ニーズ到着と謎の視線(♂4 ♀4 指定被り1)
※ここにある台本は一応残してはいるものの修正とかをしていません。
↓に加筆修正などの調整を加えた台本を置いており、続きもそちらで展開していきます。
http://cobaltvd.web.fc2.com/scriptlist.html
双極シリーズ以外の単発台本などもございますのでお使いいただけると嬉しく思います。
あー、このお話は消えまして、別物が上がっております……。
(2013/07/14)
「ニーズ到着と謎の視線」
↑
これがタイトルです!!
「ニーズ到着と謎の視線」──声劇双極魔術第四話
440台本。25分。
・登場人物
台詞数(※被りと合計した数)
↓
33 ヴァン……………♂17歳。本作の主人公。魔術師。生真面目だがときどき口調が乱暴に。
理性と論理で動くタイプ。感情表現は苦手ではない。
24 ルーシャ…………♀15歳。業師で奇術師。ヴァンの相棒。業師とは盗賊に似た多技能者。
22 パティ……………♀12歳。捕まっていた少女。
23 ホッグ……………♂30代。元山賊雑魚。髭面小太りの小男。ルーシャの下僕。
21 レンダル…………♂40代。元山賊サブリーダー。凄腕の元傭兵。
実は貴族の六男。それゆえどこか堅い。
21 シュタイン………♂20代。謎の魔術師。戦力外。女性でもできるよ。
23 モニカ……………♀13歳/100歳?。ロリ声で婆さん口調。
老魔女の幽霊が少女に取り憑いている。
14 ローレル…………♀20代。賞金稼ぎの死体見分役。魔女。長台詞あり。
モブ(被り指定)
ボーイ/ローレル役………♂20歳。ショタっぽく。女性がやること前提です。
・役表
「ニーズ到着と謎の視線」──声劇双極魔術第四話
http://ncode.syosetu.com/n9941w/6/
ヴァン♂:
ルーシャ♀:
パティ♀:
ホッグ♂:
レンダル♂:
シュタイン♂:
モニカ♀:
ローレル&ボーイ♀:
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*街へ続く道*
ルーシャ:ねえ、いきなり大所帯になっちゃったけど、これからどうするの?
ヴァン:子供たちについてはパティ以外、
明日の駅馬車に頼むつもりだから今日はどこかの宿を取る。
オレたちももちろん同じ宿。あんまし変なとこじゃないところにしたいな。
トラブルがあると困る。ホッグはついてくるんだろ?
だったらしばらく一緒に行動することになるわな。
パティは魔術の勉強のためにどこかの魔術学校に預けたいとこだが、
あてが見つかるまでは連れて行く。レンダルとシュタイン、モニカはどうする?
シュタイン:君たちについていくのが現状じゃ一番、面白そうだからね。
レンダル:オレの扱いはどうなんだ? 捕虜ってわけでもなさそうだしな。
自由にしていいなら少なくとも今日はニーズの街に泊まる。
時期を見てよそへ移るが、やはり当てがないからな。
当分はお前たちに同行しようと思う。
モニカ:儂は好きなようにやらせてもらうとしようかの。ひとまずは同じ道じゃ。
ルーシャ:子どもが十人、大人が五人。
他人が見たら何の集団かと不思議に思うでしょうね。
馬鹿でかい棺桶もあるし。
ヴァン:聞かれたらありのままに答えりゃいいさ。
まあ、レンダルとモニカについてはそうもいかないが。
パティ:あ、ねえねえ、あれって街の壁じゃない?
シュタイン:そうだね。あー、やっと見えてきたか。
このペースだと閉門前に滑りこみになりそうだね。
モニカ:余裕を持ってつきたければ集団転移でも使えば良かろう?
儂は覚えておらぬがの。
シュタイン:僕だって覚えてないさ。軍属の魔術師でもあるまいし。
ヴァン:同じく。間に合うんだからいいんじゃないか?
パティ:うわ~。おっきいね~。
シュタイン:明日半日くらい、子どもたちを観光させてもいいかもね。
ヴァン:そうだな。ホッグに頼むか。
ホッグ:お、おいらでやすか?
