第三話「面倒くさいから登場人物は一話に一人以下!」
さて、描写の面倒な一限と二限は飛ばすわ!
そして三限は体育だ。丁度いい、なんかもうこの溜まったもよもや感、めいっぱい体動かして吹っ飛ばそう!
と、体と共に心もだんせー的になった私を後ろから掴む様にして水を差す少女が一人。
「ちょいちょい。」
鏡花だ。
「な、鏡花、なんだよ。」
「そっちじゃない、そっちじゃない。向こう向こう。」
「ん?」
やっべー。
私は今まさに「女子更衣室」の扉に手を掛けそれをあけようとしていた。
このままでは炎の転校生ならぬ痴情の転校生、女子からは嫌われ男子からは軽蔑されぼっちになった私は人生に絶望しそれをきっかけに運気がだだ下がりして就職とかも失敗したりして何やら高額な坪とかを騙されて買っちゃったりして借金まみれになっちゃったりして世を儚んだりしちゃう生涯を惨めに送る事になっちゃうかもしれない所だった。
「うっわ、やっちゃうトコだった、さんきゅ、鏡花。」
「うん、それから壷、ね。」
「?」
幸い誰にも見られていない。
気を取り直して、いざ、男子更衣室へ。
がらがらがら~
(うっわ、なんだこの男臭さは!?)
どきっ!?男だらけの狭い空間なんかも、平然としてればなんてこたぁねぇ、なんてこたぁねぇと思っていた私は思わぬ不意打ちに少し頭がクラクラしてしまう。
(男子って、こんなトコで平然と生きる生き物だったのかぁ。やっぱ私、ムリかも。)
「あ、如月、お前んトコここだよ。」
「あ、ありがとう。」
半泣きの私を場所探してると思ったのか、男子が優しく案内してくれる。
そこで私はごそごそと手早く着替える。
(・・っつーか。)
制服の上着を脱ぎ、制服のズボンを脱いで、体操着のシャツを着て体操着のズボンを履く。
ただそれだけなのに、なんなの、なんなのよ、このやっちゃった感!!
そりゃ、私は男!誰もじろじろ見てないし、気にしてないけど!
こうして私は自分の中に芽生えた新たなドキドキに運動する前からうっすらと汗をかき顔を赤らめるのだった。
次話、「女に戻った!アルセニウス学園の転校生、完!」に続く!
「あれ?如月、顔赤くね?だいじょーぶか、風邪か?」
・・・次話予告したでしょ。ここは空気読んでこの話終わりにしてよ。
「あー、大丈夫、ちょっと引越しとか色々あったからね。ありがと。」
「そっか、あんま無理すんなよ?ほら、如月と入れ替えで転校しちゃった澪っつー女の子?あの子、けっこ無理しちゃうタイプだったから、さ。」
「あぁー、そういや、そうだったな。」
他の男子生徒達が割って入る。
「なんつーか、ちょっと危ういトコあったよな。」
「抱え込みすぎる、みたいな。」
「でも、そういう健気さってけっこ萌えねぇ?」
「え?お前好みだったん?」
「んー、三番目の彼女ぐらいにはいいかも的、な?」
「なんだそりゃ。」
なんだそりゃ。
・・・でも、私ってそう見られてたんだ。なんかちょっとうれしいかも。
それに、男子も鈍感なクセしてけっこ女子の事見てんじゃん。なんか見直した、かな・・
しっかし。
「うっわ、お、っと。」
三番目の彼女、は許せん。足を引っ掛けてやるとそいつは転びそうになりロッカーで体を支える。
「あ、ごっめーん、ちょっとふらついちゃって、あはは。チッ。」
(今、チッって言った!)
(チッって言ったぞ、こいつ?)
(やべ、もしかして時折悪魔の本性が出ちゃうんです的キャラか、こいつ?)
「ん?なんだ?」
「あ、いや、いこっか。」
微かな(?)疑惑を残したまま、皆は体育館へ。
そして三限はバスケット、私の好きなスポーツ!
私、ちょー理系家系の凡人お嬢様のクセに、スポーツ好きなのよねぇ。得意では無かったけれど。
でもそれは、ただ体が付いてこなかっただけ。
こう、私のイメージするバスケットの理想的なカタチ通りに動けなかったワケよ。
だ・か・ら。
「うし、ミクオ、パス!」
「さんきゅ、そりゃぁ!」
「おぉ~、ナイッシュゥ!」
パスを貰うとペネトレイトで切り込んで今日四本目のレイアップシュートを決める!
「ミクオすげぇなぁ。」
「いやいや、パスがよかったんだよ、ナイスパス。」
「いや、ミクオ、すげぇって。前のがっこ、バスケ部だったん?」
「え?違うけど?」
「素でこれかよ、すげぇ・・」
回りも歓声をあげてくれるけど、なにせ一番驚いてるのはこの私。
一言で言えば男の体ってすげー。
なにこの体力、このジャンプ力、この敏捷さ!
ちょーっと体が固いかなぁって気がするけど、そこはきっとお酢でも飲めば大丈夫!
こうして男の体を思わぬ形で満喫した私はスーパープレイ連発、先生にも褒められ、男子生徒ともいつのまにかファーストネームで呼び合う程に仲良くなれた私は今まで感じた事の無い満足感に満たされたのであった。
男ってのも、悪く無い、かも。
しかし授業後の男子更衣室にて、やり切った気持ちで汗だくになった体操着を脱ぎ捨て汗を拭き制服に着替えながら私が思う事はただ一つ。
・・・でも、やっぱり着替えはどきどきする・・・
さて、拭きとった汗は運動で出た汗だけだったのだろうか、どうだろうか。
次話、「大丈夫、一人以下、ってのにはゼロ人も入る!」に続く!
最近の高校生は恋バナが盛り上がるとか盛り上がらないとか。そのあたりの情報モトム