モラトリアム②
俺は「魔学教本」を読み進める。
これによると、魔法という言葉の「魔」とは「想像を具現化する」という意味らしい。そして、「法」は法則の略。したがって、魔法とは、想像を具現化する法則ということとなる。
世界というのは3つの質が重なってできているもので、固体、液体、気体などの物が存在する物質の世界、精霊、幽霊などの心というものが存在する精質の世界、魂が存在する本質の世界となっている。神が存在する世界は、本質の世界に似た物質、精質、本質が融合した完全な世界で、神のレプリカ、劣化物である地上の世界の生物には生きていくことができないので、あえて3つに分解して存在させているようだ。
魔は、神が行う創造を地上の生物が使用できるように改良したもので、精質の世界の現象を物質の世界で再現できるように、世界を3つに分解したのと同じような理由で、存在力であるエクシスを3つの質に分解したうちの精質の存在力であるマーナを使うものである。
これがラノベなどのファンタジー世界で、魔力などと言われているものらしい。
魔を成す基本的な流れとしては、魔の使用者のマーナと世界のマーナを繋げ、使用者の想像を世界の想像と融合させた上で、マーナを物質の存在力であるプラナへ変換して表現するということらしい。すべての存在は世界と繋がっているので、個人のマーナだけで行うよりも、世界を仲介する方が簡単だそうだ。
魔法に話を戻すが、魔法とは魔の法則であり、その法則は世界によって異なっている。1番スタンダードなもので言うと、印を結び使用する魔法の属性の設定を行う印結、表現する魔法の内容を詠み唱える詠唱、魔法の使用を実行するための言葉を発する宣言がある。
これが世界によって、宣言のみでできたり、何かしらの道具が必要だったりする。また、そういった法則が定まっていない世界もあるし、印結、詠唱、宣言全て必要としない代わりに1人1つか2つしか魔法が使えないなどの制限のある世界もある。これに関しては、魔法と呼ばずに超能力やスキルなどと呼ばれていたりする。
さて、魔法以外に魔を扱う方法が2つ存在する。
魔術と呼ばれているものと、魔導と呼ばれているものだ。
魔術は魔を扱う技術のことで、マーナを知り、感じて、見るための技術である魔力感知と、マーナの形状変化と属性変化を行う魔力操作が基本にして奥義となっている。
魔法において法則にしたがって行っているものを、本人の技術のみで行うので、習得には難易度が高い。
例えるなら、魔法がオート、魔術がマニュアルといったところか。
そして魔導は魔を導く秘術であり、魔術を極めた存在の行き着く先の力だ。魔術が自分のマーナだけを取り扱うのに対して、魔導は他の存在のマーナや、本質の存在力であるスピルをマーナに変換したりする。
魔法、魔術、魔導を取り扱う者のことをそれぞれ魔法使い、魔術師、魔導士と呼称する。
と、ここまで読み進めたところで、1つの疑問が浮かんだ。
今自分がいる、この小さな神域の世界には、魔法の法則なんてあるのか?
自分がこの世界の主ならその法則を創るのが俺のはずで、俺はまだそんな法則を作っていないし。
いや、待てよ?
でも、今、俺は重力操作の魔法を使っているよな?パソコンからだけど。
ということは、何かしらの法則は存在しているということだな。
ここは神域だから、ここを作ったニャルラトホテプが用意した法則ってところか?
俺は一旦魔学教本を最小化して、検索機能で『魔の法則』『神域』と入力してみる。
すると、『神域の法則とは?』と表示されたので開いてみた。
『神域には、神域を創造した存在が用意した管理デバイスが神域における魔の法則となっています。よって、神域にて魔を扱う場合、デバイスを使うか、デバイスから取得したスキルを使用するか、魔術、魔導としての形で使用するしかありません。また、地上にて習得した魔法は神域では使用不可能ですので注意してください。理由としては、神域にはマーナが存在しないからです。神域にはエクシスしかありませんので、どうしても使用したい場合は自身の技術にてエクシスをマーナへ変換して使用してください』
なるほど、そういうことか。つまり、自分の力のみで魔法を習得することはできないってことだよな?
しかし、魔術なら習得できるらしいけど、何でだろう?
うーん、あれか?魔術はマーナを直接操作するものだからか?
あれ?でもここにはマーナがないんだよな?
なら、マーナを操作する以前の問題なんじゃ…、あ、それはエクシスをマーナに変換するってやつで問題解決か。いや、でもマーナへの変換って魔導的な話になるんじゃないのか?