モニカ:お主、年長者に対しても遠慮がないのう。
ルーシャ:ああ、名家の生まれだから、いろんな人に指図するのに慣れちゃってるのよ。
ヴァン:……痛いとこ突くよなまったく……。
オレが動けりゃ自分で連れていくけど、明日は無理なんだよ。
マナを回復させるために休養がいる。
モニカM:反動じゃの……。
シュタイン:はんどグボッ!! な、殴らなくても……。
モニカ:ハンド? なんじゃ、五月じゃというにハンドクリームがいるのかえ?
シュタイン:……最近、肌が乾くんだよ。
ホッグ:そうなんでやすか?
実はおいらも肌が乾きやすくて。
ナメクジクリームは効きやすよ。使うならおいらの……
シュタイン:金貨もらったって使わないから!
ルーシャ:ホッグ……ちょっと離れて歩いてね。
ホッグ:いえ、おいらが使ってるわけじゃないんで。ただ預かってただけでやすよ。
パティ:ねえねえ、あとちょっとだよ! 門まで競争しようよ!
モニカ:元気じゃのう。では競争じゃ!
シュタイン:負けないぞ~!
ヴァン:あ……。棺桶に無関心かけてもらうつもりが……オレにまだマナを使えってか……。
*ニーズの街、大通り*
パティ:街の中って暗いんだね。外はまだ明るかったのに、どの家も明かりつけてるよ!
レンダル:暗いのは外壁のせいだ。高い外壁が斜めの光を遮っている。
パティは街は初めてか?
パティ:うーん、前にも来たことがあると思うんだけど、よく覚えてない。
レンダル:そうか。オレもニーズに入るのは久々だな。
そういえばヴァン、泊まる場所のあてはあるのか?
ヴァン:ふぁ~……。いや、いい宿を知ってたら教えて欲しいんだが。
宿代は高めでもいいから、でかくて清潔なとこがいいな。誰か知らないか?
レンダル:高級宿の部類でもよければ、割と新しい宿がある。
三階建てのトンプソンズ・スイートだ。場所は……
ヴァン:ああ、場所はいいや。魔法の地図があるから名前さえ分かればあとは調べられる。
う……やべ、寝そう……。
ホッグ:どうしたんでやすか? トンプソンズならおいらも場所を知ってやすよ。
ヴァン:そうか。ちょうどいいや。
レンダル、みんなを連れてトンプソンズに向かってくれ。
オレはホッグの案内で換金できる場所に行ってくる。
ルーシャ、汚れた子どもたちを嫌がったらチップを渡してくれ。
金貨五枚もありゃ十分だろ。……ふぁあ……。
ルーシャ:大丈夫? まぶた重くなってるでしょ?
ホッグ:ほへ? まだ日没ちょっと前でやすよ?
ヴァン:まあ、訳ありで。んじゃ、ホッグ、連れてってくれ。
ホッグ:へい。じゃあ行ってきやす。こっちでやすよ、旦那。
レンダル:オレたちも行くとしよう。ここからそう遠くない場所だ。
ルーシャ:……なんか意外。レンダルって不思議な人だね。
モニカM:む? この展開は……もしや三角関係フラグかの?
レンダル:何がだ?
ルーシャ:ヴァンがあんなに簡単に信用するなんて。
あいつあれでかなり疑り深いとこあるのよ。本人は否定するけどね。
レンダル:そう言われてもな。オレはヴァンではないから何とも言えん。
パティ:レンダルの優しさが通じてるんだよ! きっとそうだよ!
レンダル:優しさ、か……耳が痛い言葉だが、礼を言うところなのだろうな。……ありがとよ。
ルーシャ:そっか。ヴァンとどっか似てるんだ。あいつも苦手だもん。
素直に「ありがとう」って言うの。
パティ:ふーん。男の人って難しい?
ルーシャ:かもね。でも、女だってそれは同じかも。
レンダル:……っ!?
モニカ:む? レンダルよ、どうした?
レンダル:いや……気のせいだ。
レンダルM:今のは……確かにこちらを見ていたな。しかも試されたか……。例のNか?
モニカ:(小声)儂も気づいておる。お主ひとりには負わせぬよ。
パティ:わ、三階建て! お城みたいだよ! ねえねえ、宿ってあそこでしょ?
