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ロウゲツの話

 (こと)の始まりは、トコヤミの異変だったんです。


 これまでは滅多(めった)に姿を現すことなんか無かったのに、あちこちで頻繁(ひんぱん)に出没するようになっちまって……。


 まず最初に動いたのは、半妖の(おさ)でした。

「トコヤミ()けに効果があると言われている、リュウゼンコウを手に入れてくる」と言い残して、姿を消しました。


 その間にもトコヤミはやりたい放題だったもんで、とうとう妖魔の(おさ)も立ち上がりました。

 妖魔の長は、()りすぐりの妖魔達を引き連れて直々(じきじき)にトコヤミの討伐に乗り出したらしいんですが……それっきり姿を見た者は無いって話です。



 それからしばらくして、半妖の長は白濁した岩みたいなものを持って戻ってきました。


 それが、リュウゼンコウでした。


 リュウゼンコウは、とっても甘い香りがしましてね、トコヤミはその香りを嫌うんだそうです。

 身につけていれば、闇に呑み込まれることはないという話でした。


 だけどリュウゼンコウは希少なものらしくって、全ての妖魔や半妖に行き渡らせるほどの量は手に入らないって言うじゃないですか。


 そこで半妖の長がどうしたかっていうと、強い妖力を持つ者達を呼び出して、こう命じたんです。


「トコヤミを倒すには、『赤い血を流す木の樹液』と『死の青林檎(あおりんご)の果汁』、『色の無い花の花弁』と『銀色のサナギから羽化した蝶の銀粉』、それから『空を飛ぶ種の翼』、この五つが必要になる。妖魔の国に散らばるそれらを探し出し、持ち帰るように」



 選ばれた者達には、リュウゼンコウの欠片(かけら)が手渡されました。

 ええ、お察しの通り、俺もその選ばれし者の一人ってわけです。

 さっき裏口の扉を開けた時、甘い香りがしたでしょう? あれが、リュウゼンコウの香りですよ。


 とまぁ、そういうわけで、リュウゼンコウを受け取った者達は、五つの材料を手に入れるために旅立つことになりました。


 後から聞いた話では、選ばれた者達はみんな、すぐに出発したそうです。

 一刻(いっこく)猶予(ゆうよ)もないと判断したのでしょうね。


 でも俺は、具合が悪いとか何とか言い訳しながら、ぐずぐずと出発を先延(さきの)ばしにしていました。


 どうしてかって? 

 ただ単に、嫌だったんですよ。


 だってそうでしょう?

 多くの仲間は(なん)にもしないで待っていればいいだけなのに、我々は大変な思いをして材料を探しに行かなきゃならない。


 そんなの、不公平じゃないですか。

 バカバカしくて、やってられないですよ。


 手元には分け与えてもらったリュウゼンコウの欠片(かけら)があるから、トコヤミに襲われることはありません。


 自分だけは、絶対に助かる。

 だったら、面倒な材料集めは他の者達に任せておけばいい。


 そんな風に考えて、具合の悪いフリをしながら部屋でのんびりと過ごしていたある晩、この街にトコヤミがやってきて……あっという間に仲間達を呑み込んでいきました。


 リュウゼンコウのおかげで、俺だけは無事でした。

 でも、どうしてでしょうね。

 ちっとも嬉しくなかったんですよ。

 それどころか、日を追うごとに寂しくてたまらなくなっちまって……。


 そんな時に、皆様方が現れたのです。

 久しぶりに話し相手が出来たんで、心が浮き立ちましたよ。


 ところが、いざ住処(すみか)に招き入れようとしたところで

「もしや、リュウゼンコウを奪いにきたのではないか?」

 という疑念が、ふと頭をもたげましてね。


 それで、思わず襲いかかってしまったというわけなんです……。

 今思えば、なんて身のほど知らずだったんだろうって、恥ずかしくなりますよ。

 本当に、申し訳ありませんでした。

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