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魔王の輝石

エマリカ王国とシロリア王国の国境上空。


青空に不思議な音が響き渡った。


キュイーーーーーン


今まで空の色に合わせていた魔王の飛行船は、主がいなくなり、本来の色、アメシスト色に変わった。


上空で崩壊していく飛行船の欠片が、朝日を受けてキラキラと輝き、落ちていく。


その様子は、地上で戦っている人々だけでなく、最前線で戦わされている、人工魔法兵の怪物達の目にも映った。


怪物達は、突如足を止めた。


彼等の足を止めた場所。

そこには、嘗てダラハット王国とヒガリ王国があった。


シューーー、シューーー。


空気の抜けるような音がそこらじゅうで聞こえ始める。


怪物達の背がみるみる縮み始めた。


怪物達の片腕と片足には、怪物用の大きさの腕枷と足枷が垂れ下がっていた。この戦争が終われば直ぐに繋ぐ為の枷だ。


怪物用の大きな枷は、人間には大き過ぎた。


するりと抜け落ち、地面とぶつかる。


そして、美しいカーンッという金属音が鳴った。


それこそが、奴隷の終わりを告げる音だった。


【怪物に変化し、紫色の飛行船が見えたら、元に戻って自国を守れ】


これが、彼等に与えられていた本当の命令だった。


シロリア王国に魔王自ら潜入していた理由。

それは、魔法の契約書の主を、魔王とする為だ。


スチュワートと石蛭、その他魔王の部下達は、地上に降り立った。


彼等は両手を広げた。


「イカッケ! イカッケ! 」


手分けして唱え、結界を次々と貼っていく。


怪物から人間に戻り呆然としていた彼等も、それに習って同じく唱え始めた。




シロリア王国から眺めていたダニールはガクッと膝を付いた。


「な、奴隷どもが!? なんということだ!! 」


次々と人工魔法兵が人に戻っていく。


その後ろでシロリア王、アレクセー3世は呟いた。


「あー、そういうことか。これは、やられたな。」


アレクセー3世は立ち上がった。


膝をつき何故だ何故だと喚き散らすダニールの後ろで、スラリと剣を抜き、ザシュッと振り下ろした。





一方エマリカ王国のマーリン学長は、エマリカ王立研究所の奥に数人の部下達を引き連れて向かっていた。


最奥の部屋は何重にも厚手の扉で守られている。


マーリン学長は扉を次々と開けていった。


おかしい。侵入された形跡も無い。


「まさか、すり抜ける魔法でも使ったのじゃろうか? 」


そんな未知の魔法を、発明できるとしたら、魔王しかいない。


最奥の部屋にたどり着き、中を見ると、魔道具である白銀の板が真っ二つに割れていた。


エマリカ王国の結界はその1枚の板に先代の学園長が命の魔力を注いで作っていたのだ。


「あの暗号が解けたのか。流石スチュワートだのぉ。」


「感心している場合ではありませんよ、マーリン学長。」


「うむ。わかっておる。」


マーリン学長は後ろを振り向いた。


「次のエマリカ学園学長は3回の選挙で3人まで絞り、4回目の選挙で1人決めるが良い。」


「かしこまりまりました。」


「では、始めるとしよう。」


マーリン学長の体が白く光始めた。


エマリカ王国上空では硝子の様な結界がドーム状に広がっていく。


結界を再び張り終わった時、マーリン学長はドサッと倒れた。


「マーリン学長!!! 」


部下達は大声で泣き出した。


その中には保健医のミハエル先生もいた。ミハエル先生はいつもの色気のある顔を崩して思わず叫んだ。


「曾お爺様! 」


ミハエル先生の母方の曾祖父、マーリン学長は静かに息を引き取った。

享年、156才であった。



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