まぁ、とりあえず横においておくか。今は神域の法則が知りたかっただけだし。
再度、「魔学教本」を読み始める。
魔法の覚え方や使い方は世界によって違うので魔学教本には載っていなかったが、魔術についての習得のしかたについての基本的な流れが書いてあった。
まず、マーナというものがどのようなものなのか本人が理解しなければならないので、マーナを感覚で知覚できるようになる必要がある。そのためにはひたすら瞑想をしなければならないらしい。と、いってもそれが1番感じやすいだけで、瞑想しなければ絶対にマーナを知覚できないという訳じゃない。すでに魔法が使えるのなら、自身のマーナが消費される感覚をすでに知っているので知覚しやすいし、マーナを直接視る魔法を使っても良い。自分に魔術を教えてくれる人が場合は、その人のマーナを自分の中に流してもらうことで、マーナを知覚できるようになる。
まぁ、完全なぼっちな上、自力で魔法を習得したいという変人の俺はそれらの方法を使えないので、1つでも多くの感覚を閉ざした状態で、マーナが濃く満ちた空間で、マーナを知覚できるまでひたすら瞑想しないといけないようだが。
何らかの手段でマーナを知覚できるようになったら、次は自分のマーナを操作する技術を習得しなければならない。マーナの操作において必要なのは、世界のマーナとリンクさせるために自分のマーナの性質を変化させる技術、自分のマーナの形状を変化させる技術、自分のマーナを任意の属性へ変化させる技術の3科目だ。
まず、マーナをリンクするための性質変化は術をより効果的に発動させる上で重要な技術だ。自分のマーナを自身の内側から放出し、自分のマーナを世界のマーナへ近付けることで、互いのマーナの境目を曖昧にする。そうすることで想像した現象を世界へ伝え、物質の世界に具現化することができる。また、術者の想像に多少曖昧な部分があっても、世界による術の内容補整が発生し矛盾のない術に仕上げてくれるといった利点がある。
マーナは同じように見えて、実際はすべての存在が違う性質のマーナを持っている。例えるならそれぞれが持つ遺伝子のようなものだ。だから通常は自分と自分以外の存在のマーナが同じになることがなく、マーナ同士が繋がることがない。
だから、自分のマーナをラジオの周波数を合わせるような感じで
変化させ、自分がマーナ感知技術で覚えた世界のマーナへ少しずつ近付けて行くとリンクさせることができる。
リンクにおいて重要なのは、どれだけ深くマーナを世界へと繋げることが出来るかだ。基本的に世界のマーナと完全に同じ性質にならなくてもリンクさせることは可能だ。しかし、性質が近ければ近いほど、自分の想像をより広範囲に、より強力に具現化できる。
ただ、注意しなければならないこととして、自分が世界と繋がっているということは、世界も自分と繋がっているということだ。あまりに世界のマーナと近い性質に変化させてしまうと、マーナの同化現象が発生する危険性がある。
マーナの同化現象というのは、非常に近い性質のマーナ同士が融合して1つとなる現象で、マーナ量の多い方が少ない方を吸収する。術者と世界では比べるまでもなく世界の方が圧倒的にマーナ量が多いので、術者のマーナが世界への吸収されてしまう。
ただ単に多少のマーナが失うだけならば問題ないが、場合によっては世界のマーナが自分に逆流してきて精神を乗っ取られてしまうことがある。すると、自然物へ変化したり、マーナの暴走により魔属化と呼ばれる化け物へと変異してしまったりする。地上界において魔属化した存在は、非常に忌み嫌われており、存在が発覚した時点で全ての種族から討伐対象になることが多いので、そうならないように自身のリンク限界、つまりはどの程度までならマーナの質を世界に近付けても問題ないかを把握する必要がある。
次にマーナの形状変化だが、これは発動させる術の型を決定付ける技術だ。例えば火球の術を使う場合、マーナを球形にしなければ火『球』にはならない。うまく形状変化できないと形が歪んでしまい、望んだ効果を発揮できないばかりか、マーナが暴走し、ただの火がその場で撒き散らされるという自爆の術になってしまう。
形状変化の習得法は、単純に自分のマーナを自由に動かせるようにイメージする訓練を続けるだけだ。最初は自分の望んだ量のマーナを取り出せるようにして、次にマーナをまとめて塊にする訓練をする。そこまで習得したらに1つにまとまったマーナを粘土を捏ねるように形を変えていく。最初は単純な立方体を作り、その後複雑な形や流形、複数の塊を平行作成、条件付与による変形など、難易度を上げて訓練していく。
