでにトリュフを採って町で売るそうだ。
町、あったんだ。山でミーテ達と駆け回る日々が長かったせいか町に対する実感がわかない。
「ワン。」(Once a year年に1回だけ町で買い出しを行うのさ。あ、ジョナサンにも会えるよ!会ったらきっとジョナサンがとても良いやつだとわかるはずさ♪。)
ほう、ジョナサンは町にいるのか。どんなやつかこの目と鼻で確かめてやる!
その夜、俺は夢を見た。
2回もおんなじ系統の夢ならさすがにまた俺の過去の話だとわかる。
俺は占いの館の中にいた。
水晶玉の前にあの茶髪の女
都舟山乃みい(とぶねやまの みい)が座っている。
彼女の両親は生まれたときに既におらず、母方の千葉県の田舎の農家の親戚に育てられた。
小さい頃は農家の手伝いをしていたが東京に憧れ、現在東京の広告会社で働いている。
母方の親戚の息子は結婚して農家を継いだので、自分も結婚を早くしたいと思っているそうだ。
だが彼氏さんの浮気が発覚。俺に相談というわけだ。
「私どうしたら!? 」
泣きながら頭を抱えている。
人は悲しみの縁で差しのべられた藁にすがりやすい。
「都舟山乃さん、つらかったでしょうねぇ。あなたはなにも悪く無いのに。全ては彼氏さんとその浮気相手のせいでしょう。」
「悔しい! 私、こんなに頑張って彼を支えてるのに。こんなに彼に合わせてるのに。」
「いい方法がありますよ。フコというのですけど、中国のおまじないである特別な壺の中に二つの名前を書くとその書かれた二人は別れるというのがあるんですよ。」
「本当ですか! ください! 」
「大丈夫ですか? 300万円ですよ? 」
「買います。」
もはやこいつはただの俺のATM。
今日までで1000万円以上費やしてくれた。
再び目の前が暗くなる。
夢が覚めるんだな。
相変わらず俺、最低だなぁ。こりゃ刺されても文句は言えないね。
ん? もしかして、俺刺したのこの夢の女か?
どうりで何度も夢見るわけだ。