Mission4「増殖感染」
「クソックソックソッ!!だから嫌だったんだ!誰かと組むのはッッッ!放せ化物がぁぁぁ!!」
Kは普段からは考えられぬ程に叫び散らしていた。小さな手から逃れようともがくが、可動部を掴まれており、動くことが出来ない。その間、ずっとMだった者がうわごとのように呟いている。
「もう誰かが死ぬのは嫌…目の前で死んでいくのは嫌…なんで分かってくれないの?どうして先に死んでいくの?どうして私を置いていくの?ねぇ、1人にしないで、私を連れて行って…私を…私をぉぉぉぉぉぉぉ」
白い機体の頭部が裂け、白い液体が、腕を伝ってKの機体へと伸びて行く。
「まずい!Kが飲まれてしまう!エラー!スーパーエアキャノンを放てるように準備しておけ!クルード!援護射撃を頼む!」
「了解!」
キラーは皆にそう告げると、背中に取り付けていた電気を帯びた大剣を手に取り、白い機体に近づいてゆく。キラーの機体を破壊しようと白い機体から無数の小さな手が伸びる。それをクルードが射ち落すがすべてを射ち落すせるはずがなく、数本の手がキラーに伸びる。
「悪いが邪魔をしないでくれ、虫の居所が悪いんだ」
キラーは大剣を巧みに扱い、小さな手を切り落としていく。その間にも白い液体がKの機体に広がってゆく。
「こんなところでッッ…こんなところで死んでやるものかぁぁぁぁぁ!!」
Kは機体のセルフリリースシステムを起動した。アグリーによる侵食もあってか、Kの意思に反応するかのように勝手に発動した。搭乗者と機体の一時的な同調率を強制的に引き上げ、倍以上の力を引き出すことが出来るシステムだが、後遺症、汚染に対する耐性が落ちてしまう。
「俺からッッッ離れろォォォォォ!」
Kの機体は、無理矢理可動部を曲げ、白い機体を引き剥がすとその場に倒れこんだ。Kはコクピット内で凄まじい吐き気と頭痛に襲われ、嘔吐したのちに気絶した。キラーはその隙に白い機体に大剣を投擲する。大剣は見事白い機体に突き刺さり、一時的に動きを止める。
「キラー、スーパーエアキャノンの準備が完了した」
「ナイスタイミングだ!クルード!ノイズキャンセルを作動させておけ!」
ノイズキャンセルを作動させると同時にエラーが痺れて動けなくなっている白い機体にスーパーエアキャノンを発射し、凄まじい爆音が響き渡る。スーパーエアキャノンの空気弾に当たる直前、Mが何かを呟いた。
「…お母…さん」
Mは機体ごと跡形もなく吹き飛び消えた。そして、その場には半分以上アグリーに侵食されたKの機体とスーパーエアキャノンによって大きく抉られた大地だけが残った。
「…目標、排除確認。Kの機体のコクピットだけ取り除いた後、撤退する」
「…えぇ、分かったわ」
「了解」
デウスダイスに帰る数時間の間、チームの間に会話はなかった。デウスダイスに帰還したのち、Kはアグリーに感染した恐れがあるため、監禁され、処置がどうなるかを待つ身となった。
「…どうしてこんな…俺は…ただ生きたかっただけなのに…何で1人にしてくれないんだ…」
Kの嘆きの声が誰もいない牢獄の中に響く。すると、頭の中で謎の声が聞こえた。
「そんなに生きたいか?人間」
Mission4「増殖感染」