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2話 出会い

戦争兵器として産まれ失敗作として捨てられたヒヨコは、とある少女に助けられた。

「コード00! 負荷実験を開始する!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 ちぎれる……身体が……目の前が真っ赤になっていく。


「獣化しろ、化け物!!」

「ガキャアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 身体が言う事を聞かない……!全身がバラバラになって、熱く破裂する感覚……に…心が拒否するように重くのしかかる。




「……っ!」

 気がつくと影が顔を覗かせている。


「……! 良かったあ。うなされて眠ってたんだよ?」

 そう影は自分の頭を触りながら抱きしめる。自分の身体は震え影を怯えるような目で見つめていた。


「……」

「大丈夫。何もしないわ。私はマリ、貴方は?」


「…………ピィ?」

 何か伝えてくる。でも、その意味が分からない。脳内に何かを入れられた時に少しだけ意思を読まれたことがあったが、伝え方も分からない。


「じゃあ貴方はピィちゃんね。」

「……?」


「もしかしてピィちゃん、私の言葉が分からないの?」

「?」


「多分、そうなんだね。これ作ったから食べてちょうだい。」

 言い終わると何かを口に近づけた。鼻が曲がるような変な匂い、何をさせる気なんだろうか。


「食べ方も分からないのかな。ちょっとごめんね」

 そう言うと、自分の顔へと手を伸ばし口をこじ開け何かを入れる。


 変に刺激がある。また、身体が痛むやつだろうか。

「……ぴぃ」

「偉いね。明日は身体を洗って、言葉も少し教えてあげる。今日はまだゆっくり寝た方がいいよ」

 影は満足したように自分の傍で目をつぶった。何をしているんだろう、何が狙いなんだろう。


「寝方も分からない?そっか」

 そう目元を触られると前が見えなくなっていた。でも、痛みを感じない。ただ暗い世界になっただけだ。


 さっきまで気を失っていた。もしかして、それが寝るということなのか。いつもは痛みで気を失っていたが、今は痛くなく眠れている。


「大丈夫、私が一緒にいるから」

「ぴぃ?」

 何を言っているかは分からない。でも、この影は何もしてこない。頭を撫でてくるだけだ。

 しばらくすると、小さな音のリズムで聞こえてくる。……何かを口に入れられてから警戒していたが痛みはない。気にしている間に頭が真っ白になっていく。


 ……身体の音が少し静かになった気がした。



「おはようピィちゃん」

「ぴぃ……」

 意識がない間、影は何も危害を加えなかった。前と同じように、私の口に何かを入れる。

「美味しい?」

「……」

「そっか」

 この影は頭を撫でるのが好きだ。頭に何かあるのだろうか。


「じゃあ体力も回復しただろうし、お風呂に入ろうか」

 そういうと変な形に液体が入ったものを持ってきた。何か白い物が揺らいでいる。これまでの経験から嫌な予感がする。


「ピッ……ひぃ!」

「はい。逃げない」

 逃げようとした身体を捕まれ、暖かい液体に付けこんだ。


「汚れてるから洗わないとね」

「ぴぃ!?」

「大人しくして。大丈夫だから。」


 怖い。この浸る感覚が。何かされると感じた途端に身体が勝手に動いた。手のひらから飛び出し、蹴り、飛び越え、光があるもとへ飛び降りた。


「……っ!」

「え、ちょちょっと待って」

 影は手を伸ばした。

 もっと速く走るには……身体の血液を素早く動かし身体を突き破るようにすると、自分の視線が高くなった。


「やっぱり使い魔だったんだ。でも、子どもだし髪の毛が……ううん、待っててば!」

「はぁはあ」

 でも、身体が上手く動かない。足が止まり絡まるように身体が倒れた。


「……っ」

「大丈夫、ピィちゃん?」

 影が来る。もうあんな目に会いたくない、もう苦しみたくない。


 ――!


 モフッ

「ちゃんと拭かなきゃ風邪ひくでしょ?」

「……?」

 身体を暖かいものが包む。


「帰ろ。ちゃんと言葉も教えてあげる」

 影は自分の手を掴むと、また同じ場所に戻ってきた。何かを取り出し私に見せてくる。


「じゃあ身体も綺麗になったし、お勉強しましょ。私の世界の言語だけどね」

「……?」

 この影の目的が分からない。なぜ痛みつけない。相手の意思に従わなかったのに。動けと叫んでいた身体が止まり、ただ影の意思を探ることにした。ここは、影は何もしてこないのか?


「わたし の なまえ は まり」

「……まり」

「そう! 私の名前!」


「わたし……なまえ?まり?」

「おしい! ちがーう!」

 何度も声に出すと、言葉の意味がほんの少しわかった。しばらくして血が落ち着くと、身体が勝手に戻る。また、目をつぶる。この意識がなくなるまで。



「よく眠ってる。……でも、この子。噂の厄災だよね。ううん。この子に罪はない。もう巡り会った子を失うわけにはいかないの。ただの自己満になってでも、あなたを幸せにするから。」

「ぴぃ」

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