月と才能と賞金稼ぎ(♂4 ♀3 指定被り2)
※ここにある台本は一応残してはいるものの修正とかをしていません。
↓に加筆修正などの調整を加えた台本を置いており、続きもそちらで展開していきます。
http://cobaltvd.web.fc2.com/scriptlist.html
双極シリーズ以外の単発台本などもございますのでお使いいただけると嬉しく思います。
(2013/04/13)
「月と才能と賞金稼ぎ」──声劇双極魔術第三話
430台本。25~30分。
・登場人物
台詞数(※被りと合計した数)
↓
38 ヴァン………♂17歳。本作の主人公。魔術師。
生真面目だがときどき口調が乱暴に。
理性と論理で動くタイプ。
31 ルーシャ……♀15歳。業師で奇術師。
ヴァンの相棒。
業師とは盗賊に似た多技能者。
22 シュタイン…♂20代。謎の魔術師。戦力外。
解説者かおまいは。
36 パティ………♀12歳。奴隷として売られそうだった少女。
22 ホッグ………♂30代。元山賊雑魚。髭面小太りの小男。
41 レンダル……♂40代。元山賊サブリーダー。
凄腕の元傭兵。実は貴族の六男で堅い。
24 モニカ………♀13歳/100歳?。ロリ声で婆さん口調。
老魔女の幽霊が少女に取り憑いている。
モブ(被り指定)
スージー/パティ役……♀20代。賞金稼ぎ。ゼノンの恋人。
ゼノン/ホッグ役………♂20代。賞金稼ぎ。スージーの恋人。
・役表
「月と才能と賞金稼ぎ」──声劇双極魔術第三話
http://ncode.syosetu.com/n9941w/5/
ヴァン♂………………
ルーシャ♀……………
シュタイン♂…………
パティ/スージー♀…
レンダル♂……………
ホッグ/ゼノン♂……
モニカ♀………………
HPの方に、修正バージョンをUPしました。
続きもそちらに掲載していきますので、ご覧ください。
http://cobaltvd.web.fc2.com/scriptlist.html
*荒れた山道*
モニカ:驚いたのう。あの山賊頭を
倒しよった。まだ若いが尋常でない
魔力の持ち主じゃ。
その上、無詠唱で
心臓凍結のような高等
呪文を……。少し話をしておくかのう。
ヴァン:おいルーシャ、何をそんなに怒ってんだよ?
ルーシャ:怒らないでいられる?
あたしのことなんてすっかり忘れて分の
悪い賭けをしたんでしょ?
ねえ渋い方のお兄さん、こいつ血だるまにするの
手伝ってくれない? 殺してもいいから。
ヴァン:やめてくれ! ちゃんと勝算はあったんだよ。
九割方な。この小石のおかげさ。
ルーシャ:あたしに盗ませた丸い白い石?
それが何だってのよ?
ヴァン:レンダルも聞きたいだろうし、持ち主を
連れてきてくれよ。
ルーシャ:ああ、縄なら来るついでに切ってきたから、
呼べば来るんじゃない?
ヴァン:……全知によると、名前はパティって
言うらしいな。おーい、パティ!
ちょっと来てくれ!
レンダル:……ためらっているな。オレが連れてこよう。
ヴァン:え? いや、あんたじゃ怖がるだけだろ?
レンダル:少々事情があってな。オレが世話を焼いていた
から懐かれているんだ。
妙な真似はしないから安心しろ。
シュタイン:……いいの、あいつ信用して?
ヴァン:一応何かあったらすぐ飛べるようにしておくが、
平気じゃないか?
レンダルって奴は変な小細工するような男には
見えないしな。
シュタイン:言われてみれば、ヴァンとあいつが戦ってたと
きにあの子、レンダルの名前を叫んでたね。
ヴァン:あの距離でよく聞こえたな。読音か?
シュタイン:まあね。
モニカ:誰かと思ったらシュタインではないか。久しいのう。
シュタイン:へ? ……あ! モニカ婆さん?
ルーシャ:婆さんって……どう見たってその子、
あたしより年下でしょ?
モニカ:訳あっての、この肉体を借りておる。
儂自身は百を超える齢じゃ。
ルーシャ:み、妙なのがまた増えた……。
ヴァン:もしかして、幽体離脱している
間に肉体が死んだのか?
モニカ:左様。そしてそれを知ったとき、
儂は死を受け入れられなんだ。
せねばならぬことがあったからのう。
それ以来、生者でも死者でも亡者でも
ない宙ぶらりんな存在となったんじゃ。
それはそうと、そろったのう。
レンダル:連れてきたぞ。
パティ:あの、あたしの石がどうしたの?
