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カウンセリングルームにて。

「あんたのおかげでえらい目にあいましたよ」

「ふぅん?」

 ソファの上に両足とも引き上げて――もちろん靴は脱いでる――桂吾の論文の草稿を読んでいたら、文句を言われたので生返事を返す。

「あんたなんで俺のうちにまで送りつけたんですか?」

「桂吾の家にだけ届かないのも不自然でしょ?」

「まぁ、そりゃそうですけどね。おかげで親父からは哀れみの目で見られるし、母さんはあきれるし、祖母さんには説教くらうし、弟共には爆笑されるし……。少しくらい慰めようとか思いませんか?」

 げんなりした口調についふき出してしまった。

「たまにはいい薬じゃない。どうせちゃんと誤解は解けたんでしょ?」

「当たり前ですよ。よくない噂のある生徒がよってきたから、調査がてら付き合ってただけだって証明しておきました」

「ならいいじゃない。――あ、ここおかしいよ」

「え? 穴ありました?」

「まぁ、桂吾が送る予定の雑誌ならたぶんつつかれないと思うけどね」

 いれかけの紅茶を横に置いて隣に座った桂吾がのぞき込んできたんで、気になった部分を示す。たぶん求められているレベルでは気にされない程度――というか、気づかれないレベルの矛盾だとは思うけど、と前おいてから説明する。気付いているのに指摘しないのも不親切だもんね。

 ざっくり説明し終わると桂吾が苦笑いでうなずいた。

「確かにそうですね。でも、今の修正、かけちゃっていいんです?」

「うん?」

「その理屈、あんたの発表した理論でしょう。完璧すぎて誰も他に応用して組み込む事ができなかったあれ。一分の隙もなく証明されてるのに、いまだに誰一人応用展開できない伝説の理論を俺なんかの論文で活用していいのか、と聞いてるんですよ」

「桂吾が嫌じゃなければかまわないよ? どうせ高浜綾は死人だし、唯一の弟子と目されてる桂吾なら不自然ではないでしょう?」

「そりゃぁ、俺はあんたに一番近い研究者でしたけどね。……本っ当、学名に興味ねぇな、あんた。孤高の一輪花・高浜綾の伝説にけちがつくんだぞ?」

「そんな痛い二つ名いらないですからっ!」

 生前から言われていた痛すぎる二つ名を言われ、思わず桂吾の頭をはたく。というか、この分野ではかなり有名な研究者なのになんでスクールカウンセラーなんてやってるかな? そりゃ、学生のリアルな情報を随時手に入れられる環境は悪くないんだろうけど、桂吾の性格だと現場より研究の方が好きそうなんだけどな。やっぱり瀬戸谷の跡取りともなるとある程度時間の融通がききやすい仕事じゃないとまずかったのかな?

 ……まさか、乙女ゲームの舞台と同じ名前が面白そうで決めた、とかじゃないよね?

