Mission2「狂者」
アグリーのポーン系統が群れているであろう場所に偵察に向かった部隊が帰ってこないとの連絡を受け、俺達は急行した。その場所は凄まじくアグリーの汚染を受け、至る所に白い肉の様な何かが張り付き、脈動していた。気色が悪い、見てるこっちが汚染されそうだ。この中にHAだけを身に付けて特攻しに行った部隊の奴等がとても勇敢に思えて仕方がないほどだった。そんな時、女の笑い声が聞こえた。
「こちらK、女の笑い声がした。部隊の奴かも知れない、確認に向かう」
「了解だK、辺りに警戒しろ、我々もまだ他の者達を捜索中で援護に行けん、死に急ぐなよ」
「キラー、俺は誰よりも生きたいんだ。死神に差し出すほど俺は追い詰められちゃいない。もし仮に汚染されていた場合、処理しても問題はないな?」
「・・・その場合は、やむ得えまい。せめて、一瞬で楽にしてやれ」
「了解」
俺は前と同じようにグロムショットガンを構え、声のする方へゆっくりと近づいて行く。少しつづ、近付くたびにケタケタと不気味に笑う女の声が癇に障る。こっちも頭がハッピーな気分になりそうだ。そして、声の主の元まで辿り着いた。声の主である女は、その場にしゃがみ込み、こちらに背を向けたまま、まだ不気味に笑っている。
「おい、お前。偵察部隊の奴か?他の奴等はどうした?」
返事がない、振り返ることもなく笑っている。おちょくっているのか?それとも気が狂れたか?こんな状況じゃ、まともな精神状態を保てという方が難しいか。
「もう一度聞くぞ、お前以外の他の連中はーーー」
声を張り上げ、他の者達の居場所を聞こうとしたその時、女の首が180度回転し、こちらを向いた。
「死ンダ!しんだ、死んだ、シンダ、シンダシンダシンダシンダシンダシンダシンダ死んだぁぁあぁあああぁッハッハッハッハッハ!」
「ーーーッッ、こいつ、感染してやがるッ、悪いな、これも俺が生きるためなんだよ」
俺はこちらを向いてケタケタと笑う女に電気の弾丸を撃ち込む。女は跡形もなく蒸発し、気味の悪い笑い声が止まった。
「ーーーこちらK、目標を確認。汚染されていた為、アグリーになる前に駆逐した。そっちはどうだ?」
「あぁ、K。こちらも目標を発見、跡形も無くなったよ。君の所に居たのは何人だった?」
「運がいいのか悪いのか、1人だったよ、残念ながらな」
「そうか、こちらの5人と合わせて丁度全員だ。・・・この結果には、とても残念だ。本当に・・・」
「キラー、アンタそれでも幾千連勝の鬼と呼ばれた男かよ。アンタはこの中でも一番の古参だ、人が簡単に消えちまうのも知ってんだろ、ここはそういう場所だ。奴等は生き抜く力がなかった、ただそれだけだ、そうだろ?キラー」
「・・・あぁ、そうだな、そうだとも。だがな、俺はこの気持ちを忘れたくないんだよ、あくまでも俺は人でありたい、中身まで機械になったら、それはもう人ではない殺戮マシーンだ。この感覚だけは慣れたくないのさ、いつまでたってもな・・・無駄話が過ぎた。偵察部隊の回収失敗、帰投する」
キラーは、俺達よりも長く戦場にいる。大抵の奴は人を殺すことに嫌でも慣れて、風船を潰すように淡々と殺していく。そんな中でキラーだけは、軍人とは思えない発言をする。矛盾の兵士、そう呼ばれているのも頷ける。幾千連勝の鬼、矛盾の兵士、キラーにとってどちらが本物の自分なんだろうな、そう思った時、俺も他人に興味を持つようになったんだなと感じた。
Mission2「狂者」終