ヴァン:まずはお前さんに返すことからだ。
これのおかげで何とか勝てたんだ。
ありがとさん。
パティ:これ、ただの石でしょ?
モニカ:む? それは小妖精月では
ないか! ただの石などとんでもないぞえ!
ダイアモンドにも勝る価値がある魔宝石じゃ。
シュタイン:魔術師たちが見たら勝手に競りを始め
かねないような希少品だよ。
パティ:……そんなわけないよ。あたしを売ったお金なんか
で買えるわけないもん。
モニカ:売った者がそれの真の価値を知らなかったのじゃろ。
それが証拠に首飾りにするため穴など開けておる。
もったいないことじゃ。
ヴァン:魔術師が三人もいるとオレは説明する必要ないな。
楽でいいや。
シュタイン:君が喋らなくてどうするんだ。
僕たちよりよく知っているだろう?
あれについて。
ヴァン:まあなあ。使った感じ、だいぶ効果が
落ちちまってる。穴がなかったらなあ。
今さら言ってもしょうがないが。
ルーシャ:ねえ、効果って何なわけ?
モニカ:魔法の強制力や威力を
激増させるのじゃよ。
攻撃的な呪文をかけられると、生物、
亡者、魔法生物などは反発しようと
するんじゃ。
強制力が強いほど反発されにくくなる。
シュタイン:反発力は精神的な強さと生来の
素質、それに戦闘経験や戦闘能力の高さで
変わってくる。
平たく言うと強い奴ほど反発力も強い。
あの山賊リーダーの反発力はでたらめな強さ
だったから、ヴァンが普通に呪文を使ってもまず
反発されてただろうね。
モニカ:反発されると呪文は効果を減じたり、
まったく効果を現さなかったりするのじゃ。
じゃが、月の強制力上昇効果
でその反発を打ち破った結果があれじゃ。
恐ろしい代物じゃて。
パティ:あのね、あたし、これ捨てたの。
森に投げたんだけど、今日いつのまにかあたしの
とこに戻ってきたの。なんでだろ?
ヴァン:小妖精月は気に入った者を
守ったりするらしい。
呪文を使ったって記録もあった。パティを気に
入ったのさ、この月はな。
パティ:そっかぁ……。ちょっと怖かったけど、
守ってくれてたんだね。ありがと。
ルーシャ:ねえ、紐通してあげようか?
何色がいい?
パティ:あるの? 灰色もある?
ルーシャ:あるよ。ちょっと貸してね。はい、おしまい。
パティ:え、これ赤いよ?
ルーシャ:じゃあこれを手の中に入れて、
灰色って念じながら開いてみて。
パティ:……灰色……灰色……えええ!?
灰色になってる……あ、ありがと。
ルーシャ:どういたしまして!
モニカ:なるほどのう。お主は奇術師か。
ヴァン:魔術師だそうだ。さて、少し道から外れて火でも
起こすか。早いが夕飯にしようぜ。
*山道近くの荒野*
ホッグ:姐さん、終わりやした!
ヴァン:なあ、こいつ誰?
ルーシャ:ホッグ。あたしの子分。
ホッグ:へい。賭けに負けやして……おいらは
姐さんの子分でやす。
ヴァン:何やってんだよ、オレが命がけで戦ってたときに
……。
ルーシャ:あたしだって命を賭けたんだから文句
言わない!
シュタイン:賭ける意味がずれてるし……。
あ! ルーシャが怒ってたのってそのせいか!
ホッグ:あああの、賭けを提案したのはおいらでやす!
条件もおいらが決めやした!
モニカ:うむ、あっぱれじゃ。己のすべてを
賭けた勝負。
そこにあるのは無限の信頼。見事見事。
ルーシャ:山賊の財布、ぜんぶ集め終わったのね。
いくらになったの?
ホッグ:へい! 合わせて銀貨六百枚と少しになりやした!
ヴァン:思いのほか少ないな。誰だよ、金を持ってる
はずだなんて言ったのは?
シュタイン:それなりに、としか言わなかったと
思ったけどね。
ヴァン:まあ、ないよりマシか……。
レンダル:なんだ、お前たちは路銀をほとんど
持たずに旅をしていたのか?
ルーシャ:ううん、むしろ一文無し。
ホッグ:一文無しでやすか!?
レンダル:……金を持たずに旅をできる神経が分からん。
シュタイン:どおりで稼ぐのに必死なわけだよね。
ルーシャ:ま、訳ありなんだけどね~。
で、ホッグ、どんな食べ物ならあるの?