「そういや、あんた将来はまたこの道に進むんですか?」

「進まないよ。あの頃はこれが面白そうだと思ったけど、綾の人生をなぞる必要性も感じないしね」

「もったいねぇな。いまだに学会はあんたの論文検証してんだから、割ってはいりゃ成功間違いなしですよ?」

「古巣に顔出して正体ばれたらいいモルモットだもん。そんな面倒な事ごめんだよ」

 やたらと残念がる桂吾にため息混じりの返事を返す。

「今度は普通に会社員とかやるのも面白そうかなって思ってるんだけど」

「あんたが? そりゃ無理だ」

「なんで?」

「どんな会社に入ろうが三年以内に頭角現して出世コース、末は役員でしょうね。平凡な人生なんてあんたには無理ですよ」

 さらりと決めつけられて眉を寄せる。そういえば桂吾は昔からそう言うんだよね。

「だいたい、あんた、そのやたらな記憶力と規格外な理論構築力、しかも人の倍速以上の思考処理速度しといて、普通の人生とか片腹痛いんですよ」

「……酷いけなし文句だね」

「褒めてます」

「嘘付きがいるっ?!」

「どこから聞いても能力絶賛してるでしょうが」

「口調が! 表情が! 小市民的な夢を持つなんて分不相応だと物語ってるから!」

 まったく悪びれない桂吾の耳を引っ張って怒鳴ると、ばれましたか、とちっとも反省してない声が返ってきた。まったく、のれんに腕押しだなぁ。

「ま、論文は好きにしたらいいよ。桂吾なら理屈さえ聞けば他の理論使ったってどうとでも修正できるでしょ?」

「ま、できますけどね」

「だから好きにしたらいいよ。その信仰に近い高浜綾への思い入れを否定するつもりもないけど、私はもう篠井彩香だからそこだけはき違えないでくれればそれでいいし」

「目の前で思い切り高浜綾としか思えない言動をしておいてそれを言いますか?」

「中学生相手に本気でプロポーズするつもりならとめないよ? 瞬殺で断るけどね」

「うわ、ひでぇ。いくらなんでも俺はそこまでがっついてませんって。それに、あんた抱くとか恐ろしすぎて無理です」

 ずいぶん昔にも言われた言葉に小さく首をかしげると、桂吾が苦笑いになった。

「だって、あんたの思考速度と解析能力考えたら、やってる間にこっちが考えてる事端から分析されそうじゃないですか。刺激が乏しくて暇だとか言って。で、やたらと冷静に何が悪かったか駄目出しされそうで悠長にそんな気起こしてられませんよ。しかもあんた絶対、最中でもそのしれっとした顔のままでしょうし。――まぁ、俺の知ってる高浜綾なら、の話ですけどね」

「……否定はしないけど」

 確かに、高浜綾(昔の私)が取り乱すところとかあんまり想像つかないかも。昔の私はそも感情の起伏自体が一定の振れ幅以上になる事がなかったし、研究に没頭できて気分転換にそこそこのお酒とおいしい肴があれば他にはほとんど興味がなかった。本やら映画やらは一度で完璧に暗記できたから、繰り返して読んだり見たりなんてのは本当にまれだ。今思えば常に変わり続ける状況に対処し続けないといけないような仕事に就くべきだったのかも知れない。

「むしろ、子犬みたいに兄と従兄になついてる篠井彩香があんただってのが今だに信じきれないんですが。多少は演技なんですよね?」

「別に演技してるつもりもないよ。たまに年相応な言動を意識する事はあるけど、素だから」

「ちょ?! あれが素?! 変わったとは思ってたしいい事だろうが、ありえねぇくらい気持ちわりぃっ! あんた一体何があった?!」

「驚きすぎでしょ、それは……」

 目をむいて叫ぶ桂吾に思わず遠い目になった時、インターホンが鳴る。

「あら、仕事が入ったみたいだね。帰るよ」

 来室者を告げるその音はカウンセラーに相談したい人間が現れた証拠だ。このカウンセリングルーム、廊下に続くドア以外にもう一つ、この部屋から中庭に出られる掃きだし窓があるんだよね。たぶん、生徒がかち合わないようにという配慮なんだろう。草稿をテーブルに投げて立ち上がったけど、来室者に返事をした桂吾が首を振る。

「せっかくいれたんだからお茶ぐらい飲んでってください。まだその位の時間はあるでしょう? 来室者もあんたの同席を嫌がったりしない相手ですからドア開けてやってくださいよ。俺は人数分の茶菓子用意してますから」

「ふぅん?」

 桂吾がこういうならかまわないんだろう。こう見えて仕事は完璧にというのが主義だ。言われるまま廊下へと続くドアの所まで行ってロックを解除すると――、そこにいたのは雅浩兄様だった。

「あぁ、やっぱり来てたんだね」

 予想外の相手にきょとんとしたのは私だけだったらしく、雅浩兄様は見慣れたやわらかな笑顔を見せてくれた。

「生徒会の仕事が終わったんだけど、彩香もまだ学園内にいるって言うからここかなと思って」

 まぁ運転手に確認すれば私の送迎車がまだ駐車場にいるのはすぐわかる事だから不思議でもないけど……。最近、藤野さんほったらかしにしてない? 大丈夫なのかなぁ。あの人がそこまでおとなしくなったとは思えないし、篠井の両親から例の写真の事で何か言われたりしてそうなんだけど、まったくそんな様子もないのが不思議なんだよね。