シュタイン:看板の文字はトンプソンズ・スイート。間違いないね。
ルーシャ:すごく高級感溢れてるんだけど……金貨五枚でどうにかなるの?
モニカ:なるようになるじゃろ。入るぞよ。
シュタイン:どもー、団体客でーす!
ボーイ/ローレル役:あのぉ……申し訳ありませんが、当ホテルは品格高い宿として、
お客様にも相応のご協力をいただいておりまして……
パティ:ひんかくってなーに?
ルーシャ:これチップ。その品格だけど、長旅でちょっと汚れちゃったの。何とかならない?
ボーイ/ローレル役:……ええとですね、ならないこともないのですが……
少々、支度に手間がかかりまして……
モニカ:まどろっこしいのう。ぜんぶ出してしまえ。ほれ、金貨五枚じゃ。
ルーシャ:あ! ちょっとモニカ!
ボーイ/ローレル役:はい!
当ホテルでは地下に大浴場がございまして、ただいま清掃中です。
すぐ済ませてご利用いただけるように手配いたしますので、
ロビーでしばし、おくつろぎください!
シュタイン:……結果オーライ?
パティ:ころっと変わったね。
レンダル:結局全額出してしまったな。
モニカ:ケチケチすることもなかろう。むぐむぐ……。
む、ここのジャーキーはなかなかの味じゃの。
パティ:あ! モニカずるい! レンダルの隣で! しかもひとりだけ買い食い?
シュタイン:パティも食べたい? 銀貨五枚までなら使っていいよ。買いに行こう。
パティ:行く!
モニカ:(小声)まだついてきておるのう。それも狙いはお主のようじゃぞ。
レンダル:なるほど。それなら問題はない。
モニカ:悠長な奴じゃ。あの娘を人質に取られたりせぬよう気を配るべきじゃと思うがの。
レンダル:……警戒は任せる。対処はオレの仕事だ。
モニカ:ヴァンにも一応知らせておいたが、敵が動くのを待つかのう。
*ロネンティ*
ホッグ:着きやした。ここでやす。
ヴァン:なあ、本当にここなのか?
ホッグ:ここでやすよ。
ヴァン:パブ・ロネンティ──素敵な出会いをあなたに──。……なあ、本当にここなのか?
ホッグ:中に入れば分かりやす! 女子供の客はいやせん!
荒くれ者たちが常連の店でやすよ! さ、入りやしょう!
ヴァン:何の偽装なんだよ、あの看板は……結構古かったけど。
ホッグ:どうもどうも。マスター、久しぶりでやすね。
ヴァン:注目されまくり……魔術師と髭とどでかい棺桶だもんな。
へぇ、確かに喧嘩っ早そうなのしかいねえな。
ホッグ:マスター、ちょっと換金したいんで奥に通してもらいやすよ。旦那、こっちでやす。
ヴァン:従業員用通路か。……客層の割に店内は綺麗だったな。内装はでたらめだったが。
ホッグ:ああ、ここのマスターは喧嘩の仲裁の達人ってんで有名なんでやすよ。
方法は腕ずくでやすが。
ローレル:あら、初めて見る顔ね。換金に来たのよね?
ヴァン:ああ。死体は棺桶の中だ。
ローレル:たまにいるから困るのよねぇ。首だけじゃなくて全身持ってきちゃう人。
街中で殺り合ったの?
ヴァン:そうじゃないんだが……首を落としたくないような奴だったんだよ。開けるぜ?
ローレル:開けてちょうだい。断っておくけど、念のために魔法で調べるわよ。
ヴァン:問題ねぇよ。……できるだけ急いでくれ。
ローレル:せっかちね。すぐ終わるから待ってて。……あら?
ホッグ:あ、久しぶりでやすね。
ローレル:おじさんのことは覚えてるわ!
バイパー・モリアの首を取ったのって、この魔術師さんだったの?
ホッグ:いえ、違いやす……。
ヴァン:ムダ話しないで調べてくれないか? 連れを待たせてるんだ。
ホッグ:どうしたんでやすか?