最後の1つの項目である属性変化はマーナに特定の属性を付与することで使用する魔術の性質を決定付ける技術となる。
マーナそのものはどこにでもある存在力なので、それ自体が何かに影響を与えることはない。故に属性を付けることで初めて他の存在へ影響を与えることができる。
なら、俺が自分自身に使用している強化魔法は無属性なので、属性が『無』いから魔法として成立しないはずなのでは?などと思ったのだが、無属性というのは定まった属性に属していない属性のことをそう呼称しているのであって、属性が無い訳ではないらしい。
ちなみに無属性魔法の強化魔法は、筋肉や神経などの出力や入力を高める魔法として、正確には物理属性が付与されている。
定まった属性というのは、正の性質を持つ四大属性として『火』『水』『風』『土』、それらの中間に位置する負の性質の四大属性である『雷』『氷』『木』『溶』、正負の統括属性の『光』『闇』、精神を司る『聖』『邪』、世界を司る『星』『月』、創滅を司る『秩序』『混沌』の16属性のことだ。それに属性外の『無』を含めて計17属性となる。
属性変化の習得は、その属性を知るところから始めなければならない。例えば火属性を習得するのなら、『火』がどのような形や色をしていて、それが周囲にどのような影響を与えるのかなどを多少なりとも理解する必要がある。火は赤くて、熱くて、燃えて、燃えるものを近付けると移る、といった具合に大体な感じでもかまわない。世界のマーナとリンクすれば、大体のイメージでも世界の方にうまく調節してもらうことができるからだ。
そのように習得したい属性のイメージができたら、自分のマーナがそれと同じ性質を持ったものに変化するように訓練する。オーソドックスなやり方としては、手のひらに小さな球体をマーナで作り、それに属性が付与するまでひたすら集中して念じるというものだ。また、最初に習得する属性は火水風土のどれかにした方が習得しやすいらしい。
自分のマーナに属性が付与され始めたら、次に属性の影響範囲を制限できるようにならなければならない。すでに世界とのリンク、形状変化までできるようになっているのなら、属性を付与した時点で取り出したマーナが魔術と成って発現してしまう。魔術としてはただ単に属性付きの球体が発生しただけだが、火属性が付与されている場合、その影響で近くにあるものが焼けてしまったりする。手のひらに球体を出したのなら、手が火傷を負ってしまう。それを防ぐために、一時的に属性による影響を形状変化した自身のマーナの内側のみに押さえるようにイメージ訓練をするか、それとは別のマーナを発生させて自分を保護するように覆うか、どちらかの方法を使用できるようにならなければならない。1度に使用するマーナが多ければ多いほど、周囲への影響も大きくなるので、最終的には両方マスターした方が良いのだが、まずは自分に合っているか、訓練する環境によってどちらかを選べば良い。
世界へのリンク、形状変化、属性変化を習得したのなら、あとは自分が望む効果の魔術の開発だ。どれだけの規模で、どのような形で、どんな属性の術を作るのかは魔術の醍醐味だ。魔術を使う存在である魔術師のセンスが問われる。
色んな魔術を開発するのはいいが、たくさん作りすぎることで発生する問題もある。それは魔術の選択過多による発動遅延と未熟性だ。
魔術はマーナを直接操作することができる技術だが、魔法と違いリンクや形状及び属性変化を自分で行わなければならないものだ。それ故、それらの操作速度が遅いと、本来魔法よりも優れたものである魔術が、その意味を為さなくなってしまう。魔を具現する時に重要な要素の1つが具現速度だ。特に戦闘においては最重要な要素でもある。刻一刻と状況が移り変わる場面では、状況に合わせて魔を具現できるかどうかで生死を分けるといっても過言ではないだろう。
そのような状況において詠唱や宣言の必要ない魔術は、具現速度が魔法よりも優れているはずだが、使おうとする魔術が使いなれていないと、形状変化や属性変化に手間取り、下手をすれば同じ効果の魔法よりも遅く発動してしまう。
