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【第二部完結】ざまあされ悪役王女の崖っぷちTS転生譚 ~平凡男子大学生オタク俺が、真の聖女を追放してざまあされて死ぬゲスイン王女に転生してしまった件~  作者: かべ
第二部

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女王編:18 一日目の終わり

 対城壁破壊を目的に作られた兵器。うちにも大砲はあるが、そんなものはない。兵士たちも見慣れない兵器を前に焦るだろう。


「なんて威力だ……ただの火砲じゃなくて魔術砲か?」

「そんなもの、聞いたことがない! 我らの魔術で対抗できるのか⁉」

「……まずい」子爵が低く呟く。「このままでは……リェミーの国門が破壊されてしまう」

「そんな! 従兄弟叔父殿、どうにかならないのですか」


 顔色を変えて子爵に縋るグレンロイを横目に、俺はバルコニーから身を乗り出した。陛下、危のうございますと叫ぶ声を黙殺し、穴から覗く攻城砲をよく見る。

 ……だめだ、兵器に詳しくはない俺にはよくわからない。ただの大砲ならまだしも、あんなに大きな攻城砲の攻撃に攻撃魔術で対抗できるのか?



「――城主! 上です!」



「⁉」


 焦った兵士の声に、子爵とグレンロイもあわててバルコニーに出てきて、上を見上げた。

 するとそこには――まさに塔の頭上こちらに飛来せんとする攻城砲の弾が。


「なんッ……」


(射角を調整して壁を超えるようにしたのか! この短時間で!)


「うわあああ!」

「落ちるぞ! 塔から離れろ!」


 逃げるか? 

 いや、だめだ。間に合わない。

 結界を張るか? 

 いや、無理だ。おざなりに張った障壁では、この高さから落ちてくる弾を防げない。

 

 なら。



(撃ち落とすしかない!)



 できるかできないかは関係ない。やらなきゃ死ぬ。だからやる。俺はここで死ぬわけにはいかないのだ。

 手に魔力を込めて、爆裂の魔術を構築していく。

 そしてバルコニーから身を乗り出し狙いを定め――銃の形にして構えた手から、魔術を撃ち出す!



(――【炸裂バースト】!)



 指から赤い光線が放たれ、一瞬のうちに弾を包むように覆って、また光った。

 俺はなりふり構わず叫ぶ。


「皆、頭を庇って伏せろ!」


 弾かれるように、子爵も、グレンロイも、兵たちも、その場に伏せる。そして。


 ――ドオ……ン


 爆音、爆風。

 背中を襲う熱い風に歯を食いしばる。ようやく音がなくなって、ゆっくりと起き上がると、塔はあちこちが傷つき、さらには上部が吹き飛んで吹きさらしになっていた。

足元は――なんとか崩れていない。塔下部や、兵士たちに目立った損傷はなさそうだ。


「皆無事ですか!」

「へ……陛下! こんなところにおられたのですか⁉」

「ま……まさか、今のはあなた様が」

「――今のを見たでしょう! この弾は魔術で撃ち落とせる! しかも城壁を狙う弾なら、高低差もあるのでなおさら撃ち落とすのは難しくないはず!」


 落ちてくる(・・・・・)弾でもなんとかなったのだ。だからなんとかなる。


「それに少しだけれど、次弾を装填するまでには時間がかかります。その間に魔術で総攻撃を仕掛け、砲台自体を破壊しなさい!」

 叫び、今度は、身体強化・俊敏性上昇の魔術バフを味方に掛ける。多少、魔力の消費はあるが、まだ問題ない。


「おお」

「これは……身体が軽い」


 兵士たちが顔を見合わせる。

 城壁の上にいた騎士たちが、軽く頷き合う。


「大丈夫、あなたたちの後ろにはわたしがいる。存分に戦いなさい!」

「――オオ‼」


 俺の檄に、兵士たちが気を吐く。


 ……そうだ、ここはルネ=クロシュ。

 我が国(・・・)に、そう簡単に侵略者を踏み入らせてたまるか。




  *




 敵の攻撃の手は、辺りが夕闇に沈んでも、なかなか衰えなかった。

 普通は、夜間の攻撃は控えるものだと聞く。寝ずにいると次の日に響くし、敵味方の区別がつきにくくなるからだ。

 常では日が暮れ始めれば退がっていくというのに、日が沈みかけていても、今日の兵はなかなかにしつこく、なかなか退こうとしない。


(預けてもらった魔力も、そろそろ尽きる……)


 俺自身の魔力もないわけではないが、そもそも、効果が消えては掛け消えては掛けを繰り返した、兵全体にかける魔術バフは、俺の素の魔力では一発ですら危うい。


 兵にも疲れが見えてきて、死傷者も多い。俺の治癒魔術では追いつかない。


(とはいえ、こちらも士気は高い。向こうもただでは済んでいないだろうし、完全に削り合いだな……)


 攻城戦にはそもそも、兵力差が必要だと言われている。もちろん、攻める側が多くなければならないということだ。三千が奮戦したら、一万でもなかなか厳しいはず。それに、あの攻撃の後、こちらの騎士が数人がかりで攻撃魔術の雨を降らせ、攻城砲を無効化した。以降、彼らは大砲をあまり使ってこなくなった。


 けれども、削り合いとなればこちらが不利だ。


 向こうに食料や人の補給があるのかどうかはわからない。調べる暇もなかったし、間諜を放つにも用意する時間がなかった。そのため、一方的に襲われている状態で――だからこそ、この状態が続けば数が少ないこちらが先に力尽きる。


 泥試合を終わらせるためには――。



「陛下」

「ヴェロン子爵。どう、まだ敵は退かないかしら」

「はい。ただ、まだこちら側に降りる階段は死守していると」


 ヴェロン子爵の疲れた横顔が、西日に照らされている。そろそろ、本当に陽が沈む。


「そう……皆、奮戦してくれているのね」

「陛下もずっと魔術で皆を援護してくださっていたでしょう。お休みにならなくては……。お顔の色があまり優れません。城に戻って、睡眠をお取りになってください」

「……そうかしら」


 だが、一応俺は、今日一日で兵の士気の要となった。

 向こうが退却していないうちに城に下がるわけにもいかない。


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