気付いた想いは
ミーテは薬指を出して
「オノホオノホオノホオノホオノホ。」
と繰返し唱えると、ミーテの薬指の先に火の玉が出現した。
火出せるんだ!?
火打ち石、、、要らなくね?
そういえば、俺が助かったのってもしかしてミーテのこの投網に引っ掛かったから、、、。
ミーテは火の玉以外にも水の玉などを出現させたりして、色々と魔法の練習をしていた。
因みにマキマキ先輩は川で泳いでます。
マキマキ先輩は俺が川に入らないのを見て、
「ワン!」(Come on!トマト!一緒に泳ごう!)
と誘ってくれた。
「ワン。」(いや、俺はまだ泳げないので。)
川怖いんだよなぁ。
マキマキ先輩は川から上がってきた。
そして、俺の後ろに立ち、頭でぐいぐいと俺のお尻を押してきた。
まてまてまってよマキマキ先輩!
「ワン! 」(ちょちょっと! 無理無理無理! )
「ワン! 」(You can do it! )
そのまま川に落とされた。
何しやがる、このやろう。
俺は足を動かそうとしたが、恐怖で体が固まってしまった。
溺れる!
そう感じたとき、お腹を下から持ち上げられた。
見るとマキマキ先輩の頭が俺を持ち上げている。
「ワン。ワン! 」(誰でも始めは出来ないけど訓練すれば出来るようになる。Don't worry!! 溺れそうなら支えるよ。)
あ、あざっす! 良かった~。
と思ったのも束の間、マキマキ先輩は再び沈んだ。
俺はあわてて手足を動かした。
先輩は意外とスパルタ式なのかもしれない。できるまでやらされた。
だがこの訓練のおかげで俺は泳げるようになった。
ミーテが焼いた魚の串を持ってこちらに来た。
「マキマキ、トマト、そろそろ帰るよ。」
「ワン! 」(OK! )
「ワン。」(了解。)
疲れた~。
ミーテはもと来た道ではなく、別のルートを辿りだした。
なんでそっち?
「ワン? 」(マキマキ先輩、帰り道、違くないですか? )
「ワン。」(大丈夫。この道はポストによってから帰る道だから。)
ポスト、、、あったんだ。
暫く行くと森の中に黄色いポストがぽつんとあった。
こんな山奥、来れるかな郵便配達員。
ミーテはポストを開けて手紙と小包を確認し、ちょっと頬を染めた。
え、誰なの? 送り主。
何? 何でミーテそんなに嬉しそうなの? まさか、彼氏?
彼氏いるの?
マキマキ先輩に聞いてみた。
「ワン! 」(先輩! 誰なんです? あの小包の送り主は!? )
「ワン。」(Maybe多分幼なじみのジョナサンだと思うよ。)
「ワン! 」(彼氏!? )
「ワン。」( Who knowsさぁね、まだ告白とかは聞いてないけど。まだね。)
そ、そんなぁ。
俺は項垂れた。
「クーン。」(ガーン。)
「どうしたの? トマト、元気なさそうだけど。あ、川で遊んだから疲れちゃったのかな。」
そっちの疲れじゃなくて、心の傷が、、、あれ?
何で俺こんなにショック受けてるんだ?
マキマキ先輩は不思議そうにこちらを除き込んだ。
「ワン? 」(Wye? 何をそんなに落ち込んでるんだい? ジョナサンは良いやつだし、ミーテを本当に大切におもってくれてる。喜ぶところだよ? あ、もしかしてヤキモチかな? )
マキマキ先輩の言うとおりだ。
そうだ、俺は犬なんだぞ。一体何が悲しいっていうんだ?
まさか、俺、ミーテに、、、
いやいやいや俺は犬、そうだそんなおこがましい想いがあってたまるか。
「さ、帰ろっか。」
俺は努めて元気そうな声をあげた。
「ワン! 」(大丈夫! )
気のせい気のせい、きっとこの想いは飼い主の愛を独り占めできない子犬のヤキモチ。
決して人間の恋からくるものではない。