ヴァン:(小声)モニカ婆さんから伝信を受け取った。視線を感じたらしい。
婆さんは気づかないふりをしたがレンダルが警戒を見せちまった。
早いとこ戻りたいんだ。
ローレル:慌てなくても呪文がやってるわ。カリカリしないで、美男子さん。
……ヘイン、山賊の首領、金貨百枚。本物に間違いないみたいね。
ヴァン:死体の偽装を看破するような呪文を無詠唱? 手抜きもいいとこじゃねえか?
ローレル:だっていちいち詠唱めんどくさいじゃない。
はい、この袋ひとつで金貨百枚……って、調べないの?
枚数違っても後から苦情は……
ヴァン:調べた。無詠唱で。じゃあな。
ホッグ:急ぎなんで失礼しやす。
ローレル:面白い子。また来てね。……ヴァンって言うんだ。ふうん。
*店の外*
ホッグ:まっくらでやすね。明かりをつけやしょう。
ヴァン:時間が惜しいから呪文を使う。<暗き道を灯せ──灯火>
ホッグ:ぶ!! ま、眩しいでやすよ!
ヴァン:……ちっ……あー、帰り道どっちだっけ?
*ローレルの仕事部屋*
ローレル:ええ、そうね。一応マークはしておくけど、まさかあんたとも因縁があるとはね。
どうするの? 殺す? ……ううん、ちょっともったいないかなって思っただけ。
……へぇ、女がいるの。
でも振り向かせる自信くらい……何よ、聞いてくれたっていいじゃない。
じゃあ、そのうちレンダルの首も届くのね? 分かった。
ちゃんと用意しとくわ。賞金四十枚。少ない? しょうがないじゃない。
連中、あまり派手に動かなかったから懸かってる賞金も少ないのよ。
割りに合わないでしょうけど、あんたからすれば私怨でしょ?
自分で殺らないの? まあ、無理もないか。化け物よ、あんな連中。
あたしの名前、間違っても漏らさないでね。じゃあね。
*再び、トンプソンズ・スイート*
ホッグ:旦那! ヴァンの旦那! 着きやしたぜ!
ヴァン:あー……ああ、あんがとさん……頭がぼーっとする。眠い……。
ホッグ:もうでやすか? まだ日が暮れてからそんなに経ってやせんぜ?
ボーイ/ローレル役:お客様方はおふたりですか?
お部屋は別々にいたしますか?
ヴァン:ええと、先に仲間と子どもたちが来てるはずなんだが……。
ボーイ/ローレル役:ああ、皆様ご入浴中です。
当ホテルでは地下に大浴場を設けておりまして。
ヴァン:全員じゃないが、しばらく厄介になる。
よろしくな。金を持ってきたから、手続きをしたいんだが……
ルーシャ:ヴァン! 遅かったじゃない。
パティ:ふぁ~、のぼせちゃった~……。
ホッグ:旦那はなんだかフラフラでやして、
あちこちぶつかりそうなのを手を引いて連れてきたんで遅くなりやした。
すいやせん。
ルーシャ:ああ、そうだったの。ところで、分け前ちょうだい!
ヴァン:今すぐか?
ルーシャ:銀貨二枚でいいから、早く!
パティ:えへへ~、お風呂屋さんでは絶対に買わないと駄目なもの、なーんだ?
ホッグ:……温泉まんじゅうとか?
パティ:違いまーす。
ヴァン:ほい。
ルーシャ:パティ、行くよ~!
パティ:うん!
ホッグ:……降りてっちゃいやしたね。何を買うんでやしょう?
モニカ:リスナーに考えてもらえばよかろ。
レンダル:遅かったな。
ヴァン:ふたりも温まったみたいだな。ところで、動きはあったか?
レンダル:まだだ。夜に仕掛けるつもりかも知れんな。
モニカ:気配は遠ざかったきりじゃ。宿を確かめたので日を改めるのやもしれぬのう。
レンダル:まったく……魔術ってのは便利なもんだな。
シュタイン:よく言うよね。魔術師の天敵みたいな剣士様の癖にさ。
ヴァン:……子どもたちが寝ついたら一部屋に集まってくれ。
オレたちについて、あんまり気が進まない話だが、しておきたい。
ホッグ:気が進まないんでやすか?