「瀬戸谷先生が一緒にお茶をどうぞって言ってるけど、どうする?」

 とりあえず伝言だろう内容を伝えると、雅浩兄様はうなずいて中に入ってきた。習慣で鍵をかけてから続いて戻ると、応接セットのテーブルには人数分の紅茶にチョコレートの盛られた小さな器と二口サイズのシュークリームが並んでいた。

「こんにちは、篠井君。生徒会の仕事は順調かい?」

「おかげさまでなんとかやれてますよ。いつも妹が入りびたりでご迷惑でなければいいんですが」

 ……あいさつに微妙な緊張感があるのは気のせいでもない、かな? まぁ、つっかかってる雅浩兄様を桂吾が面白がってからかってる感じみたいだけど。さすがの雅浩兄様もまだ桂吾とやり合っては分が悪いと思う。あれでかなり有能だし癖が強いのが瀬戸谷桂吾って人間だから。考えてみたら、高浜綾が持て余した相手って、桂吾だけだもの。

「いえいえ。彩香ちゃんにはいつも楽しい話を聞かせてもらってるからね。大歓迎だよ」

 うっわ、彩香ちゃんとか呼ばれた?! 気色悪っ?! 雅浩兄様から見えない位置で盛大に鳥肌を立てて硬直した私を見て、桂吾がちらりと意地の悪い笑みを浮かべる。

「さ、座って。せっかくのお茶が冷める前に飲んでもらえると嬉しいな」

 勧められてソファに座った雅浩兄様の隣に並んで座ると、早速紅茶に口をつける。昔っから器用な人だったけど、桂吾の入れる紅茶っておいしいんだよね。

「おいしい」

 桂吾のいれる紅茶は水色が濃い割には苦みが少ない。お茶菓子が甘いものだからかいつもよりは少し濃いめだったけど、ストレートで飲んで渋いと感じるほどじゃなくて。本当、絶妙だなぁ。

「それはよかった。篠井さんに喜んで欲しくてがんばった甲斐があったよ」

 お茶にほっこりした私に向かって桂吾がたらしな台詞を口にする。なんだか妙に愛想をふりまくけど、そんなに雅浩兄様からかうのが楽しいの? ……私をかまうのがどうして雅浩兄様からかう事になるのかはわからないけど。

「そういえば、篠井さん」

「はい?」

「この前の殴られそうになったっていう相手、あれ以来大丈夫?」

「別に問題ないですよ。あれきり顔あわせる事もないですから」

 藤野さんですね。確かにあれは少しあおりすぎたかとも思うけど、今ここで確認しなくてもいいと思うの……。さらっと流したけど、隣の雅浩兄様が若干黒いオーラになったりならなかったり。……これは帰りの車でお説教タイムかしら?

 何気ないふりで隣をうかがったら、丁度こっちを見ていた雅浩兄様とばっちり目があってしまった。

「どうしたの?」

「う、ん。雅浩兄様、怒ってるかなぁって?」

「それは連日習い事の時間ぎりぎりまで瀬戸谷先生にご迷惑かけてる事? それとも、殴られかけたって話を黙っていた事に対して?」

 だから笑顔が怖いですって! その、さぁどうやって叱りつけてやろうかな、と言いたげな笑顔、すごく怖いから!

「ええと……。二つ目の方?」

「何度も何度も、何かあったら必ず教えてね、って頼んでるのにちっとも教えてくれないんだもんねぇ。そろそろ信用されてないのかなぁ、って不安になってもしかたないと思わない?」

 紅茶のカップ片手に満面笑顔で言う台詞じゃありませんから?! だいたい信用してくれてないのは雅浩兄様の方だよねっ?!

