表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

伊藤の5月15日

佐藤くんはいいやつだ。いや、いいやつというと性格がいいと思われるので、裏表がなく付き合いやすいと言っておく。


「お前、なんかスポーツやってた?サッカーだったりしない?」とフットサルサークルに誘われた。会社公認のサークルで、飲み会などの補助が出る1つの福利厚生だ。伊藤はサッカーを中学から始めたが、強豪校ではなかったので大きな記録を残すことはなかった。ただ体を動かしたい気持ちから二つ返事で答えた。


毎週水曜日が定時退社の日で、その日にコートを借りて練習することが多い。人によってうまい下手はあるけれど、気楽に運動できるのはありがたい。


終わった後はみんなで夕食を食べに行ったり、飲みに行ったりすることが多い。年齢は20代~30代でざっくばらんに話をしながら終電近くまで過ごす。


初めて練習に参加した日、佐藤はすでに他のメンバーと打ち解けていた。同じ大学の先輩、学部卒で先に入社した後輩もいるようだった。誰が誰なのかわからず少し緊張する中、佐藤はメンバーの紹介をしてくれた。


そして別の日に改めて新人歓迎会と称して飲み会が開催された。


「伊藤くん、法務部?あの隅っこのボロい建屋の変な人がいるところ?」

敷地のはじっこでボロい建屋はわかるけれど、変な人とは?

「田中課長とか渡辺部長とか曲者じゃない?」

伊藤はあれが曲者と呼ばれるのか、と納得した。

「確かに曲者っぽいですけど、頭の回転が速いなとは思います。」

「賢いからヤバいんだよ。」

まだ本当にヤバさに気づいてない伊藤は、これからの会社生活に一瞬不安がよぎった。どんなパワハラ行為をされるのか。


「田中課長なんかしょっちゅう飲みに行って定時後にいないことが多いし、渡辺部長もすぐに出張に行くから、書類のハンコがもらえなくて困るって。うちの課長もさ、」

そんなことかと思いつつ、今の簡単な仕事から責任の重い仕事についたら困るようになるのだろうか。


そんな職場のグチを話しながら、新入社員の話になり、自然とかわいい女子社員の話になる。

秘書課の子がかわいい、人事の子のがよかった。そんな情報交換で盛り上がる中、

「伊藤、彼女いないの?出身東京だったら遠距離とか?」

「いや、いません。」

「いい子おらんかったの?佐藤なんて会うたび彼女が欲しいって言ってるのに」

3年先輩の山本さんは佐藤と同じ大学の学部で大学院を出て入社した。知り合ってから5年以上経つらしい。


「年上がよかったら紹介するよ。」とスマホをいじった。伊藤はウンザリしながら生返事をすると、

「山本さん、こいつもしかしたら俺のこと好きかもしれないから、それくらいにしといてください」


は?と佐藤くんを見ると、わかるわかるという笑みを浮かべていた。

「俺は男の方がもてるかもしれない。でもごめんな、俺は巨乳で背の低い女の子がいいんだ。」


ぼうぜんと見てると「冗談、冗談」と店員さんに生ビールを注文していた。山本さんは「巨乳はいいよな」とFANZAで見られるおすすめのロリ巨乳AV女優を丁寧に教えてくれた。

佐藤君はスマホにしっかりメモをとり大切そうにアプリを閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