ホッグ:へい。この大袋の中身でやす!
レンダル:美味いものはないぞ。そんな優雅な
もんじゃないんだ、山賊ってのは。
ルーシャ:……うわー。こんなの絶対食べないから。
ヴァン、ちょっと買い出し行ってきてよ。
ヴァン:言うと思ったぜ。けどよ、この人数に
食わせるんだろ? 荷物持ちがいるな。
ルーシャ:ホッグがやってくれるって。
ホッグ:も、持たせていただきやす!
シュタイン:僕も行くよ。
自前で瞬間転移できるしね。
ヴァン:じゃ、適当に見繕って買ってくるぜ。シュタイン、最寄りの街はニーズだっけか?
詳しいなら先に飛んでくれよ。その後を追うから。
シュタイン:オッケー。
<疾き脚より、強き翼より、
遠きをつなぐ光の道よ──瞬間転移>
パティ:行っちゃった……。
*同じく、荒野*
モニカM:気になるのう……なぜ月はこの娘を気に入ったのじゃ?
少し、調べてみるかのう。
パティ:モニカ、何してるの? それ、トランプ?
モニカ:トランプの元になったカードじゃよ。
占いをしようと思ってのう。
そうじゃ、パティ、占ってほしいことはないかえ?
パティ:すごい! やってやって! 恋占いして欲しい!
モニカM:やはり……カードを出す前に気づいておった。
何かあるのう。マナに関係あることと見たが……。
レンダル:占いか? そういえば牢でよくやっていたな。
モニカ:ヘインが死ぬ日がいつか占っておったんじゃよ。
レンダル:……頭の名を誰から聞いた?
オレたちは頭としか呼んでいなかったはずだが……。
モニカ:もちろん、カードに聞いたのじゃ。
レンダルM:こいつ……本物の魔女か……。
しかも一週間以上もそれを隠し続けたとは……。
ゼノン/ホッグ役:お、あったあった。ヘインの死体。
間違いねーぜ。
スージー/パティ役:で、こっちがレンダルでしょ?
賞金二重取りだね!
ルーシャ:何のつもり? 賞金?
あたしたちの獲物なんだけど、どっちも。
ゼノン/ホッグ役:お、けっこういい女じゃん。
スージー/パティ役:ゼノン~?
ゼノン/ホッグ役:おいおい、名前呼ぶなって。冗談だよ。
お前の方が百万倍可愛いぜベイビー。
ルーシャ:うわ……うざ。
レンダル:賞金稼ぎか。タイミングがいいじゃないか。
ゼノン/ホッグ役:すごい情報屋と組んでるからな!
今行けばちょうどいい頃合いに
着けるって言われたんだよ。
ルーシャ:……聞き出す必要がありそうね。
レンダル:悪いがそっちの都合は知らん。オレは男を殺す。
パティ:レンダル、剣持ってきたよ!
レンダル:ありがとよ。さて、始めようか。
ゼノン/ホッグ役:おおっと、このガキがどうなっても
いいのか?
ん~? 切れちゃうぞ~?
レンダル:知らんな。
モニカ:<羽虫を焦がせ、
赤き結界──赤熱結界>
ゼノン/ホッグ役:おわっちゃぁ!?
剣が……燃えやがった……!!
モニカ:うっとうしいから少し離れておれ。
ゼノン/ホッグ役:ガキぃぃぃぃぃ!!!
レンダル:フン! ……隙だらけだ。しかも胸当てもなしか。
心臓くらい守っておけ。
ゼノン/ホッグ役:早えぇ……ガハッ!!
スージー/パティ役:ゼノン!!
ルーシャ:あんたも隙だらけ。両手もらい。
スージー/パティ役:うあぁぁぁ! 手の腱を……!
ルーシャ:死にたくなかったら協力してね。
スージー/パティ役:うう……。
レンダル:これからの質問に正直に答えれば命までは取らん。
お前たちは賞金稼ぎだな?
スージー/パティ役:そうよ。横の連帯なんて
持たない、ふたりだけの賞金稼ぎ……。
レンダル:すごい情報屋というのは何者だ?
スージー/パティ役:あたしたちにも分からない。
痩せてて背が小さくていつも顔を布やマスクで
隠してて子どもみたいな高い声で、自分のことは
Nと呼べって言うの。
ルーシャ:連絡方法は?
スージー/パティ役:接触はいつも向こうからの一方通行。
でも情報は当てになるから文句は言えない。
今回だけはいくら文句言っても言い足りないけど
ね……。
ルーシャ:高いの? 情報料。
スージー/パティ役:ふっかけられたり、ただでいいって
言われたり、いろいろ。今回はただだった。
ルーシャ:そいつの他の顧客を知ってる?
