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空想と現実の境目  作者: 築山神楽
9/15

間話2

久しぶりの投稿です。今回は第8話の後何があったのかというちょっとした繋ぎのつもりなので、間話1同様短いですが読んでみてください。ただし今回、ちょっと自分の表現力の練習も兼ねているので見苦しい部分が多くあるかもしれません。あらかじめご了承ください。

「終わったな」


 僕と絵須羽は暗くなった道を歩いていた。

 その表現は正しくないか。正確には、暗くなった空の下を歩いていた。道は街灯が照らしてくれるために十分明るい。


「うん、麻技亜ちゃんが私達を受け入れてくれてよかったよ」


 横顔は確認してないが、安堵の表情を浮かべているだろう。

 僕達はあの後、麻技亜を家に送ってから帰ることにした。絵須羽が彼女を助けたとき、麻技亜は泣き崩れた。それはいろいろな感情が混ざり合っていたものだった。ただその時一番嬉しかったのは、あんなに冷たく拒んでいたのに本当に心を開いてくれた時、すごく温かみを感じたことだ。過去にあれだけ辛いことがあっても、まだ希望を捨ててなかった。僕達を本当に信じてくれた。そして泣き終わって見せた顔は、本当に幸せそうだった。


「しかし、なあ………。まさかあんな過去があったとは」


 僕達はてっきり、両親を本当の意味で失ってしまったと思っていた。実際は再び会えるチャンスはありそうだが、それ以上に彼女の過去は壮絶なものだった。


「これからがもっと大変かもしれないけど、ちゃんと両親に会わせてあげないとね。じゃないと、私達が本当に救ったとは言えないし」


 どうやってこれを解決したらいいかなんてわからない。でも、今まで自分の殻に篭っていた頃と比べれば断然いい。助けてくれる人がいる。それだけで、麻技亜の心はずいぶんと楽になると思う。


「だな。かなり長い時間が掛かるだろうけど、やっていくしかない」


 そうしてしばらく無言が続いた。やがて分かれる地点に着いた。


「家まで送ってこうか?もうこんな時間だし」

「大丈夫。すぐそこだから」


 その言葉に若干の不安を覚えたが、ここで無理についていく必要はないだろう。


「わかった。じゃあな」

「また明日」


 手を振って別の方向に歩き出す。牛浜駅周辺からでは僕の家までは多少距離があるため、一人で歩くのが少し寂しい。

 明かりが灯っているとはいえ、道は殺風景だ。なんとなく、さっきまでの光景が頭に浮かんでくる。


「本当にあれでよかったのかな………」


 僕がしたことに自信がないわけではない。ただ、別のやり方もあったんじゃないかと思ったりした。


「まあ今更考えても仕方ないか。あとは本人の意思の問題だし」


 明日学校に来てくれるのだろうか。まあそうでなくとも、また休みの日にでも会う機会が増えればよい。少しずつでも、進展があればいい。

 自分で勝手に納得する。どちらにしろ、僕がこれ以上どうこうできることではない。

 もう夜になると言うのに乱立したビルの窓は明るく、騒音を出す要素などないのにまだ遠くが騒がしい。こんな光景にはもう慣れたが、昔はもっと静かだったのだろうか。こんな煌びやかな科学の街ではなく、都会はずれのさびしい町の姿を僕は想像できそうにない。


「何も変わってないのか………?この街は」


 なんてくだらない事を考える。自分を囲んでいるこの空気が何かを訴えているような、そんな気がした。

 気づけば、家の前まで来ていた。暗くなってから帰るのは何日ぶりだろうか。それでも普段どおりの動作でドアを開けた。


「ただい……」


 家の中に一歩を踏み出したところで僕は止まった。

 理由は目の前。


「どうした?」


 思わず理由を尋ねてしまう。と言うのも、


「…………おにーーちゃん」


 あからさま不機嫌そうな顔をした我が妹が、仁王立ちで僕を待ち構えていたからだ。


「遅い!今まで何してたのこんな時間まで!」

「ああ、ちょっと用事があったんだよ」

「むー」


 適当にごまかしても、妹の機嫌は変わってくれるようには見えない。一体なぜこんなにも不機嫌なのだろうか。外は暗くなっているとはいえ、まだ6時すぎだ。夕飯は恵が当番だし、特に問題はないはずなのだが。


