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魔王の本当の過去 始まり

「あの日は紅葉が一斉に染まってね。とても寒い朝だった。

早朝にあたしは、何時もの日課として、こっそり町娘に変装して城下に下りて行ったわ。井戸の側で町のマダム達と洗濯をしていたのよ。序でに井戸端会議に混じってね。」


ちょっ、ちょっと待て!!


ツッコムところが多すぎる。王子の日課が女装して城下町で井戸端会議ってどういうこっちゃ!?


「一緒に洗濯をしている時は、心が癒されていたわ。それにマダム達から情報も集まるから、一石二鳥よ。」


そういうもんなのか?


「何時も魔道具の開発ばかりしていたから、たまの息抜きってやつね。思い付きで始めてみたら案外楽しいもので、癖になっちゃったのよ。お陰様であの人達の口調がすっかりうつったわ。」


元からオカマ口調じゃなかったのか。


「まぁ、でも、あのマダム達は、もう、この世に居ないけれど。あの日、狼煙が見えたから急いで城に飛んで帰ったのよ。そしたら桜が血相を変えて飛び付いてきてね。」


桜って、、、あぁ、ミーテの母親か。




魔王視点




「兄様!! 大変ですわ!! 」


血相を変えた桜がガシッと肩を掴んできた。


「さ、桜。どうしたのよ? そんなに慌てて。」


「先程シロリア王国とエマリカ王国の軍がヒガリの国境を越えたと連絡が。」


最後まで桜の話を聞かずに走った。


バカな!!

何故今になって!?


目的の扉をガバッと開ける。


「御父様!! 何故エマリカとシロリアが攻めて来ているのよ!? 」


そこには神妙に大臣達と話し合っている父王がいた。


父王は此方を振り向くと、


「その服を着替えなさい。」


サラッと一言そう言った。

確かに、下町娘の格好のまま来てしまっていた、、、


慌てて扉を閉めて自室へと向かう。


普段は自分の女装姿を見ると烈火のごとく怒るのだが、先程は静かに一言のみ。


いかに深刻な事態が起こっているのか思い知らされた。


「これは、本当に緊急事態だわ。」


自室に戻り、一応正装に着替える。


袖が大きめのフリル状になっている灰色のブラウスを金のボタンで留める。


ズボンはブラウスと対照的に真っ直ぐで、足下にかけて少し開いた形をしたものを履く。此方も同じく灰色である。


大きなフリルを通せるようになっている二重回しの外套を羽織った。


自室を出ると、桜も同じく灰色の正装に着替えていた。


袖は、フリルが床ぎりぎりまで届く長さであり、その下には真っ直ぐな形のスカートを履いている。


「兄様。」


桜の表情は暗かった。


「行きましょう。」


2人で取り合えず御母様の元へと向かった。


御母様含め3人で暫く待っていると、御父様が現れた。


「取り合えず降伏する事にした。」


開口一番に御父様は言った。


確かに戦力差は目に見えていたし、仕方がない。誰もが納得したが、桜だけは納得しなかった。


「いけません!! いけませんわ!! 戦わずして負けを認めるだなんて。例え負けるとしても無抵抗で配下に下るなど!! 」


この時、家族一同この子は何を言っているのだろうかと呆れていたが、後に思えば、一番正しい考えを持っていたのは桜だったのかもしれない。


「桜!! 国民を無駄に犠牲にする必要はないでしょう!! いつからそんな薄情者になったの!! 」


桜に怒鳴った。


「兄様の分からず屋!! もう知りませんわ!! 」


桜は部屋から出ていってしまった。


ヒガリ王国はエマリカとシロリアにあっさり降伏した。


これで誰も殺されない、皆そう思った。


なんて甘すぎる考えだったのだろうか。


条約を結ぶ前に負けを認めてしまった。


抵抗しないとは、調教できることをアピールする事に他ならない。


抵抗できない人間が虐めのターゲットになる。それと少し似ているわね。


王宮へエマリカ王国の兵がわらわらと入ってきた。


御父様と御母様はその日の内に殺された。


まさか両親が殺されるとは思っていなかった。無抵抗な者を殺すやつがいるなんて思いもしなかったからだ。


平和ボケしすぎた頭に、氷山をぶっかけた様な冷気が降り注いだ気がした。


頭上の兵士が去った所で、隠れていた床下から這い出した。


そのまま、ふらふらと王宮側の小さな魔道具研究用の掘っ建て小屋に向かい、魔道具関係の資料全てに火を放った。


そして、魔道具開発関係者の名簿に桜の名前を書いた。


焼けた掘っ建て小屋から出てみると、直ぐ様エマリカの兵士に捕まった。


その時だった。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 兄様に触れるな!!!」


兵士どもの背後から、爆発的な殺気を放って、桜が長剣を片手に突撃してきた。


場にそぐわず、美しいと思った。


烈火の如く怒りを露にしつつも、その美貌が落ちることはなかった。


寧ろ怜悧さが際立ち、見るものの呼吸すら奪い、卒倒させるほどの迫力がある。


あっという間に10人以上が桜の剣一本で戦闘不能に追い込まれた。


だが、斬りかかる桜の剣をある一人の兵士が受け止めた。


それが、ルドマンだった。


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