間話3
第12話への繋ぎというか、これから起こることの伏線です(それにになってないけど)さっと書いたので全体的に変かもしれません。
どこか分からない暗闇の中。
広さも、場所も不明な漆黒の空間。あると言えばあって無いと言えば無いその場所で、しっかりと把握は出来ないが、確かに存在する影が4つ。互いに向き合う形で、なにやら話をしていた。
まず聞こえたのは、女の声。20代前半ぐらいのチャラい系が発するような、高い黄い声が響く。
「それで、どーなったの?」
あからさまに面倒くさそうな口調で、そこにいる誰かに尋ねる。
「形跡は確認したとか言ってるけど、こっちはまだ何も聞いてないんですけど~」
その声に応えたのは、それとは別の40代ぐらいの男の渋い声。
「すまない、確信を得られる証拠を見つけるまでに時間が掛かってしまった。だがそれに値する十分な情報を得られたと言っていい。結論としては、あそこに存在するってことで間違いない。これは推測ではなく絶対だ」
「なるほどね」
次に聞こえたのは、3人目の10代後半ぐらいの明るい男の声。
「なら、作戦は決行ってことでいいのかな?」
「ああ、他に何も無ければな」
「おおー」
ぱちぱちと響く拍手の音。
「しかしだけどさあ」
若い男の声に、他3つの影が振り向く。
「それだけ確信を得られるまで探すのはいいけど、ある程度推測を立てれたらそれで判断しちゃっていいんじゃないかなって思うんだよね。毎回そう。オレとしては、危険分子は一刻も早く排除したいわけだし」
「それはダメだね」
拒否をしたのは、残り最後の30代ぐらいの鋭い女声。
「確かに早いことに越したことは無い。ただそれではミスをしたときの代償が大きすぎる。ただでさえ、あたいらは実働部隊が少ないんだ。詳細がばれないように下部組織を雇ってるわけでもないから捨て駒なんて出来ないし、リカバリはコスパが見合わない。いくら上からの命令と言ったって、ミスをしないことこの上ないよ」
「へいへい。わかってますよ」
その男の影は両腕を頭の後ろに回し、いかにも聞いてなさそうな格好をする。
「いいや、今回ばかりは俺が手間取ってしまった」
渋い男の声は、すごく申し訳なさそうなトーンで続ける。
「特に証拠の偽装が予想よりだいぶしっかりしていたってのが大きい。俺が実際に行って注意深く確認しなければ分からないほどにな。それに、構成が隠蔽に特化していたのもある。それ故に時間が掛かりすぎてしまったことも否めないが、相手が相手なだけに、さすがに完璧とはいかなかったようだ。まあ、あの歳にしてみればかなり上出来だとは思うがな」
「そんなに苦労したなんて、意外すぎるんですけど。もしかして、相手は結構手ごわかったりする~?」
「あの拠点だけなら、とりあえずはそこまででもなさそうだが、流石に全体の規模までは俺一人では無理な部分があった。だから本調査にしても攻略にしても、これからが本番と言うことだ」
「つまりいつもどおりの仕事ってことだな。お互いヘマしないよう頑張ろうぜ」
その場にいた全員が頷いた。
「それならさ~あ。ちゃっちゃと潰してこようよ。あたしグダグダすんの超だいっきらい」
「基本的な準備は済ませてある。上からの確認も取ってあるから、あとあたいらが決めなくちゃいけないのは日にちぐらいだよ。さて、いつにしたもんかね」
「一応、メンバー全員での情報収集や現場での不足の自体を考えておいたほうがいいだろう。そうなると、最短で2日。長くて5日かかるってとこだな」
「んじゃ、実行期間は3日間ぐらいでいいっしょ。後は向こうでの判断でタイミングをずらせばいーわけだし」
「決まりだな」
渋い男の声に、その場の全員が頷いた。
「後は個人の準備か。やっべ、オレまだ何もしてなかった」
「早くすませな。今日の夜には出発するからね」
「ういー」
「遅れたらマジ許さないからね。ただでさえ忙しいってのにこれ以上の遅れはナシだから」
そして、彼らはお互いに背を向けた。
「最後に確認だ。各自指定されたものを持って、現地集合。俺達の存在がばれないように、最大限行動中は注意すること。いいな」
「ああ」
「りょーかい」
「へい」
「よし、解散」
その号令とともに、4つの影がそれぞれの方向に踏み出す。
「あ、最後にもう一つ確認していいか?」
若い男の声に、他3人も立ち止まる。
「場所は本当にあそこでいいんだよな?これだけはちゃんと確認しておきたくてさ」
「間違ってないよ。そのために散々話を詰めてきたじゃないか」
ため息を一つ漏らし、続いて鋭い女声が暗闇に放たれる。
「福生市立福生第一中学校。くれぐれも迷子にならないでおくれ」
察しのいい人はこれからどんな展開を迎えるか分かることでしょう。