スージー/パティ役:知るわけないでしょ。
レンダル:こんなところか。
ルーシャ:ヴァンが戻るまで一応置いとけば、
気づいたことを聞きなおしてくれるはず。
モニカM:何とこの配置は……信じがたい才能じゃ。
あの娘、魔術を教えれば歴史に名を残す
大魔女となる……。
ヴァン:帰ったぜ。……なんだ、何かあったみたいだな?
ホッグ:死体が増えてやすねえ。
ルーシャ:賞金稼ぎが山賊リーダーの首を盗もうとしたの。
男のほうはレンダルが殺しちゃった。その片割れが
こっち。
レンダル:正体不明の情報屋Nとか言うのにけしかけられた
らしいが、本当かどうかまでは知らん。
ヴァン:ふうん。まあ、あとで調べてみるからそいつ
解放してやれよ。
あ、腕の腱を切ってあるのか。
<欠けたるを補い、
健全な身体に戻せ
──機能治療>
スージー/パティ役:……治った……どういうつもり?
ルーシャ:深い意味はないわよきっと。ほら、さっさと
逃げたら?
スージー/パティ役:あの人を置いて帰れっていうの?
シュタイン:あの人? ああ、この死体ね。
魔術で一時的に小さくするから持ち帰って好きに
するといいよ。
<虎を猫に、鷹を雀に、
小さきものは無害なり
──小型化>
スージー/パティ役:……お礼は言わないわよ。
シュタイン:バイバイ。
*焚き火を囲んで*
ヴァン:さて、食い物も行き渡ったみたいだし、食うか。
いただきまーす。
ホッグ:いただきやす!
ルーシャ:胡椒は?
ホッグ:姐さん、あいにく品切れだったんでやすよ。
シュタイン:どうしても欲しかったら僕の手持ちを分けても
いいよ。銀貨一枚で五振り分。
ルーシャ:心が広いこと。いらない。
シュタイン:あ、そう。ちなみに子供たちにはただで
使わせてあげよう!
ルーシャ:何その差別? あんたロリコン?
シュタイン:ロリコンは作……
いや、僕は単に小さい子に優しくして、
いろんな人のポイントを稼ごうとしてるだけ。
ホッグ:姐さんを差別したからポイント
下がるんじゃねえでやすか?
シュタイン:ぐは!
ヴァン:レンダル、あんたらの親分だが、賞金が
懸かってたんだな。
名前がヘイン、金貨百枚だった。
悪いがオレたちには必要な金だ。
レンダル:好きにしな。お前は勝者だ。その権利がある。
オレにも懸かっていたろ?
オレの首も持っていけ。
ヴァン:あんたはオレに負けてない。
賞金にも気づかなかったしな。
レンダル:……オレを生かしておくのか?
どうせまたろくでもない連中を見つけて山賊に
戻るぞ?
ヴァン:戻るなよ。隣の国にでも逃げて、
小さな街あたりで剣術の先生になりゃ、
だいたい四カ月くらいで食っていけるように
なるだろ。
レンダル:オレみたいなクズが何を教えるって? 笑わせるな。
ヴァン:あんたの剣と魂は磨けばまだ光るだろ。
いや、剣は十分に磨いてたな。
レンダル:魂が光るだぁ? オレがどれだけ殺したと
思ってる? 手遅れなんだよ。
ヴァン:あんたはパティの心を支えてたんだろ?
懐き方で分かるぜ。
レンダル:……知らねえな。仮にそうだったとしても
下心の仕業だろうよ。
ヴァン:ああもう、めんどうな奴だ。パティ、なんか言って
やれよ。
パティ:え? えっと……あたし、レンダルが死ぬのは嫌。
先生になったらたぶんもてるよ?
レンダル:何だそれは……。
パティ:レンダル優しいもん。あたしレンダル好きだよ。
レンダル:……ありがとよ。
ヴァン:生きてみる気になったかい?
シュタインM:………………間を使うなあ。
渋いから杯を煽って酒を
呑むだけでも様になる。
くそ、イケメン爆ぜろ!
レンダル:……この歳でやり直しか。まあ、どうせオレは
ここで死んだんだ。
あの魔法は痛かったぜ。どこにも逃げ道がなかった。
ヴァン:ああでもしなきゃ死んでたのはオレだ。つーか、
傷は全部治したろ?
それにあんた、自分は死なないとか
言ってなかったか?