だから、魔術を使いこなすためには、同じマーナ量、同じ形状、同じ属性の術を何度も使用して、その魔術の発動までの工程を感覚的に覚えるという、言い方を変えれば熟練度を高める必要がある。熟練度の高い魔術は、ものによってはほぼ一瞬で発動でき、戦闘においては非常に高いアドバンテージを持つことができる。それ故、使う術の選択肢が多いと、一つ一つの熟練度を高めるのが難しくなり、未熟な魔術がたくさん使えるなどといった魔術師となりかねない。
ただ熟練度を高めるのは簡単ではなく、かなりの回数の使用が必要となるため、実用性のある魔術を多数揃えるのは難しく、1つの魔術もしくは1属性のみを使いこなす魔術師が生まれやすい。
そうなると、いくら熟練した魔術でも簡単に対策がとられてしまう。
そこで、魔術の魔法化という手段が産み出された。
魔術の魔法化とは、本来マーナの操作で発動できる魔術を、魔法のように何かの法則を与えることで、使用する魔術のマーナ操作を自動化する技術だ。
だが、そうなると始めから魔法を使っていれば良いのでは?という話になってくるが、魔術は魔法と違い法則を自分で作ることが魔法化の利点だ。
まず、魔法化したい魔術を決め、それに必要なマーナ量、形状、属性を指定した上で、発動の鍵となるキーワードを指定する。
キーワードは単語、文章、印結など何でもよく、それらを組み合わせたものでもよい。ただ、魔術の規模が大きいもの、効果が高いものはあまりに単純なキーワードでは発動に失敗する可能性がある。また、キーワードが使用する魔術と関係の無いものを指定しても同じく失敗の原因になりやすい。
しかし、その辺は術者次第で移ろいやすいもので、他者から見たらキーワードと術内容が違っていても、本人が関係が深いと心から思っているのであれば発動に成功したりする。
そういうわけで、魔術師の中には敢えてキーワードをおかしなものにして、相手に術内容を知られないようにする人もいるらしい。
キーワードまで決定したら、あとは世界へリンクした状態でキーワードを実行した後で使用する魔術を発動する、それを繰り返して行うだけだ。
何度も繰り返していると、やがて自分の精神内でキーワードと術内容が繋がりを持ち始め、キーワードを実行しただけで自動的に必要なマーナ量、形状変化、属性変化を行い術が発動するようになる。
世界へのリンクをしなければならないのは、魔法のシステムを世界と自分とで共有し、魔法のように魔術を使用することで自分の中にシステムを構築する為だ。
1度構築することができれば、次回から魔術の魔法化はよりやり易くなり、いくつもの魔術を魔法化していくことで、やがて手順を省略できるようになる。上記したやり方ではなく、術のイメージが明確になっているものであれば、初めて使用する術であっても発動が可能になるのだ。
その域に達したキーワードは『コトダマ』と呼ばれ、この『コトダマ』が使えるか否かが一流の魔術師としての条件の1つと言われている。
そして、一流の魔術師がさらに魔術を極めた先にあるのが魔導である。
魔法は魔を法則に従って世界に使わせてもらっているものであれば、魔術は世界と対等に取引をしているものと言える。しかし、魔導は世界を1部分ではあるが従わせて行うものである。
魔導はマーナ操作がほぼすべてと言って良い。しかし、その操作技術は魔術とは桁違いに難しい。
魔術では自分のマーナだけを操作出来ればよいが、魔導では自分以外のマーナを操作する技術が必須である。
先にも述べたが、自分以外の存在とリンクするというのは魔属化などの危険が伴い、更に他の生物へのリンクは世界とリンクするより遥かに危険度が高く、自身の精神の損傷もあり得る。
しかし、その危険を回避し操作技術を得ることができたのなら、その者は魔を扱う存在として人外とも言える秘術を習得することができる。
その1つとして世界のマーナの所有権を得る秘術がある。これは魔術や魔法を使用する時に自分のマーナの代わりに世界のマーナを消費することができる術で、世界中のマーナを消費し尽くさない限り術を使用し続けられる。
他にも発動している魔法や魔術に直接干渉して内容を変更したり、マーナとして自身に吸収したり。
本質の存在エネルギーであるスピルをマーナへ、マーナを物質の存在エネルギーであるプラナへ直接変換する存在質変換術や、英雄召喚や異世界転移などの異世界へのアクセス、時間への干渉、天候操作、不死者への転生などなど。
…なんてチート。
そこまで来たらもはや神と似たようなものじゃないか?
