第四話「大丈夫、一人以下、ってのにはゼロ人も入る!」
やっほー、澪だよん。
一週間お休みしちゃったけど皆元気かなぁ?
ちゃんとお勉強してる?
ちゃんと恋、してる?
ちゃんと男の子になっちゃったり女の子になっちゃったりしてる?
・ ・ ・
「なワケ、ねーよなぁ。」
「ん?なんだ?」
梅雨前でよく晴れたフツーの春の終わりの下校途中。歩く私の隣にいるのはクラスでも一位、二位を争う人気の男の子、志築 誠。
しかし誠という名前だからと言って決して「誠死ね」とは思ってはいけない。(ネタがわからない人は近所の十八歳以上のお兄さんに聞いてみようね!)
この誠、あの誠とは違ってめっちゃ好青年。勉強運動そこそこ出来て、んでもって私達女子に優しい。で茶髪の顔も爽やか系とくりゃ、そりゃモテるなってほぉが無理、的な感じ。
「あ、なんでもねぇ。一人言。」
「うっわ、ミクオって気持ちわりぃとこ、あるんだね。」
「気持ちわりぃって言うなよ!」
「わりぃわりぃw」
この、台詞の最後にさりげなく芝生やしちゃう辺りが好青年を物語ってるよね。(謎
っていうか、急に「男になっちゃたぁ!(某まじしゃん風)」私はけっこ作り男してるから、喋り方とかノーマルテンションの誠よりも男っぽくなっちゃうんだよね。
で、なんでこの私が誠と一緒に下校してるかと言うと・・・
「僕料理しないから食材とかわからないんだけど、このメモあれば大丈夫だよな?」
誠はポケットから取り出したメモに目を通す。
「ああ、それありゃ、へーきっしょ。(まぁ私はこれでも一応女子、カレーぐらい作ったことあるけどね。)」
そう、明日は調理実習。そして班分けで一緒になった私達はそのまま買出し担当でも一緒になって、で、今ここってワケ。
ちなみに私は別に誠の事が好きでは無い。
まぁ誠に限らず、今の所特にとくてーの男子を好きって気持ちは無い。いつも鏡花達とキャッキャうふふしてるから男みたいな不潔な生物に恋心を抱く必要が無いのだ。だから、強いて言えば好きなのは鏡花かもしれない。
今こうやって一緒に歩いてても別にときめきもしなければもっといい雰囲気を望んだりもしない。むしろ更衣室での着替えのほぉがドキドキするわ。
なんつーか、好奇心?男同士ってどんなカンジで友達やってるのかなとか、普段何考えてるのかな、みたいな好奇心の方が先立っちゃってるのよね。
だから、今回の買出しも誠に任せムードで私は後ろから付いていくだけ、みたいな感じで見てたんだけど・・・
まず、スーパーに入ると誠はこう言った。
「にんじん、二本。」
そして歩き出す。入ってすぐの野菜コーナーできょろきょろと人参を探す誠。そして発見するとそこに近寄り、私に向き直って真顔でこう聞いてくる。
「一袋三本入りなんだけど、どうしよう(涙」
ヤバい、半泣きの誠ちょっと可愛いw
「んー、別んトコに一本売りとかあるかもしんないから、ちょっと探してみよ?」
「おー、そんなのあるんか、スーパーって便利だなぁ。」
どうしよ、カゴの存在をいつ突っ込もう。まぁいいか、しばらくほっとこ。
「あ、あったあった、これ二本買えばいいんだよな?」
「ちょい待ち。皆のお金なんだから、どっちが得かちゃんと計算しなきゃ。」
「え、そんな面倒な事するの?たかだか数百円の違いだろ?」
ったく、こいつはどこのおぼっちゃま、どこの鏡花様だ。
「その数百円であと人参何本買えると思ってんだよ。(それに数百円もちがわねー)」
「ミクオ、お金にはうるさいんだな。ちょっと意外だ。」
「誠が無頓着すぎんだろ。」
そう、私達はバスケの授業以来名前で呼び合う仲になっている。一週あいたからって忘れないよね!決して名前で呼びあってるからって妖しい関係って思わないでよね!
そしてきちんと計算し(一本人参の方が十円割高だけど、今回は一回きりの料理なんでそっちにした)、次のじゃがいもも同じように選ぶ。その次のピーマンも選んだ時、また誠が私を振り返り涙を見せる。
「どうしよう、持ちきれない。」
「あー、わかった、待ってて。」
笑いを必死に堪えてカゴを持ってきて、誠の持ってた野菜をその中に入れる。
「誠、もしかしてスーパー始めて?」
「ん?自分で買い物する事無いからね。始めてだよ。」
「へぇ。やっぱり。(そりゃそーだよな。)自分で料理とかしたりしねぇの?」
肉を選びながらちょろっと会話が弾む。
「あー、たまーにするけど、材料買ったりまではしないなぁ。そういうのは、ほら、妹がしてくれるし。」
「あ、誠、妹いるんだ?」
「おー、いるよ。生意気な奴だけど、な。」
そう言いながら微笑む誠の顔はお兄ちゃんらしさと妹への愛情に溢れている。
兄弟、かぁ。いいなぁ。私は一人っ子、そりゃ、兄弟ってものに憧れる。
「いいなぁ。俺、一人っ子だし、妹とか憧れちゃうわー。」
「んじゃ、今度僕の妹貸してやろうか?」
「はは、さんきゅw」
そーゆぅのは私よりも鏡花の方が喜ぶかも。
肉はふつーのバラ肉を選んだ。私はカレーにはブロックを薄く切ったのが好きだったけれど、班のメンバーがバラ肉しか知らなかったのだから仕方ない。
ぐー。
あー、なんかこうやってカレーの材料選んでたら、腹減ってきたなぁ。
「なんだ、ミクオ腹減ったのか?」
「ああ。あー、明日のカレー、楽しみだなぁ。」
「明日のカレーまで何も食べないつもりなん?」
「んなワケ、あるか!」
そしてルーも選んでリストのものは全てカゴに入れ終えてレジへ。清算も無事終えると私はてきぱきと袋に買ったものを入れていく。
「おぉ。」
それを見ながら誠が褒めてくれる。
「手際いいなぁ、ミクオ。もっと雑な奴かと思ってた。」
「(ちょ、乙女な私になんたる侮辱!?)見直したかぁ?へへん、惚れるんじゃねぇーぜ。」
「惚れねーよwでも、ミクオ、いいお嫁さんになれるんじゃねぇ?」
「え?」
突然、その一言が私の胸を突いた。その、「いいお嫁さんになれる」の一言が。
「・・・何言ってんだよ。(・・・どうして・・・私・・どきどきしてる・・)」
それから荷物は誠に頼んで、私達はスーパーで別れた。
帰り道、私は男同士の買い物ってのも変な絵面だなぁ、とか、今日の誠のスーパー初心者っぷりに呆れたりしながら、最後のあの一言を繰り返し思い出していた。
次話、「キッチンは戦場だ!唸れ包丁、吠えろじゃがいも!白熱、カレー対決!」に続く!
今の男子高校生ってスーパー経験率どれくらいなんでしょ。女子高校生もどれくらいか疑問w