「何が気に入らない?」


 すると恵はそっぽを向いて、


「……いてくれなかった」

「ん?」

「休みの日なのに、お兄ちゃん全然あたしと一緒に居てくれなかったー!」


 ええ……

 そんな理由だけか、と少し呆れる。


「別に僕のしたいことしてもいいだろ?そんな怒るまでして何で一緒にいたいんだ?」


 僕は靴を脱いで家に上がる。


「恵だって友達と遊んだりすればいいじゃないか。中学に入ってできた新しい友達何人かできたんじゃないの?」

「そ、そうだけど!」


 自分の部屋に向かおうとする僕の前に立ちふさがって、


「でも、あたしはお兄ちゃんと一緒にいたかったの!家に一人でいるの寂しかったんだから!」


 今にも泣きそうな顔になる恵。どうしてそんなにも一緒にいたいのかは謎だが、特に何も言わずに二日間もずっと外出していた僕も少し悪いところはあるかもしれない。


「ごめんよ」


 胸元ぐらいの高さにある妹の頭を優しく撫でた。


「一日中ほったらかしにしちゃってごめん。まさかそんなふうに思ってるとは分かんなかったんだ」

「うう………」


 眼を潤わせながらも、何とか堪えている様だ。


「もうこんな時間だけど、後は一緒にいてやるからさ。それでいい?」


 妹は素直に首を縦に振って、


「うん……いいよ」


 まだ目元が赤いが、笑顔を見せてくれた。


「じゃあごはん、早く食べよ?お兄ちゃんを待ってたんだよ?」

「わかった」


 僕も笑顔を返す。

 すると恵はこちらを見上げて、


「それと一つお願いしてもいい?」


 何処かもじもじした様子で、一旦間をあけて言った。


「今日、一緒のお布団で寝たいな。だめ?」


 一瞬だめと言いそうになったが、先ほどまでの恵を見てからなのでそう言えず、


「いいよ」


 すると更にパーッと顔が明るくなった。


「やったー!大好きお兄ちゃん!」


 そのまま僕の体に勢いよく抱き着く。何とかしてこの腕を離そうとしたが、とても嬉しそうなので気の済むまでそうさせた。


「ははは……」


 そんなことがありながらも、いつも通りの食卓についた。



「ふう……」


 夜の10時、恵の就寝時間になったので僕たちは布団に入った。

 僕はいつも後2時間は遅く寝ているのだが、恵の要望とこの土日だけで大分疲れたのもあって早く寝ようという判断をした。体をあまり動かしていなかったため、麻技亜との一件だけで少しばかり筋肉痛にもなった。

 暗くなった天井を見上げると、今日あったことが再び蘇る。いろんなことがあったが、全て夢の中だったんじゃないかというような、そんな気持ちになった。何度も繰り返すが、今だってあの光景は現実だとは思えていない。それでも、自分は一人の同級生を救ったという達成感は残っている。


「ふわぁ~」


 唐突に出るあくび。横になってすぐだが、もう眠気が襲ってきたようだ。一方恵といえば、何やらとても嬉しそうで、


「えへへ、お兄ちゃんと一緒だ~」


 僕にピタリと体を寄せて、一緒の布団に入っている。抱き着かれてる腕越しに温かさが伝わってくるため、布団の中が睡眠にはちょうどいい温度になっているのだ。人間の体温というのは大体同じようなものなのに、どうしてこう温かく感じるのだろうか。

 普段なら妹はこの時間にスッと寝てしまうが、今日はそんな様子ではない。僕はすぐそばにある頭を撫でて、


「恵も早く寝ろよ?明日学校なんだから」

「はーい」


 その楽しそうな声は、まだ寝そうにないことを感じさせた。一方僕は、疲れと妹の体温が眠気を一層加速させて、もう限界だった。


「僕はもう寝るよ。おやすみ」

「おやすみ、お兄ちゃん」


 その声を最後に聞いて、僕の意識は落ちた。



 突然目が覚めた。

 意識がいつなくなったのか分からないが、体感的に一瞬の時間が過ぎたように感じた。部屋は暗いために時計が見えないが、おそらくは数時間が経っているのではないか。


「ん……」


 半分閉じかけた目で窓のほうを見る。カーテンの隙間から漏れる外の光は、まだ朝の訪れを伝えてはこない。中途半端に目が冴えてしまったために寝にくいことこの上ないが、まだ朝まで時間はあるし、ここで立ち上がったら恵を起こしてしまうだろうと思い、瞼を閉じようとした。しかし。


「えっ」


 先ほどまで右腕に寄り添っていたはずの妹の体がそこになく、代わりに僕の体に上から抱きつくようにして跨っていた。


(ん……恵?)


