希望の種々
「じゃあ、今日はあっちに行ってみよう!」イヴが指さす方向は今まで避けてきた森の方だった。
「イヴ、爺ちゃんたちに言われたじゃんか。森に入ったら帰れなくなるかもしれないから、避けるべきだって」俺は呆れた様子で言ってやった。そしたら、目の前に白い花をイヴが突き出してきた。
「フフフ、私を侮ってもらったら困りますよ~アダムさん。ちゃんと考えてるって」俺は少し関心したが、一つの疑問が頭をよぎった。
「なぁ、昨日のイヴが採ってきた食料の量が少なかったのって…」イヴが目を逸らす。
「おい…」
「だって、行きたかったんだもん」
俺は深い溜息をついた。結局イヴには呆れてしまったが、その気持ちもわからくもなかったから、俺は森に行くことを許可した。
「好き・嫌い・好き・嫌い…好き……嫌い……」イヴは歩きながら恋占いをしているようだった。
「アダムは私の事が嫌い?」涙目になりながらイヴが質問してくる。
「…嫌いじゃないよ」
「じゃあ、好き?」イヴの顔はぱぁっと明るくなっていた。
「うるせぇ」そう言いながらイヴの頭に軽いチョップをした。
「ところでさ…」
「逃げたな」イヴには話題を変えて逃げたことがばれていた。
「もういいだろ、そのことについては。でさ、花を目印にして帰ろうとする方法って…」俺にはこの方法に覚えがあった。
「うん、ヘンゼルとグレーテルのやつ」やっぱりそうだと納得した。
「俺も好きだな」
「え、私?」すかさずイヴが聞いてきた。
「違う!」俺もすかさず言い返す。まだ、諦めていないぞと強い熱意のようなものを感じる。イヴはチェっと悔しがりながら本の事ねと言ってきた。
「そうだね、私も好き。まるで私達みたいに協力しあって生きているようだったから」
「俺らに少し似てるよね、でも俺らの家族は俺らを森に捨てようだなんて考えないさ」そう断言出来た。
そう出来るくらい俺は家族を信頼してる。だからこそ爺ちゃん達を助けたいと思えたし、頑張り続ける事が出来た。空いた時間で本を読み、治し方を探し続けていた。俺は村にある医学の本は全て読んだ、でも、やはり量が足りない。村にある本はリーブ爺さんがかつて集めてくれたものだった。村にある本の量が少ないわけではない、それでも見つけることが出来なかった。
俺が遠くに行く事を許可した理由の一つは爺ちゃん達を治す方法を探したいからでもある。爺ちゃん達がやめろと止めても俺は大切な人が助かるなら危険な場所にだって突き進む。けれども、そんな危険な場所にイヴを連れて行く事は出来ない。家族が欠ける事は絶対に嫌だから。