ただ、その域にたどり着く人間はほぼ0で、1000年に1人程の才能を持つ天才が100年近く修行してたどり着いたら奇跡、というぐらいらしい。
まぁそんな簡単に習得できるものな訳ないか。
しかし、その1部のみなら、ユニークスキルのような形で使用できる人が存在するようだ。
何の才能もない俺なら、1生どころか3生生きても無理っぽいな。
『〈最後に〉
魔はそれ自体では何かを害することはありません。道具と同じように、それを使用する者がどのように扱うかで害あるものか有用であるかを決定付けるのです。
魔はその人の心の精質を表すもの。あなたが歪んだ心を持っているのなら、あなたの魔は歪んだものになるでしょう。
その事を忘れないで下さい。
では、あなた生に幸あれ』
…。
…。
俺は『魔学教本』を閉じた。
あー、何だかものすごく長い時間読んでいた気がするな。
時間を確認すると、何と5時間近く経っていた。
かなり興味深かったので、つい読みふけってしまったな。
俺は内容を振り替える。
とりあえず、魔法はこのパソコンからしか習得できないらしい。おそらく。
俺は肉体改造と同じように簡単にポイントを振り分けて魔法習得なんてしたくない。どうしようもなかったら諦めるけど、時間ならたっぷりあるのだし、出来れば自力で習得したい。
と、なると、法則に縛られない魔術を習得するしかないだろう。
ただ、問題が1つある。
俺がいるここは神域と呼ばれている場所らしい。
そして、神域には魔術を使うために必要なマーナが無いし、俺自身は神だから、俺の中にもマーナがないっぽい。
エクシスならたくさんあるのにな。
…待てよ?
エクシスならあるんだよな?
そして今俺にかかっている魔法はエクシスを消費して使っているんだよな?
なら、マーナじゃなくエクシスを使った魔術ならを覚えることができるんじゃないか?
習得の仕方は魔術の覚え方と同じような感じでも行けそうだし。
試してみる価値はあるだろう。時間ならたっぷりあるのだし。
時間をかけすぎると飽きてしまうかもしれないから、マーナ感知ならぬエクシス感知技術はできるだけさくさく覚えたいなぁ。
と、俺はパソコンの検索昨日を使って『エクシス感知』できる魔法がないか調べてみる。
…。
…あったよ。
『検索』って便利だなぁ。
ご都合主義というか、こんなにも便利でいいのだろうか、と思わず苦笑してしまった。
もしかしてあれか?この世界は俺の世界だから、色々俺に都合のいいようにできているのだろうか?
うーん…。あり得なくは、ないな。
まぁ、とりあえず見つかったものは良かったこととして、『エクシス感知』の術内容を確認してみる。
『エクシス感知の魔法は、使用した者の視界にあるエクシスを視認及び感覚で知覚することができる魔法です。エクシスの濃度はは視認で薄い場合は黒色に、濃くなるにつれて青、水色、黄緑、黄色、橙色、赤、白と変化していき、感覚的には薄い場合は冷たく、濃い場合は熱く感じます。消費Eは毎時間1Eとなっています』
ふーん。何だかサーモグラフィみたいだな。
俺は以前テレビで見たことのある映像を思い出した。
何かの教育番組の実験で温度差を調べていたんだったっけ?
まぁいいか。
1時間1Eなら何の問題もないし、早速使ってみるか。
『エクシス感知』を使ってみると、先ほど想像したように通り、まさにサーモグラフィのようだった。が、これは…。
「赤ばっかりじゃないか!?」
目の前が真っ赤に染まったのを見て、思わず大声を上げてしまった。
いや、完全に赤1色というわけではない。
部屋にある物品は赤と白の中間色になっていて空中との境い目がちゃんとわかるし、空中は気流の流れのようなものがエクシスにもあるのか、赤をベースとして橙色から水色がグラデーションのように常に変化し続けている。
しかし、かなり見辛い。
けっこう濃度が高いようだが、感覚的にはそんなに熱さを感じない。まぁ、熱い冷たいといっても火傷や凍傷するぐらいな訳ないか。
何となく暖かいのはいいとして、視界が見辛いのは困るな。
俺は辺りを見渡しながら色の濃度が薄くなるように念じてみる。
…おお、ダメ元だったんだが、うまくいったようだ。
色の濃度は念じることで調節できるようだ。俺はどの程度まで調節できるか色を濃くしたり薄くしたりと、魔法の効果を試してみた。
これを魔法なしで見れるようにしないといけないのか。
…そんなことができるのか?本当に。
イメージしたぐらいでいろんなことが出来るなら、元の世界でもリア充になっていたって話だよ、全く。
…あ、そうか。この世界ではイメージしたぐらいで出来るようになる世界なのか。
なら、とりあえずやってみるしかないな。
魔法とか魔術とか使えたら、楽しいだろうなぁ…。