無能王子の昼食
あれから少し時間がたち、今俺とアリアは昼食をしている。
ただ、一つだけ問題がある。
どうして姉さんとリリア、そしてユリがいるんだ!
まだ姉さんとリリアは分かる。だが何故不登校のユリがいるんだ。
いや、まあ理由は分かっているんだけどな。これでも歳を数えるのが億劫なほど生きているわけだから人の感情というのもそれなりに分かる。色恋沙汰、というかそういう恋愛感情についても敏感なほうだ。
だとしてもユリには俺が通う日は教えていないのだから分かるはずないんだが。
もしかして、城に俺がいないから母さんか父さんに聞いたのか。誤算だった。
しかし問題なのはそこじゃない。
問題なのは、美人完璧生徒会長の姉さんと天才美少女のユリア、そして『六聖』のユリが俺たちと一緒いることだ。
姉さんとリリアは姉妹だから一緒に昼食を食べていてもおかしくないだろう。ユリも『六聖』ということを周囲が知っているから王族と一緒にいることも珍しいと思いつつも大丈夫だろう。(ただ不登校だからゆりのことを知っているのは数少ない人間だけど。しかもあの容姿だから『六聖』といっても怪しがられるだろうな)
そこに転校してきたばかりの俺たちが加わるとどうなるか。しかも男は俺だけ。顔も結構似ている。
つまり、
一気に噂になり、しかも俺が無能王子ではないかと囁かれることになる。そうならなくてもいらん注目や嫉妬を受けることになるだろう。
何故こんなことになってしまったんだろう。
だがこんなことは回想しなくても分かる。
食堂で食べている俺とアリアを見つけたからだ。姉妹の鼻とやらで。
「じゃあ、ヴァン先輩とアリア先輩は転校してきたんですね」
「そういうことになります」
「そうかならこの私が案内をしてやろうか?」
「いえ、生徒会長の手を煩わせるわけにはいきませんから」
アリアは俺が早く第三自由広場に行きたいことを察してくれたのか、早く会話を終わらせようとしてくれている。
だがこの姉妹、しつこく話題を振ってくる。兄妹なんだから俺の性格はよく知っているはずなんだが。
ちなみにユリは黙々と食事をしている。こいつらもユリみたいに静かにしてくれればいいのに。だが最愛の妹と一緒にいれるのはいいな。
ゾク!!!!!!!!
姉さんから恐ろしいほどの殺気が飛んできた。
リリアは眼に入れても気持ちいいが、姉さんは少し乱暴なんだよな。そこがポイントダウンなんだよ。当然姉さんも好きだけど。
「……ところで、……生徒会長たちは、……専攻学科の、……準備は、……しなくて、……いいんですか」
「おっと、そうだなではいくとしよう。リリアいくぞ」
「分かりました。ヴァン先輩たちもよかったら『魔戦学科』にきてくださいね」
そういうと二人は去っていった。ユリはまだ食べている。皿の塔が見事にできたな。
ところで、『魔戦学科』とは何だと思う奴もいるかもしれない。
前も言ったように専攻学科は『魔法学科』『騎士学科』『武術学科』『技術学科』『情報学科』の五つからできている。
だが、人の中には類稀なる才能を持っていたりして制御を身につけなければいけない奴や魔法と騎士を両方やりたいという奴もいる。そんな奴らのための学科が特殊学科だ。
特殊学科は『魔戦学科』『戦治学科』『統合学科』の三つがある。
この学科を受けるには三つ条件がある
一つ、すべての学科の適正がC以上あること。
一つ、専攻学科も受けて両方おろそかにしないこと。
一つ、すべての成績で赤点を取らないこと。とった場合は成績を戻すまで受講不可とする。
これが条件だ。姉さんは『騎士学科』、リリアは『魔法学科』で優秀な成績を持っているし、学園の顔のようなものだから当然大丈夫である。学科適正はE~Sまであって別に低いからといって学科を受講できないということは無い。
ちなみに姉さんの適正は
『魔法学科』 A
『騎士学科』 S
『武術学科』 S
『技術学科』 B
『情報学科』 A
化け物かよ。
リリアは
『魔法学科』 S
『騎士学科』 B
『武術学科』 B
『技術学科』 S
『情報学科』 S
恐ろしいな。
ということになっている。
ユリのは知らないけど。
アリアのは確か
『魔法学科』 A
『騎士学科』 A
『武術学科』 A
『技術学科』 A
『情報学科』 A
となっていた気がする。
ちなみに三人の適正は当然だがある程度実力を落としたときに測ったものだ。全力だとSSSくらいになりそうだし。
ちなみに俺はというと
『魔法学科』 B
『騎士学科』 C
『武術学科』 B
『技術学科』 S
『情報学科』 A
となっている。
あきらかに隠蔽工作です。
ちなみに無能王子として入るならすべてEかDになるだろうな。
つまり能力値的には特殊学科には入れるんだが、俺は寝たいんでな。
俺たちも席を立って移動を始める。ユリはやっと満足したようで、ホクホク顔で先に出て行った。
第三自由広場、屋上でいいか。屋上では後ろの奴らと一波乱ありそうだ。
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