 半分寝ぼけた思考で、今何が起きているのかを理解する。たまにそれぞれの布団で寝ていると、いつの間にか僕の布団に入り込んで今日のようなことをしてくる日があるのだ。それが今まさに起こっているわけだが。


(はあ……)


 心の中でため息が漏れる。またいつものか、と。

 こんなことはよくあることなのだが、大抵は僕がしっかりと起きている時なので対応はできる。しかし今回、偶然にも目覚めなかったら気づかなかったかもしれない。

 いつもどおり恵を離し、布団に運んでやるのがテンプレだ。向こうから迫ってくるとはいえ恵も半分寝ぼけた状態でやってくるため、しっかり寝かせてやれば次の日たいてい覚えていない。

 だが、なんだか今回はやたら雰囲気が違うような気がする。いつもなら僕を起こさないようにするためかそっとしてくるのだが、今回は起きる起きない関係なく迫ってくるようだ。


「お兄ちゃん……」


 暗いせいで、僕が起きている事を知らないのか、僕のことを普通の声量で呼んだ。相変わらずなにがしたいのか分からないが、妙に温かい体温と小さな口から漏れる吐息がなんとも言えない色っぽさをかもし出す。


「今日は一緒に居てくれるって言ったから、いいんだよね…………?」


 そう言いながら、くねくねと何か意味があるような動きで体をすり合わせてくる。僕はすぐに止めようと思ったのだが、縛られてるわけでもないのに何故か体が動かない。一方で恵は、僕にまたがったまま足と足の間にある大事な部分を、僕の同じ位置のと密着させ何度も前後を繰り返す。


「んっ……んっ……はぁ、はぁ」


 中学生が出すとは思えない、艶やかな声が出る。さらに体を動かすたびに、体が小さくビクンと痙攣し、そしてその運動は次第に早くなっていく。深夜の静寂に包まれた部屋の中で布団と服が擦れる音、それと妹の荒い息が響く。

 端的に言って、やばいんじゃないか。


「あっ……あっ……んんっ!」


 全身をくっつけるような状態のために、妹の顔がすぐそこにある。理解はできなくとも、とても気持ちよさそうな声がすぐそこで繰り返される現状である。本能的に、何かアウトなことをしているのだと察する。

 そして見えない中でも、妹の動きがなんとなく分かる。下半身を押し付けながらも、顔をゆっくりと近づけてくるのがわかった。


「はぁ……はぁ……お兄ちゃん」


 ほぼ数センチ先、妹の息が当たるくらいの距離になり、


「………キス……しよ」


 ゆっくりと近づくと同時に、軽く空気を吸うような音がした。


(まてまてまて)


 くっつく直前で咄嗟に顔を左に逸らす。


(あぶねっ!)


 紙一重で何とかかわせた。しかしそれに気づいた恵は、顔だけの寝返りだと思ったのか一旦顔を離し、今度は左側に体ごと回りこんだ。

 そして今度は両手で僕の頬をやさしく包み、完全に固定した状態でゆっくり顔を近づけてきた。


(待て恵!それはだめだって!)


 カーテンの隙間から差し込んだ僅かな光が、妹の顔を照らす。はっきりとは見えなくとも、その表情は完全にそっちのスイッチが入ってしまった状態であるとわかった。


「ちゃんとしよ………ね?」


 どうしてこの時、声を出すということをしなかったのだろうか。少なくとも、ある程度の抵抗はできたはずである。

 さらに何故かここで突然意識が朦朧としてきて、何とかしなければいけないという危機感を完全に散らしてしまう。


(あ………やば………)


 勝手に瞼が閉じられ、その後の結果も知ることができずに気づけば朝になっていた。


「…………………」


 まだ半分寝ぼけている状態だが、深夜の出来事だけははっきりと記憶に残っている。ふと隣を見れば、服がだいぶはだけた状態の妹が僕に寄り添ってとても気持ちよさそうに寝ていた。

 もはやため息も出なかった。


「ああ…………やっちまったのか。恵よ…………」


 休み明け、過去最悪の寝起きを迎えることとなってしまった。


「頼むから、あれは夢であってくれ……………」

全体としてのストーリーがあまり進んでない上に、さらに出番の少なかった妹を少し強調して書いてみました。ただ書いている途中でやはり自分は未熟すぎるなぁと思い続けましたが、書かないことには分からないのでチャレンジしてみました。まあ結果は見ての通りですが(白目)。まあ、妹がどこまでしてしまったのかは読者の想像にお任せします。

さて、長いのか短いのか分からない土日が終わって、また一週間が始まります。果たして、主人公らを待ち受ける次の騒乱とは一体。

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