聖女の祈り─月の輝く夜の帳に─は乙女ゲーム。2
「オフィーリアさん、あなた本当に節操の無い方ね!」
「ディアーナ様…わたくしとサイモン様とは何もございません!」
「生意気にも子爵令嬢の分際で、わたくしに意見するつもり!?この身の程知らずが!」
「きゃあ!ディアーナ様っ…!」
「オーッホッホッホ!無様だこと!」
「なんだソレ…ディアーナ、アホだよね?」
宿屋に部屋をとったディアーナとレオンハルトは、ベッドの縁に座ってレオンハルトの記憶を頼りにゲームの内容を確認していた。
「ディアーナの口から、ディアーナがアホだと聞くのもアレだが…まぁ、確かに悪役令嬢のディアーナはアホだと思うよ…底が浅いと言うか…。」
レオンハルトがため息をつきながらベッドに寝転がる。
「私がオフィーリアだったら、こんなディアーナは秒で黙らせるわね!二度と、こんな口が聞けなくなるまで!」
「ディアーナやめてあげて。ディアーナは無敵なんだから、俺のディアーナが可哀想。」
会話しながら訳が分からなくなった二人は暫く黙り込む。
「俺も、ゲームをプレイした訳でもなければ、ゲームに添って他の攻略対象に接触した訳でも無い。オフィーリアとしてこの世界に立った時に、あらすじ程度の知識が頭に流れ込んで来ただけで…だが、スティーヴンのルートに進んでるワケだから、忘れてもいいと気にもしなかったし。」
「もう、オフィーリアで逢う必要もないし、やっぱり気にする事無いんじゃないのー?私も従兄弟のサイモンの事、あまり覚えてないし。」
「…かな……親父が関わっているってのが、何か不気味なんだがな…。」
ディアーナは寝転がるレオンハルトの上によじよじと身体を乗せる。レオンハルトの胸の上に顔を乗せると満足げに頬笑む。
「ナニコレ…胸まくら?ドキドキ止まらなくなるでしょ?奥さん。」
「しーらない、今日はこれで寝るんですぅ」
バカップル二人がイチャイチャしながら眠りについた頃、隣の部屋ではベッドで酔い潰れたウィリアの髪や頬を撫でながらため息を漏らすスティーヴンが居た。
「妹より…兄の方だよな、問題は…。」
スティーヴンの口からヒールナー伯爵家の嫡男についての話しはしなかった。
だが、酒場のあの場でレオンハルトが自らサイモンの名前を出し、ディアーナと二人でスティーヴンには分からない話をしていた。
「神のみぞ知る…か…私には成り行きを見守るしか…。」
愛しい妻のウィリアの髪を撫で、スティーヴンも隣に横たわる。
「…二人が話していた攻略対象とか、キャラクターとか、ライバル令嬢とか…一体何なのだろうか…」
知ったら知ったで、何だか後悔しそうな気がしなくもない。
スティーヴンは愛しい妻の寝息を聞きながら眠りについた。
「サイモン様、そんなにご自身を責めるのは、おやめ下さい!」
「オフィーリア!君に何が分かる!?家族にずっと蔑まれ、10年も存在を無視され続けた俺の苦しみなど…!」
「意気地無し!!」
「………ッつ」
「…ぶった事はお詫び致します…でも…今のあなたは…一人ではありません!…私がいます!」
「……………………分かるワケねーだろ…お前なんか、愛する女に変態と蔑まれたり、1000年以上忘れられていた俺の比じゃねーし。」
愛する妻のイビキを聞きながら目を覚ましたレオンハルトはディアーナを起こす。
「おはよ…レオン…どうしたのぉ…?」
目を擦り、半分寝ぼけながらレオンに尋ねるディアーナに、レオンハルトが集中するように眉間にシワを寄せる。
「サイモンの夢を見た。忘れない内に話す!悲恋的な感じだったような…」
「うん、どうぞー話して」
「俺が見た、夢が…………サイモン様、自分を責めてはなりません!オフィーリアお前に何が分かる!10年シカトされた俺の気持ちなんか分かるもんか!サイモン様のオタンコナス!バキッ!ぐはっ!殴ってゴメン!私がいるじゃないの!…こんな感じだった。」
「………………それ、悲恋…?」
ディアーナは眉間にシワを寄せる。
「悲恋ぽかった気がするのだが…効果音まで説明したのが悪かったのか?」
いや、ソレ以前の問題な気がする。
どれが誰の言葉かも分からんし。
寝ぼけていたせいもあって、頭の中に、オタンコナスとバキッぐはっ!しか情報が残ってない。
「オフィーリアとサイモンの話しなんでしょ?レオンはレオンハルトのままパーティーに参加するんだし、関係ないじゃないの…口説かれるワケでもないし…。まぁ、私もイライザの事を少し思い出したんだけど…。」
ええ思い出しましたとも。
ムカつく、クソ娘だって事をね!




