第15話 アメリアの新しい仕事
本日から第二章が開始しますので、どうぞよろしくお願いします。
内容に合わせて、タイトルも変更させていただきました。
「今日はお掃除楽しいな♪」
アメリアはルーファスの書斎を綺麗にしていた。
本棚に積もった埃を一掃し、隅々まで念入りに清掃を行う。
床はピカピカに磨かれ、窓ガラスも新品のように美しい。
「ふぅ~これで完璧!」
一通りの作業を終えて、満足げに息を吐く。
するとドアが開き、ルーファスが現れる。
「――え!?」
アメリアの姿と部屋の有様を見て、目をパチクリさせる。
「あっ、ルーファス様おはようございます!」
「驚いたな。長旅から帰ったきた翌朝だというのに、部屋がすごく綺麗になっているよ。掃除に関しても流石の腕前だね。ありがとう」
「――これは新しい職場に挨拶をするつもりで、精一杯の心を込めて行いました。未熟者だと思いますが、よろしくお願いします!」
「ふふっ、アメリアは真面目だね。それじゃあ早速、仕事を頼むことにしようかな? まずはこの手紙の内容を確認して欲しいんだけど……」
「はい! かしこまりました!」
元気よく返事をして、指示された書類を受け取る。
アメリアの新しい仕事――ルーファス専属の秘書官としての日々が始まる。
行きの馬車の中で、ルーファスに仕事内容を告られた時は本当に驚いた。
アメリアはメイドとして、仕える気でいたからだ。
――昨日の馬車内。
「……秘書官?」
「仕事のサポートやスケジュール管理なんかを主にやって欲しいんだ。ゆくゆくは、私の片腕になってもらえたらと思っていて……。君なら適任だと思うんだよね」
「私がですか……!?」
思いも寄らない提案に驚くアメリア。
ルーファスは、それが当然といった雰囲気を崩さない。
(そんな重要ポジションをいきなり任されるなんて……!)
「でも私は経験不足ですし、急には務まらないと思うのですが……」
「大丈夫だよ。むしろ他の人が秘書官になる姿が、今は想像できないくらいなんだ。だから私を助けると思って、引き受けてもらえないだろうか?」
「……そうなんですか。とても光栄なお話なのですが、ルーファス様にご迷惑をかけてしまうのではと不安になります」
「心配はいらないよ。困ったことがあればいつでも相談してくれて構わないからさ」
ルーファスは優しく微笑む。
その言葉に嘘はないと感じたアメリアだが、やはり自信が持てずにいた。
「あの、一つだけ質問させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「うん、いいけどどうしたんだい?」
「正直なところ、メイドの方が相応しいのではないかと思ったりして……」
アメリアは控えめな態度で本音を告げる。
ルーファスはその言葉を受け止めると、諭すように口を開く。
「――それは違うよ。君はとても優秀だから、その能力を最大限に活かせる仕事をするべきなんだ。それに秘書官という役職は、お互いの信頼関係が大切だからね。例えば重要な案件を任せられるとか、秘密を打ち明け合えるような間柄になれるとか、そういう関係性を持てるかどうかって重要だと思うんだ」
「……信頼関係の大切さは分かります。ですが、私たちはまだ出会ったばかりですし……」
「確かにそうだね。だけど私は、君の誠実さと努力家な性格にも惹かれたんだ。だから気付いた時には、いつの間にか君を信頼していたんだよ。……これだけじゃ理由にならないかな?」
真っ直ぐに見つめられて、思わずドキッとするアメリア。
胸の奥底まで見透かすように、ルーファスの瞳は澄んでいる。
(確かに、私もルーファス様のことを信頼できる人だと思う。それに、こんな素敵な方に認めてもらえたことは嬉しい……だったら答えは――)
心の中で葛藤していると、ルーファスが先に口を開く。
「もちろん無理強いするつもりはないから安心してほしい。もし秘書官になってくれたら、自由で楽しい毎日を送れるのは保証するよ。あと報酬の方も期待していてくれてもいいからね?」
「――!?」
最後の一言を聞いた瞬間、アメリアの心は大きく揺れ動いた。
自由に楽しく働く――今までの人生において、一度も考えたことのない選択肢。
屋敷での奴隷のような生活を始めてから、ずっと憧れていたことだから……。
「あのっ! ぜひ秘書官として働かせて下さい!」
気づけば勢いに任せて答えていた。
ルーファスは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。これからよろしく頼むよアメリア」
こうしてアメリアの秘書官生活が始まったのである。
――現在
アメリアは書類を確認しながら思う。
(こんな日が来るなんて夢みたい……! ルーファス様にお会いしてから、私の世界が色鮮やかに変わっていく!)
ルーファスの秘書官になってからというもの、仕事に対するモチベーションはうなぎ登りだ。
今だって鼻歌を歌いながら、作業を楽しみたい気分。
「えへへっ♪」
つい顔がニヤけてしまい、慌てて表情を引き締め直す。
しかしすぐに気持ちは舞い上がり、またもや頬が緩んでしまう。
(いけない、今は集中しないと! この書類の確認が終わったら次は――)
アメリアは気合いを入れ直して、仕事に集中する。
「あっ……ルーファス様、こことここに誤字があります。内容は大丈夫だと思いますので、修正しておきますね」
「流石の早さだね、助かるよ。私の思った通り、アメリアは優秀な秘書になりそうだね。これからの活躍も期待しているよ」
「ありがとうございます!」
こんな風に褒めらたりしたら、もう堪らない。
アメリアは喜びを抑えきれずに、満面の笑みを浮かべる。
モルガン夫人は仕事は出来て当たり前だと、アメリアを評価してくれなかった。
逆に些細なミスは厳しく咎められ、罵倒されることも少なくなかった。
だから仕事ぶりを高く評価されることが、こんなにも嬉しいことだとは思わなかったのだ。
(もっと頑張ろうっと! ルーファス様のお役に立てるよう、しっかりサポートしよう!)
ルーファスの秘書官として過ごす時間は幸せそのもの。
アメリアは笑顔で、仕事を続けていく。
「ルーファス様、今日の昼食はいかがいたしましょう?」
「……もうそんな時間なのか。この後の予定を教えてもらえるかい?」
「はい。この後は午後三時から人材ギルドの視察が入っています。夜は七時以降に、財務部の会議が予定されております」
「そうだな……人材ギルドの視察ついでに、外で食事を取ることにしようか。せっかくだから私の行きつけの場所に案内するよ」
「ありがとうございます。ちなみに、どこに行くんですか?」
「ふふっ、貴族御用達のレストランだよ。大丈夫、予約は取っておくからさ」
「――!?」
その言葉を聞いてアメリアは驚く。
貴族御用達のレストランといえば、庶民では手が届かない超高級店に違いないからだ。
「そ、そんな……私なんかが行っても大丈夫なんですか? それにお手を煩わせるわけにはいきませんし……」
心配そうにするアメリアに対し、ルーファスは不敵に笑う。
「気にしないでいいよ。今回は私の顔を立ててくれると嬉しいな。遠慮せずに一緒に行こうじゃないか?」
「本当に……いいんですか?」
「もちろんだとも。よし、じゃあ準備を整えたら出かけよう!」
「はい! ルーファス様!」
(嬉しい! ルーファス様とお食事だなんて……まるでデートみたい……)
アメリアは浮かれた気分を悟られないように注意しながら、支度を始める。
それでも心臓の音は、うるさく鳴り響いていた。
(ああ……どうしよう、ドキドキが止まらないよ!)
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