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4話 聖騎士


 ロボス砦は周囲を厚く堅い壁で覆われた城ともいえるようなヴァニル国の砦の中でもとりわけ防御に優れた砦である。

 エーシル国との国境に近い場所に位置しており、国の中心部よりも遠く離れた場所ではあるが、戦略上重要な場所であった。


『—ザッザザ…こちら指令室、各部隊準備はいいか』


『地点A準備完了です』


『地点Bばっちりだぜ』


『地点C、こちらも大丈夫です』


『こちらボロ・ラヴァット、いつでもいけます』


 ボロは飛行兵器を飛ばすための滑走路から遠くにそびえたつロボス砦を見下ろす。


 砦の周辺にはエーシルの滞空兵器のみが浮遊しており、その後ろには少数部隊が待ち受けていた。

 例のパラディンと思わしき者はおろか他の兵士たちも砦の外には見られない。


『これより第4次制圧作戦、ロボス砦の奪還を開始する。これが終われば楽しく打ち上げだ、皆の健闘を祈る!!』


 その通信を合図として三方向からの進軍と攻撃が始まった。


 ---------------------


 数時間前、ロボス砦奪還のための準備が始まった。


 ロボス砦の外壁は厚く兵装をもってしても破壊のしづらいものであり、よって外壁から中に入るための3つの門から突入することになった。

 3つの門それぞれの方向からの正面突破であるため、戦闘は避けれない。そのため均等な戦力の分担を求められる。


 ロボス砦正面から攻めるA部隊にはアメリア・レイン、

 右方面から攻めるB部隊にバスター・モーガン、

 左方向から攻めるC部隊にはモカ・グレイスが任命された。


 今はムラキを中心とした整備班は装備の点検や通信網の確認、戦闘部隊はそれぞれの動きの打ち合わせ、部隊によっては訓練をしている。

 そんな中、ボロに伝えられた命令は一つ、


「何もするな、座って準備でも眺めていろ。お前は動くな。」

 であった。


 一人だけ仲間から外されたようで不服な顔をして椅子に座って忙しそうにしている整備班を眺めていると、何もするなと言った本人であるウィルドマンが隣に座った。


「…ボロ中尉、仕事ないのか?」


「・・・。」


「言いづらいんだけど、今の状況でのんびりするのはよくないと思うよ?」


「何もするなって言ったのだれでしたっけぇ?」


「誰だろうねぇー?」


「蹴り飛ばしますよ…ほんとに、」


 はっはー とウィルドマンは満足げに笑った。


「ウィルドマン、今回の作戦で俺を使う気はないんだろう?」


「奴らの狙いはお前だ、それに相手はパラディンだ。できるだけお前の力は温存するべきだ。たしかにお前を使えば作戦の難易度は下がるだろう、お前を使わないことで犠牲は出るかもしれない。だがな、俺はこの兵装機動隊を他の奴らからこれ以上、ただの第一世代の下位互換だと言われるのは我慢ならん。」


