君と出会えた私は幸
「ぷはぁ、この一杯がうまい」ボロアパートの一室でビールを飲む。僕は24歳。人々は僕のことを不幸な人と呼ぶだろう。かつて僕は人生を約束した彼女がいた。
あの日を境に僕の前から彼女は姿を消した。
僕と彼女の出会いは中学1年生。お互いに漫画、アニメ研究部に所属しており僕と彼女は好きなジャンルが同じだった。僕たちが付き合うまでに時間はそうかからなかった。休みの日には秋葉原によく行き、夏休みには二人で遠出をしたものだ。
中学3年生の頃に小説を書くのが好きな僕と絵をかくのが好きな彼女は卒業記念として1作のゲームを作った。先生の勧めで冬のコミックマーケットに出させてもらったが売れたのは10個。僕の中では伝説のゲームだ。タイトルは「君と出会えた私は幸。」
この時は本当に楽しい日々だった。僕の目にはいつも君が映っていて、その顔はいつも笑っていた。その顔が僕は本当に好きだった。なのに、なんで....。
3月15日卒業式の日、彼女は僕に言った。「明日引っ越すの」胸が締め付けられた。何を言っている。「え?」僕は自分の耳を疑った。答えは同じだった。「明日引っ越すの、お父さんの仕事の都合でアメリカに行かなきゃいけなくなったの。明日朝7時の便でアメリカに行くの。急でごめんね。」
僕は泣いていた「僕は千冬なしでどう生きていけばいいんだよ」彼女も泣いた。「離れ離れになるけど気持ちは変わらない。だから、ね?お互い頑張ろうよ」彼女の言葉はとても強そうだが、声は見えない恐怖に怯える子供のように震えていた。
これが僕と彼女の最後の会話だ。
彼女は今どこにいて何をしているのかも分からない。思い出に浸りながらも明日が仕事なので寝よう。