第二話「男の子はいきなり女の子に抱き付いちゃダメ!」
「鏡花・・・」
ここは俺のベッド、そこに横たわるは最愛の鏡花。
「澪・・」
そして鏡花はうるんだ瞳で俺を見上げる。
日曜の朝、これから一日、俺達はずっと一緒だ。
「誰にも邪魔させないよ、鏡花」
「澪、男らしい・・素敵、よ。」
「だろう?鏡花。もっと俺に惚れていいんだぜ。」
「うん、惚れるわ、・・・でも、ね、澪」
ばさっ、っと布団をはだけると、そこに横たわるはなんと男の体となった鏡花が!
「俺も、逞しくなったんだ」
「ちょ、ちょっ、ちょ、まてまてまてマテーーー!!」
と、慌てふためく俺は鏡花(男)にぐい、とひっぱられ・・・
と、夢オチ。
ここからが目を覚ました後のお話。
開口一番、
「サブタイのとおりなんだからね!」
ここは私のベッド、そして寝ているのは私(男)。
そんな私を怒りながら心配しながら少し潤んだ瞳で鏡花は見下ろす。
「・・・ふつー、そういうのはこの章始まってすぐの台詞じゃなきゃわかんなくね?」
「なによ、澪が勝手に妄想夢なんか入るから悪いのよ!」
「あははは。一度やってみたかったんだよね、夢オチ。」
そして私は腕組みをしながら、
「・・そーすりゃ、こんなバカげた状況も夢でした、ってなるかな、って思って、な。」
鏡花はゆっくりとベッドの端、俺の隣に腰を下ろす。
「ほんっとーに、澪なの?」
「ああ。」
「ほんっとーに、ほんっとーに、あの澪?」
「・・ああ。」
「ほんっとーに、ほんっとーに、幼稚園の頃大好きだった隣のおにーちゃんにリアル胸型チョコプレゼンとしたり、小学校の頃憧れの先輩に大好きです垂れ幕振ってアピった澪?」
「・・・鏡花、話大きくしすぎ。」
「でも、なんでそうなっちゃったの?」
「なんで、って、うぉ、わぁ、ちょ、だめ、まって、」
ちょーさりげなぁーく私(男)の股間をさする鏡花(女)。
「ん?あぁ、ゴメンゴメン、いやぁ、ちょっとどんなのかなぁーって、ちょっと好奇心?みたいな。てへっ♪」
「てへ、じゃねぇーよ!まだ俺だって触ってないんだからなぁ!」
慌てて押さえ込み真っ赤にした顔から湯気を立て恥ずかしさ全開の私であった。
「なぁんだ、つまんない。」
「つ、つまんない、じゃねぇよ、くっそー、こんな事ならお前が薬飲めばよかったんだぁー。」
半泣きの私の説明に鏡花はフツーに反応する。
「くすり?」
「そ、薬。昨夜、オヤジ達が海外出張先からみょーな薬送ってきやがったんだよぅ。理由はそれしか思い当たらねー。」
「ふぅん。で。澪、男言葉上手だよね。ほんとに男みたい。」
「う、まぁ、練習したからな。」
「見た目も男。」
「まぁ、見ての通り。」
いやーな予感に私が少し目を細める、と・・・
びしり!
と、私の顔を指差す鏡花は、なんとこう言ってのけた。
「あなたは、今から男の子!その名も『ミクオ』!」
はぁ?
の返事も出ないほどびっくりしてると、鏡花は
「大丈夫、安心して!ミクオ、なんて名前だけど今流行の緑髪ツインテ機械歌姫とはなんの関係も無いわ!」
「えぇ!?安心するの、そこぉ?」
「そうよ、このご時世、こういうのはうるさいからね。一文字伏せたり交えたりするだけじゃぁダメなのよ。」
「・・変なトコ現実的だなぁ。」
っつーか、その知識は何処から仕入れる、鏡花よ!?
「ってー、こ・と・で♪」
ぐい、と、鏡花がその顔を私に近付ける。普段めっちゃ可愛いいその顔も、今だけは小悪魔のそれに見え・・・
えっと、補足しとくね☆
鏡花はこの街でもゆーめーなおっきな会社の重役様のお嬢さま、どんな事でもお金で解決☆
って、オトメチックにテンション上げないとやってられないよぉ、これ・・・
「って事で、澪ちゃんはとーっても緊急で大事で急をようする御用で、ご両親の所へ行っちゃいました!」
ぶーぶー。
ここは私、澪だった人間のクラス。先生は朝のHRで「澪」の休学を宣言する。
まぁ、ぶぅぶぅというクラスの反応を私は喜ぶべきなのだろうか。
続けて先生は、
「で、まさに奇遇、遷宮、偶然の一致、なんと入れ替わりで転校生のミクオ君です!あ、あのグリーンツインテの有名人とは無関係なんで、そこんとこ皆よろしくね!」
おぉーーー、ぱちぱちぱちぱち!
「あ、ミクオです、よろしく。」
おぉー、ぱちぱちぱち!
このクラス、女子多めだったの忘れてたぁ!なんだ、この歓迎ぶりは!
言っとくが、昨日までそこの席に居たんだぞ、私は!
なぁんて私の心の叫びは誰にも届かず、私の席の隣で鏡花は親指立ててお目々キラキラ、ぐっ!っときたもんだ。
・・・どーか、この男性化が私の人生の黒歴史になりませんよーーーに。
次話、「面倒くさいから登場人物は一話に一人以下!」に続く!
ラノベ大賞、締切り伸びましたねー。これ、書き進めたら応募できる!?(ウソ)




