トリュフ犬訓練スタート! ゴールは目の前だ!
ミーテは黒いボールを持っていた。
「これを取ってきてね。」
そう言ってミーテは軽くボールを投げた。
ああ、犬の本能を自覚する日がくるとは。心が弾んでいる。俺は走ってボールを追いかけた。
楽しいよ。正直めっちゃ楽しいよ。でもこれは犬の本能。俺の本当の感情ではない。
ボールを見つけた。
よく見たら、このボール、外側が透明な容器で、中に黒くて表面ぶつぶつでちょっとキモい石の様な塊が1つ入っている。
そこから腐葉土のような、何とも言えない香りがする。
俺はそれをくわえてミーテのところまで戻った。
ミーテにボールを渡す。
めっちゃ撫でられた!
「よし!じゃあ次は。」
目の前にカボチャや魚の混ざった離乳食が出された。最近の俺の食事である。
ミーテは手を出して
「待て! 」
と言った。
その後、お座り、お手、おかわり、取ってこい、穴を掘れ、吠える等々難なくこなしていく。
そりゃあ元人間だからな。
因みに吠える時はミーテがお手本とか言って
「ワオ~~~~~ン。」
と狼顔負けで遠吠えを披露してくれた。
ちょっと上手すぎて引いた。
芸をこなす度にミーテは
「凄い!天才だよトマト!」
と言って、なでなでしてくれる。
嬉しいなぁ。撫でられて嬉しがる感情はきっと犬の本能だ。断じて俺の感情ではない、、、はずだ。
「待て!」
再び待てと言われたのでとりあえずお座りして待つ。
ミーテはボールを持って森の中に入っていく。
暫くすると
「おいで~」
だいぶ遠くの方からミーテの声がした。
この場合、視覚は頼りにならない。
なので、嗅覚に頼る。
ミーテの匂いとボールの匂いを辿っていく。
犬ってすごいな。人間だったら絶対わからない。さすが人間の何百万倍の嗅覚!
ただし、他の木とか土とか動物とかの匂いも混じってくるけどな。
意外と集中力が必要だ。
気になる匂いがあちこちにあって行ってみたい衝動に駆られるが、そこは元人間だからかある程度衝動を抑えることができる。
俺はミーテのところに割と早くたどり着いた。
あれ? ミーテが黒いボールを持っていない。
ミーテはしゃがんで地面を指差した。
「ここを掘って!」
俺はその場所を掘った。ボールが出てきた。
「吠えて。」
「ワオ~ン。」
なあ、気になってたんだけど、もしかしてその黒い塊は。
「凄すぎるよトマト‼一日でここまでできるなら、今年の秋にはマキマキと一緒にトリュフ採れるよ!」
やっぱりな!
察するにこれ、トリュフなんだよな? トリュフってこんなキモい石のような塊だったのか!?
こんな高級食材ボールに入れて投げたりしてたけど、いいのか?
俺がもし普通の犬なら訓練には更に時間は掛かっていただろうし、中のトリュフ腐ってたんじゃないだろうか?
その時はまた新しくトリュフを追加するのかな?
だとしたらトリュフ採る犬の訓練で使うトリュフの金額って、、、。
ま、いっか。俺は直ぐにできるし。今ミーテは飛び上がるほど喜んでるし。
それにしてもだいぶ遠くに来たな。
周りを見渡す。
あれ?
前の方に透明な硝子の壁のようなものがあった。
ミーテが俺の視線の先に気付いた。
「ああ、これね。これはお父さんが作った魔法の結界なの。家を中心に、この辺り一帯をドーム状に囲ってる。空気や水、植物、虫等は通すけど、動物や人間、武器、魔術は通れないようになってるのよ。」
魔法の結界かぁ。
ミーテが魔法を使えるならミーテの父親も使えるのだろう。
未だに使ってるところを見たことは無いが。
あれ?
そういえば、川からここまでの間で、俺は結界にぶつかった記憶がないのだが?
「私が近くの川にトアミを打ちに行くときとかは、お父さんが貸してくれるペンダントを着けることで結界を通れるの。ペンダントをつけた人の手に持ってるものも一緒に通れるのよ。」
成る程。じゃあ俺はミーテの手に持たれてたから結界を越えられたのか。
ん? ちょっとまて、トアミってなんだ?
「明日また川に行くからトマトも一緒に行こうね。マキマキも一緒だよ。」
日も傾いたので俺はミーテと一緒に家に帰った。
眠る前にトアミについて考える。
トアミトアミトアミトアミトアミトアミトアミトアミトアミトマトじゃなくてトアミ、、、、。
あ! そうか、投網か!