モニカ:ホッグはたぶん、聞かんでも平気じゃろ。
シュタイン:内緒話って僕、大好き!
*数時間後、宿の一室*
レンダル:おい、ヴァン、大丈夫なのか? 病気か何かか?
ルーシャ:単純に眠いのよ。
だってあたしたち、夕方に飛んでお昼過ぎに着いちゃったんだもの。
シュタイン:何それ? なぞなぞ?
ルーシャ:ヴァン、あたし話そうか? あんた寝なさいよ。限界でしょ、どう見ても。
ヴァン:そうだな……台詞数の関係もあるし、
悪りぃが寝るかはともかく横になっとくわ……。
シュタイン:分かった。ふたりは時間を超えてきたんだ!
でも着いた時間が出発した時間より早かったから、長く起きてて眠い!
どうこれ?
ルーシャ:惜しい。あたしたちね、別の世界から来たの。
モニカ:別の世界じゃと?
レンダル:世界に別も何もなかろう?
パティ:別の世界って、天国とか? あ、あたし喋らない方がいい?
ルーシャ:ううん、どんどん質問していいからね。
天国とか、そんなおおげさな違いじゃなくてね、微妙な違い。
国の名前とか、地形とか、住んでる人が違うとか。
言葉はなぜかどこも通じるんだけどね。
たぶん確定世界だからだってヴァンは言ってるけど。
パティ:かくていせかい?
ヴァン:確定世界についてはひとまず置いとこうぜ。
ややこしい話がますますややこしくなるからな。
モニカ:ややこしい話が始まるわけじゃな?
シュタイン:話の腰を折って悪いけど、
僕としちゃヴァンが固定化してる全知の呪文についてから聞きたいな。
モニカ:なんと! 全知を固定化じゃと!?
レンダル:どんどん分からなくなっていくな。固定化とは何だ?
シュタイン:ああ、ごめん。
固定化ってのはね、呪文を詠唱もマナの減少もなしに
無制限に使えるようにする儀式のこと。
パティ:えっと、それってすごいの? モニカ?
モニカ:並の呪文ならすごいとは言わぬが、全知は超高難度呪文じゃ。
この若さでそれを使えることからして驚きに値するんじゃが固定化までとは……。
準備にかかる手間を考えると……正気とは思えぬ。
シュタイン:だよね。どう考えても何年がかりになるもんね。ヴァンは何歳?
ルーシャ:十七。で、あたしは十五。大人っぽいってよく言われるけどね。
パティ:ねえ、どうして準備にそんな時間がかかるの?
シュタイン:呪文ってのはマナを消費して使う。これが魔法の常識。
で、固定化はこの常識をひっくり返す。
そのための準備を儀式でしておくんだけど、何が必要だと思う?
パティ:えーと、いっぱいのマナ?
シュタイン:あっさり正解。
普通に考えても全知ほどの呪文の固定化に必要なマナを集めるには
五年以上かかる。
ルーシャ:月の光からマナを効率よく集める方法があるらしくて……
モニカ:月光は豊富なマナの源じゃからの。
じゃがそのための薬を使ったとて……どれだけ使うかにもよるが……
あれは高価じゃから……。
ルーシャ:この頭でっかちは、その薬を簡単に増量する方法を発明したのよ。
屋敷の屋根に馬鹿でかいガラス容器をいくつも置いて、
だいたい半年で十分なマナを集めたんだって。
パティ:すごい!!
ヴァン:頭でっかちで悪かったな!
なんか知らんがその研究がやたら評判になったらしくてな。
王宮をはじめ、いろんなところから招聘の手紙が届いたらしい。
すぐに旅に出てほとんど不在だったから最初の六通くらいしか
自分の手じゃ開けてないんだけどな。
しかし、へへっ、王室からの秘密集会招待状に偽装した、
十三大呪を仕込んだ手紙の話を聞いたときは笑ったなあ。
レンダル:すまんが、別の世界がどうのという話との関係が見えてこないのだが。
ルーシャ:ああ、その少し後にね……あたしたちは最初の「世界渡り」をしたの。
ちょっと長くなるけどちゃんと聞いてね……。
続く