「いや、その……。未遂だし、……大丈夫かなぁ、とか?」

「大丈夫じゃないから。相手はどこの誰? 騒ぎにしたくないのなら学園側にも父さん達にも黙っておくから教えてくれる? 僕が二度とそんな事しないように釘さしておくよ」

 待って待って、それ大抵の相手にとって破滅宣告だからね?! 雅浩兄様、自分の影響力わかった上で言ってるでしょ?! というか、私の事思いきり疑ってかかってるはずなのに、なんで何もなかったような顔して普通に心配とかしてるんですか?!

「君のクラスメイトの藤野さんだよ」

「……はい?」

「だから、高等部うちの一年で外部生の藤野美智さんが犯人なんだよ。疑うなら現場の写真があるけど見るかい?」

 さらりと何ばらしてくれましたか?! 私がにらむのもどこ吹く風で一口サイズのチョコを口に放りながら桂吾が楽しそうに告げる。

「篠井君は藤野さんと仲がいいみたいだから、遠慮して言えなかったんじゃないかな? 陰口みたくなっちゃうし、篠井さんの性格だとちょっとお兄さんには相談できないよね」

 表面上私の肩を持っているけど、実のところ、自分が話せなくしてたんだろ、と雅浩兄様を責めてるようにしか聞こえない……。本当、性格悪いね、桂吾……。

「その前の事件も藤野さんが絡んでるみたいだし、そんな事が続いたら怖くて話せなくなっちゃうのもしかたがない事だと思うよ? 特に、篠井さんみたいに家族を大切に思っている子は、心配かけたくないとか、嫌われたらどうしようとか、そういう理由で自分を縛ってしまうからね。よっぽどじゃないと暴力をふるわれただなんて自分から言い出せる話じゃない。篠井さんを責めるのは少し可哀想かな」

 さらに、実子じゃないから遠慮があるんだろう、ってつつきますか。遠回しに、そんな遠慮させてるお前が悪いんだよ、って指摘してるの?

 雅浩兄様をうかがうとくっきり眉間にしわが。からかいながらも桂吾が私をかばってくれてるのはわかるんだけど、あんまりやらなくていいから。後で追及が厳しくなって困るの私だから……。

 でも、桂吾は何を考えて雅浩兄様をこんな風にかまうんだろう? 目的もなしに誰かをあおるような事をする人じゃないんだけどなぁ。

 ――雅浩兄様をどこまであおったら私が怒るか試して遊んでる、とかいう理由もあり得るのが桂吾の困ったところだけど。

「藤野さんといえば、瀬戸谷先生も親しかったようですね」

「あぁ、彼女には色々噂があったからね。どんな子なのか知りたくて関わってはいたよ。なかなか難しい子みたいで苦労させられたかな」

 あれは疲れた、と紅茶片手にため息をつく桂吾。絶対面白がってたはずなのにどの口が言うの……?

「まぁ、他の生徒に関する話はしちゃいけない事になっているから、話せるのはこのくらいかな」

 あっさり話をたたんだ桂吾に探るような視線をむける雅浩兄様。――なるほど、篠井の両親は私が匿名で送った写真を雅浩兄様にも見せたのね。確かにそれが一番手っ取り早い確認方法だと思う。ただ、それなりの信頼関係がないとこじれるだろうけどね。篠井の両親と雅浩兄様ならそんな心配はいらないけど。

「僕の個人的な交友関係を知りたいのなら、カウンセラーと生徒以上の関係になれるよう頑張ってもらうしかないね。――篠井さんみたいに」

 何を聞かれてるのかわかってるだろうに、すっとぼけて私を巻き込まないで欲しいな。ごまかしがてら知らん顔でシュークリームを一口かじる。

「……あれ? これ、もしかしてリディアフィール?」

 私がまだ綾として生きてた頃、桂吾がよく手土産に持ってきた店の味そっくりなんだけど。甘さがきつくていくらか大味なのに不思議と後をひくんだよね。論文書いてる時とか、これを片手にやるとはかどったの。

 私の指摘に桂吾が嬉しそうに笑う。

「そうだよ。篠井さんの口にあうんじゃないかと思ってね。昨日買って来たんだ」

 たかがシュークリームのためにどれだけ労力さいてるの?! あの店、この近辺に支店あった?!