レンダル:傷なら治ってる。ありがとよ。そうさなぁ……。
モニカM:……色気のあるダンディが酒瓶を呷る
……ええのう。
hshsしてまうわい。
レンダル:死ぬ気がなかったのは、頭がいたからだ。
戦場でオレは何度も負けたが、必ず血の一滴くらい
は流させていたし、
殺されないうちに逃げを打っていた。
ヴァン:傭兵だったな?
レンダル:まだ尻が青かった頃のことだがな。
で、その青さがそろそろ抜けたって頃に、
戦が終わった。
オレは食いあぶれて追い剥ぎを始めて、
ひと月しないうちに頭と闘る
はめになった。
ヴァン:で、ぼろ負けしたわけだ。
パティM:いつもみたいなレンダルの昔話……不思議。
レンダルはもう山賊じゃないんだよね……。
レンダル:ボロ負けってのも生ぬるい。頭は
オレの攻撃をぜんぶ避けた。
剣はだらりとさげたまま。一度も打ち合わせること
さえできなかった。
そして、オレが姿勢を変える都度、
一番狙われたくない隙を瞬時に見つめてた。
頭が剣を使ってたら百回は殺されてたな。
ヴァン:ヘインってのは何者なんだ?
竜族の血が混じってるとか言わないだろうな?
あ、もしかしてまだ生きてたりして……。
モニカ:たわけめ。しっかり死んでおるわ。
ホッグ:死んだふりなんて(もぐもぐ)せこい
真似は(もぐもぐ)絶対しない人でやすよ。
ヴァン:なんであんなに手加減してたんだろうな?
モニカ:……気づいておったか?
ヴァン:気づくも何もないだろ。
オレが相談、準備、呪文使用するまでわざわざ
待ったんだぜ?
レンダル:死んでもいいって思ったんじゃねえか?
つまらん、てのが口癖だった。
思いきり楽しめるなら死んでもいいって言った
こともあったしな。
頭に代わって礼を言っとくか。
ありがとよ。
ヴァン:あー、ああ……仲間を殺して礼を言われたのは
初めてだ……。
まあいいや。なあ、子供たちはどうやって
集めたんだ?
レンダル:パティだけは親に金持たせて買った。
残りは攫った。魔術で送り届けるつもりか?
ヴァン:まさか。駅馬車に金を積んで届けさせる。
レンダル:パティはどうする?
親は同じことを繰り返しかねんぞ?
ヴァン:それだよなぁ。口減らしだろ?
どうしたもんか……。
レンダル:……パティ、オレの養女になる気はあるか?
パティ:養女って、レンダルがお父さんになるんでしょ?
……なった方がいい?
レンダル:なりたくないって言い方だな。
パティ:うん……。
レンダル:分かった。安全ってわけでもないしな。
モニカ:ヴァンよ、パティについて少し気になったんで
占ってみたのじゃがの。
パティは魔術師として大成する器じゃ。
運命じゃのう、お主は大魔女を
魔術に導く役割を担うことになったのじゃ。
ヴァン:は!? ちょっと待て。全知で
確かめてみる。……うわ、マジか……。
レンダル:どうした?
パティ:あたしがまじゅつし?
ヴァン:マナを扱う才能が飛び抜けてるんだ。
同じ呪文を使っても普通の魔術師の四分の一くらい
しかマナを使わない。
魔法に使うスタミナが四倍あるって言ったら分かり
やすいかな?
パティ:あたし、すごい魔女になれるの?
シュタイン:保証付きだね。魔女になりたい?
パティ:なる! すごい魔女になって、レンダルと
結婚するの!
シュタイン:は?
モニカ:ぬ?
ヴァン:へ?
レンダル:ごふっ!
パティ:だってさ、すごい戦士のレンダルとすごい魔女に
なったあたしが一緒になったら、
それってすごくすごいことでしょ?
ヴァン:た、確かに。普通にゆうしゃとか生まれそうだ。
レンダル:待て! かなり待て! どうしてそうなる
ふたりとも!?
シュタインM:イケメン+リア充……死ね。死んでしまえ!
心臓凍結! ……はぁ。
パティ:レンダルは嫌?
モニカ:レンダルよ。おなごを泣かすでないぞ?
レンダル:う……嫌では……むう……。
パティ:決まりだね!
ホッグ:ふー。ごちそうさまでやした。
ヴァン:ぷ、ぶははは! 確かにごちそうさまだ!
さて、支度したら街に向かうか!
ホッグ:へ? おいら何か変なこと言いやしたか?
シュタイン:最高においしいとこを持ってった感じかな。
続く