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崩壊するエマリカの結界、迫り来るシロリアの怪物

ミーテ達が飛行船で格闘している頃、地上では大変な事が起きていた。


パリッ、パリッ、メキッ。


未明、エマリカ王国を被う結界に奇妙な音が響き始めた。


ヒビの様なものが広がって行く。


やがて、


パリーーーンッ!!


エマリカ王国の結界が粉々に砕けた。



エマリカ城のある一室では国家最高権力者の3人が集まっていた。

エマリカ学園 マーリン学長、裁判所 ベルナール最高裁判長、そしてエマリカ国王アーサー2世。


ベルナール裁判長は眉間に縱皺を作った。


「マーリン、貴様の今迄の行いはほぼ死刑に直結すると私は考えている。」


ベルナールの手にはマーリン学長が王命に逆らい、魔王の妹とその娘ミーテを助けた証拠が事細かにかかれている。


「今回の貴様の魔王の拠点発見の功績さえ無ければ、間違いなく明日死刑にしていたものを! 」


フォッ、フォッ、フォッ、とマーリン学長は朗らかに笑った。


「相変わらず頭が固いのぉ、ベルナール。学園時代の頃から変わらんなー。」


くしゃっとベルナール裁判長の持つ書類に皺が寄る。


「ま、私の息子の優秀さが今回良くわかったよ。」


赤い髪と青い瞳を持ち、壮年ながら美しい顔をしたアーサー2世はしみじみと頷いた。


本人は息子に自らの性癖(ぽっちゃり好き)のせいで嫌われている事は知っている。だが、止める気は毛頭無い。それでも息子を大事には思っているというちょっと屈折した性格をしている。


ベルナール裁判長はキッとマーリン学長を睨んだ。


「エドワード王子にスチュワートを見張らせるなど、なんと無礼な! 」


「スチュワートがスパイだというのは知っておったからのぉ~。わざと生徒会に入れさせ、エドワード王子に見張って頂くのが一番確実かと思ったのじゃ。お陰でスチュワートの眼鏡に魔道具を仕込ませることで、魔王の居場所が分かったしの。」


「後は私のエドワードが魔王討伐という名誉ある初陣を成功させれば、完璧だ。」


「エドワード王子はこの国の第一王位継承者なのですよ! もしもの事があれば。」


「3分の1の魔法兵を貸しているのだ。これで負ければ私の息子ではない。」


「ぐっ。マーリン、もしもの時は貴様、許さんからな。」


「分かっておるとも。」


ガチャッ!


「緊急です! マーリン学長!! 」


兵士が息を切らして走ってきた。


「どうしたのじゃ!? 」


「エ、エマリカの結界が粉々に。」


「なんじゃと!? 」


マーリン学長は慌てて部屋の窓を開けた。


そして上空の夜空を見上げる。


「な、なんということだ。」


「陛下! 」


次は別の兵士が駆け込んできた。


「どうした? 」


「シロリア王国から謎の怪物が大多数進軍して来ています!! 」


アーサー2世は目を見開いたが直ぐ様冷静になった。


「分かった。 戦闘会議を開く。マーリン、結界を何とかしろ。」


そう言い残すとアーサー2世は戦闘会議室へと向かった。






エマリカとシロリアの国境では1000体以上の緑色の巨大な怪物が蠢いていた。


「グオオオオオオオオオオオ! 」


怪物達は叫びながら、結界が無くなったエマリカ王国へと歩いていく。


エマリカの兵士達は剣を片手に向かうが、まるで歯が立たない。


怪物の体に剣が当たる前に、見えない壁が出来るのだ。


後から援軍として送り込まれた兵士達や魔法兵が奮闘する。


しかし、怪物自体が火や水の魔法をぶっぱなしてくる。


更に、魔王討伐に魔法兵を割いた事が致命的だった。


エマリカの軍は少ない魔法兵の力しか使えず、どんどん後退させられていく。



「はははははははは!!」


シロリア王国王専属科学者ダニールは夜空に向かって高らかに笑っていた。


「どうだ! この素晴らしい兵器を! 火や水の魔法が使えて、おまけに自動で防御する結界機能も付けたぞ! 巨大化しているから力も強い! 殴れば人の頭など粉砕だぁ! 奴隷達がこんなにも立派な兵器になるなんて、エマリカの連中は思わないだろうなぁ、あはははは。」


魔王が裏で手を引いていたとは微塵にも気付いていないダニールは、自らの最高の手柄に酔っていた。


シロリア国王は年甲斐もなくはしゃぐダニールを見つめた。


「ダニール。」


「はい! いかがなさいましたか? 」


「少し静かにして欲しい。喜ぶのは分かるけど。」


ダニールは真っ青になり、口をつぐんで頭を下げた。


シロリア国王アレクセー3世は違和感を覚えていた。


自らのショッキングピンクの髪をかきあげる。


片眼鏡の奥でじっとエマリカ王国を見つめた。


上手く行き過ぎている。


スチュワートの報告でエマリカの結界が割れるのは知っていた。


だが、エマリカ王国にはもっと魔法兵が多い筈だ。


「少ない、気がする。」


アレクセー3世は唸った。

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