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吾輩はただの猫に化ける

 路地に置かれている木箱の上でちょこんとお座りしながら目を瞑っている可愛らしい黒猫。

 吾輩以外にいないだろう。

 魔法使いに吾輩の存在がバレてから早数時間。日も傾き始めている。


 表通りの方では兵士らしき人間が二、三十分置きに巡回しているところを見るに、魔法使いに言われて吾輩を探しているのだろう。

 来たばっかりであるが、早々に立ち去った方がよさそうである。

 だが、今の状態で別の町や村に移った所でそこに看破できる魔法使いやそれに準ずる者たちが居たらまずいので、この場で魔力の隠し方を覚えて行った方がいい。


 そう思った吾輩はこうして瞑想しているのである。

 お座りしてうたた寝しているわけではない。

 と言うか早急に魔力を隠したい理由がもう一つあるのだ。


 魔力が駄々洩れなせいなのか、この町に住む猫たちに避けられているのだ。

 人間よりも敏感な生物である猫は、どうやら魔力にも敏感なようで吾輩を見つけると脱兎のごとく逃げていく。猫だけど。

 つまり、今の吾輩では猫同士の交流が出来ないのである。悲しいことにっ!!

 だからっ! 早急にっ! 吾輩はっ! 魔力をっ! 隠さねばならぬっ!!


 と言っても、もう少しで出来そうなんだけどね。

 あの赤毛の魔法使いが言っていた魔力のことだが、どうやら内に秘める魔力のことではなく、無意識に漏れていた魔力のことだったみたいだ。

 自分の魔力を瞑想しながら見ていると、丹田あたりに塊があり、その塊から放射されているような感じになっているのだ。

 それが体外に漏れ出しているようで、魔法使いはそれを感知していたようだ。


 そのことに気づくまで数時間かかったわけだが、独学でこれなら早い方だと思いたい。

 次にやるのは、放射状に体外へと漏れている魔力をどうやって抑え込むか。

 漫画と神帯に魔力抑制の魔道具的な何かがあれば一番楽なんだが、猫である吾輩がそんな便利なものを手に入れることが出来るわけもない。

 試しに空間魔法で魔力の塊の部分を覆ってみるも意味がなかった。

 かと言って他の属性で出来るわけもなく。


「にぃ」


 むむむ。どうしたもんか。

 あとは――


「にゃっ!?」


 これは九本目の尻尾様の出番ではないか!?

 では早速。


「にっ!」


 創造発動!

 吾輩の言葉で九本目の尻尾が反応を示す。

 作り出すは魔力を覆って隠す空間魔法!

 結界や封印に近い魔法だ。

 ただ空間で固定したところで意味がないのなら、魔法として意味を持たせればよいのだ! さすが吾輩可愛い上に賢いっ!!


 出来上がった魔法を使ってみると、八本目の尻尾は反応を示して吾輩の丹田部分を覆ったのを体内で感じた。どうやら成功である。

 目を閉じて漏れていないか確認してみると、吾輩から漏れ出ている魔力はなくなった。

 つまり、これでただの猫である!

 うむ!


「に……にゃ?」


 すると、どうだろう。今まで吾輩に一切近づくことのなかった猫の一匹が路地の影から顔を出して声をかけてきたではないか!

 おそらく、ずっと様子を見られていたのだろう。


「にゃ」


 とりあえず返事をしてみると、顔を覗かせていたキジトラ模様の猫が恐る恐る姿を現してくれた。

 吾輩は木箱から降りて怖がらせないようにゆっくりと近づく。

 ビクッと身体を震わせるキジトラ猫だが、吾輩から攻撃の意思を感じなかったらしくその場に留まってくれていた。


「にゃ?」


 キジトラ猫は、ある程度まで近づいて立ち止まった吾輩を不思議に思って首を傾げる。

 くぁいい。


 ちなみに、吾輩にはキジトラ猫がなんと言ってるかわかっている。吾輩は猫だからな!

 ここからは吾輩たちの言葉をわかりやすくしていこうと思う。


〈もう怖くないか?〉


 吾輩はキジトラ猫に問う。


〈うん。様子を見てたけどさっきまであった怖い力の気配はなくなった!〉


 よかった。

 どうやら魔法はしっかりと発動してくれたようだ。


〈ならよかった。怖がらせてすまんな〉

〈大丈夫。僕たちに敵意がなかったのはわかってたから。でも、あまりにも強い力だったから近づけなかっただけ〉


 なるほど。


〈同族に敵意を向けるほど吾輩は落ちぶれていないさ。ましてや他の奴の縄張りだしな〉

〈それだけの力を見せられたら誰も君にちょっかいはかけないと思うけどね〉


 それは残念。

 猫の喧嘩と言うものを経験したかった。

 だがまあ、吾輩が普通の猫に攻撃したら弾けそうだから逆に良かったのかもしれないな。


〈君はどこから来たの?〉

〈すぐそこの森〉

〈え!? あの森から!? あそこ危険なニオイがいっぱいするからみんな近づかないよ!〉


 そりゃ魔物や大型動物がいるのだから本能的に近寄らないだろうよ。


〈吾輩強いからな〉

〈あ、そっか! これから君はどうするんだい?〉

〈吾輩飼い猫に憧れていてな。飼い主を探している最中だ〉

〈あっはは! 君変わってるね!〉

〈楽に生きたいからな。でも、この町ではやめておこうと思う〉

〈なんでだい?〉

〈吾輩の力に気付いている人間たちがいるのだ〉

〈ああ、それで変な格好の人間たちがうろうろしてるのかー〉


 どうやら猫たちも不思議に思っていたようだ。


〈だから違う街にでも行こうと思ってる〉

〈せっかく会えたのに残念だなぁ。気が向いたらまた来てよ〉

〈ああ。ここの騒動が落ち着いたころにまた来るさ〉


 そう言った後、吾輩たちはその場で別れた。

 また木箱の上へと戻った吾輩は、空間倉庫からトカゲ君のお肉を取り出して食事をする。ちなみに腐らないようにジャーキーに加工済みである。もちろん無添加!

 加工の仕方はクルムさんから教わった。

 あのドラゴン何でも知ってて驚いたわ。


 どこか安全な場所で寝て明朝にでも出発しよう。

 今日の吾輩は頑張ったのだ。疲れたのだ。眠い。


「」←人間亜人

『』←念話

〈〉←猫語


で、行きます!


お読みいただきありがとうございます。


続き早く!

更新待ってるで!

面白かった!


と思ったら下の☆の評価をよろしくお願いします!

感想やレビューもお待ちしておりますよ!

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