「あんたも俺をそういう目で見るのか?」


 苦笑しながら聞くとウィルドマンはこちらを見ることなく言葉を返す。


「あの馬鹿と違って俺はお前の力を初めて見たとき確かに戦慄したよ、でもなお前を兵器だとは思っていないよ。ただ俺はこの隊をお前たちよりも強くしたい、それだけだ。」


「では今回の俺は何をすれば?」


「この基地の上にある滑走路で待機だ。」


「・・・飛べと?」


「パラディン、もしくはそれぞれの部隊の緊急なことが起こればそこに飛んでくれ。

 お前の脚ならあの壁も超えれるだろ?」


 悪い顔をしてウィルドマンはボロを見る。相変わらず無茶なことをいう男だ。

 整備班の方を見ると一通りの点検が終わったのか別の作業に移っていた。


 ----------------------


 戦闘はすぐに始まった。敵の滞空兵器の攻撃をかわしながら門を目指して進んでいく。

 砦の外にいた敵兵は少数とはいえそう簡単に倒せるものではない、左右どちらからも銃声が聞こえる。

 敵を退けながら門へとたどり着く。

『こちらアメリア砦に到着、内部に入ります。」

 砦は正面門から入ると広場、それ以外から入ると直接砦内に入る構造になっている。

 広場に出た瞬間周囲から銃弾の雨が降り注ぐ、


「防御壁展開!」

 それを合図に周囲に幾重もの盾が重なったようなもの形成される。

 銃弾の雨を防ぎながら。相手の配置を確認する。

 広場を囲むようになっている壁から銃を撃っているのが見えた、


 正面の砦入り口から剣を持った武装兵も出てくる。


 防御壁を展開しながら狙撃兵と近接戦闘に分けて応戦する。

 予想通り砦内に多くの敵兵が待ち伏せしていたようだ。


 敵の剣が振るわれる、腰から短剣を抜き受け止める。そのまま相手を蹴り飛ばす。

 兵装機動隊は戦闘員は全員が第二世代兵装を着用している、そのおかげで常人の倍の力を扱うことができる。普通の人間であれば蹴り飛ばすことなど容易である。


 アメリア達は次々と敵兵を倒していく、しかし砦から止まることなく兵士が出てくる。

 応戦していると背後から殺意を感じ、攻撃を受け止める。

 そこには戦場には似合わないドレスを身に着けた女が鞘に入ったままの直剣を振るっていた。


「いい反応速度だ。」


 そう言って女は剣を振りぬく、足に力を込めて耐えるが耐えきれず後ろへ飛ばされる。すぐに体制を立て直すと女はこちらを見てニヤリと笑う。他の兵士とは違う異質な空気を纏っている。


「いいね、君はこの部隊の隊長かな?」


 アメリアは力を入れて地面を蹴って斬りかかる。ボロには遠く及ばないが、通常よりも速く動くことはできる。

 女は難なくアメリアの攻撃を受け止める。


「どうでしょうか、そう言うあなたはパラディンというやつなのでしょうか」


 アメリアは続けて攻撃を繰り出す。


「どうだろうね」


 女はドレスをひらひらとはためかせながら攻撃を受け止め続ける。


 アメリアはもう一本短剣を取り出し、攻撃を受け止めたときに隙のできた女の横腹に突き刺す。

 しかし服を貫通した次の時には刃は止まった。

 破れた布地の隙間から鎧のような金属が見えた。


「くそっ、」


「残念、私がただのお洒落さんだと思ったのかな?」


 アメリアの横腹に剣が直撃する、


「ぐっ、」


 アメリアの体はボールのように飛ばされ、地面を転がる。

 第一世代の兵装を使う必要のない強い部隊を作りたいとウィルドマンから話されたとき、魅力的な話だと思った。

 ムラキからボロ中尉の脚の話を聞いたとき、ショックと同時に自分たちの力不足さを知った。

 中尉の負担を減らすためにも強くなりたいと思った。


 アメリアはふらふらと立ち上がる。


「ふふふ、強い女の子は好きだよ」


 女は嬉しそうに笑いながら近づいてくる。


「君名前は?」


 その時右側の城壁から瓦礫が女に向かって飛来する。

 女が瓦礫を砕くとその後ろから一人の兵士が攻撃を繰り出す。


「バスター・モーガンだ!!俺と踊ろうぜドレスの姉さん‼」


「あいにく女の子にしか興味はないんだなぁ!!!」


 ふと体を誰かに支えられる。目をやるとモカ・グレイスが立っていた。


「アメリアさん砦内部の敵は制圧しました。ほとんどモーガンさんたちが…。他に強い敵は発見できていません。C部隊の人たちには負傷兵の救助に当たってもらっています。あのドレスの人がパラディンで間違いないと思います」


 モーガンは女と攻撃を打ち合っている。


「急いで退避命令を被害が少ない今のうちに。あとはボロさんに頼みましょう」


 モーガンが飛ばされてくる。


「アメリア気持ちはわかるが指揮官として仕事をしろ、あいつは俺が時間を稼ぐ」


『全隊員に通達、パラディンと接触。現在モーガン隊員が交戦中!』


 隊員たちは敵兵を退けながら退避を始める。

 だが隊員の動きはすぐに止まった。

 門外から多数の敵兵が逃げ場をふさぐように立ちふさがる。


「最初から門の外に隠れていたんだよ、君たちを逃がさないためにね」


 女はにっこりと笑い鞘から剣を抜いた。


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