咲き始めた花の世界
突然だった、本当に突然だった。イヴが巨大な化け物に襲われ、目の前から姿を消した事が。
ここ最近になって爺ちゃんたちが一斉に病気になったのか、みんなが寝たきりになった。この村には若者は俺とイヴだけだ、生きていく為にも俺たちが食べ物を採ってくるしかない。爺ちゃんからは一度、自分たちを見捨て、自由に生きて欲しいとは言われた。それでも、俺は首を横に振った、十五歳の今になるまでお世話になり続けた恩をまだ返せてない、それに、これからもまだオウバ爺ちゃん、ヨモギ婆さん、リーブ爺さん、イヴ、俺の五人でご飯を食べていきたい。だからこそ、誰か一人が欠ける事が嫌だった。
「イヴ、食べ物採りに行こう、昨日はあまり採れなかったんだ、朝から採りに行かないと昨日の分を取り返せない。」
「・・・」
「頼む起きてくれ、人数が必要なんだ、頼むよ!」
「ほら、アダム、そこはお前じゃないとダメなんだ!って言わないと」ひ弱だけどおちゃらけた明るい声でヨモギ婆さんが注意する。
「婆さん!ふざけてないで、イヴを起こすの手伝ってくれよ!」
「婆さんの言う通りだよ、ア・ダ・ム」
「なんだ、起きてるんなら身支度整えてさっさと行こう」
イヴがむぅと頬を膨らませている様子に俺とヨモギ婆さんは笑ってしまった。
「準備できたよーアダム!」イヴの元気な声が聞こえてくる。
「それじゃあ、行ってきます。みんな」
そんな俺に対し、
「いつもありがとうね」
「二人が一緒にいる事は必ずだ、忘れるな」
「私たちの事は最後で構わない、第一は自分自身、第二に隣を歩いてくれる人だよ。」
ヨモギ婆さん、リーブ爺さん、オウバ爺ちゃんの順で返事をくれた。そして、俺たちは食べ物を探しに出発した。
食べ物は一度採った場所からはその年は採ることは出来ない。だから、場所を少しずつ変えていく必要がある。そして、陸の食べ物をある程度採ったのち、海に行き、魚を捕まえる。俺たちの一日は大体こんな感じだ。今日ももちろんそんな感じにするつもりに考えてた。ただ、イヴはそんないつもと同じ日程に飽き飽きしていたのだろう。
「今日はいつもより早く起きたんだから遠くに行ってみない?ほら、遠くに行けばまだ採ってない場所だらけでしょ!だから…」
確かに一理あると思い迷った、でも、遠くに行ったら安全かどうかまだわからない。そんな悩んでる様子をしているとイヴは上目遣いでこっちを見てくる。
「わかったよ」はぁとため息をついて、遠くに行くことを許可した。
後になってこの事を許可しなければ良かったと俺は思った。後悔することになるとはこの時の俺にはわからなかったんだ。