 つっこみたいのを我慢していると、いたずらっぽく笑った桂吾が答えを口にした。

「片道二時間ちょいかな」

「ちょあなた何やってるの終業後に五時間かけてシュークリーム買いに行くとかそこまで暇ですか?!」

 こらえきれなくてついまくし立てたら、思い切り笑われた。桂吾に力一杯笑われた。――なんだか腑に落ちないんだけど、お腹抱えて笑われるとなんかもう反論する気力が……。しかも隣からもなんだか微妙な視線がむけられてるし、今日は散々……。

「前も思ったけど、篠井さんのその癖、かわいいね。興奮するとワンブレスで長台詞って、ちょっと他にはいないし」

 まだ笑ってる桂吾の言い草に舌打ちでもしたい気分だった。前回は、あんたそれなんなんですか、面白すぎでしょう、とか言ってたよね。かわいいって表現すれば全部許されると思ってない?

「まぁ、気に入ったなら残りはお土産に持って行って。僕一人じゃ持て余すから」

 私の視線に気づいたのか、桂吾が強引に話題をシュークリームに戻した。

「さっきのお礼も兼ねて、ね」

 あぁ、さっきの草稿の矛盾指摘した事? 最初からくれるつもりで買って来てくれたんだろうけどね。桂吾自身はそれほど甘いもの好きじゃないもん。それなりに食べはするけど、一回の量は少ない。一箱買って来て桂吾が三つ、私が十七個、が基本だったしね。本当、時々すごく私に甘いんだから……。

「ありがとうございます。これ、好きだから嬉しい」

 嬉しさに二割増しの笑顔をつけて、の鉄則に従ってお礼を言ったら、二人が軽くかたまった。……だから最近私のまわりの人はなんで不自然にかたまるの?

「本当、かわいいなぁ。篠井さん、僕と結婚しない? こんなかわいい奥さんがいたら幸せだろうなぁ」

 さっきそんな気起こせないだの言ってた口で何を言いますか。そもそもこっちだって桂吾みたいなややこしい男はノーサンキューだからね? 表情一つ動かさないで、自分そっくりなキャラを攻略する乙女ゲームやりこむような男、誰が恋人にしたいと思うんだろう……?

 どうせなら優しくて甘やかしてくれるような人がいいよね。克人兄様とか雅浩兄様とか――って、ちょっと待ったそれ違うこの人無関係限りなく嫌われてそうな相手とか除外除外っ。

 この前のだってただのからかいに違いないんだから唇のすぐ脇にキスとか絶対からかってたしっ。

 てうわ思い出したら顔赤くなったかもだからあれは絶対そんな意味じゃなかったし意識するような話じゃないからね?!

 一人であわあわしていたら、桂吾がそれはそれは楽しそうに笑った。でもその視線が私にむいてないのに気づいて隣をうかがうと……。

 だからなんでそんな不機嫌ですか魔人降臨しかけてる怖いやめて何私悪くないっ。

 そも今魔人呼ぶ要素なかったはず何なんなの怖い原因不明とか恐ろしすぎていやぁっ。

「あれ、篠井さん顔色悪い?」

 内心半泣きになってたら、桂吾のおっとりした声がした。桂吾、絶対わかっててやってる……。

 でも効果はあったみたい。雅浩兄様が驚いたようにこっちをむいた。……そして舌打ちでもしたそうな表情になりました。いや、だから嫌なら私に関わらなきゃいいじゃない……。何のためにここ最近避けてると思ってるの? 逆ハーレムフラグ折りとの兼ね合いはかって慎重に距離とってるんだからね? 本当に避けられたら困るんだから……。

 つい手元に視線を落としてため息をついてしまう。そのまま視界に入った残りのシュークリームにやけでかぶりついた。

 本当、ろくな事がない日だなぁ。

お読みいただきありがとうございます♪

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