スティーヴンとウィリア7
ここ最近、人里を離れた場所ばかり旅をしていたのだが、今回久しぶりに町に入った。
いくつか調達したい物もあったし、都合が良い。
「わざわざ町で買わなくても、城に転移してクスねて来いよ。」
神の御子の言葉とは思えない事を言うレオンハルト殿。
「王室御用達の火打ち石とか…?んなモンあるか。馬鹿じゃないですか?」
「言うようになったな、お前!俺に溺れていたスティーヴン殿下、どこ行った?!」
「私が溺れていたのはオフィーリアで、しかも私の妄想による理想の性格ですよね?レオンハルト殿要素ひっとつも無いですから!」
笑顔でにらみ合う私とレオンハルト殿。
「ウィリア、変態とおかんはほっといて、ショッピングしながら女子トークに花を咲かせましょうか!」
ディアーナ嬢はウィリアとカップルのように腕を組んで町に消えて行った。
「この町、ウィリアの町スマザードと同じ位の規模かしらね。海に面してないから、雰囲気は違うけど。」
ディアーナは露店に並ぶ商品を手にして眺めながら、アクセサリーはウィリアに合わせてみたりする。
「…そうですわね…スマザード…。どうなったのでしょう…。」
ウィリアは少し遠い目をする。スティーヴンから、あの町の者達の処分について何も聞かされていない。
「何よ、殿下は何も教えてくれないの?」
「ええ、スティーヴ……いえ、殿下からは何も…。」
「言い直さなくていいわよ、私がスティーヴンを殿下と呼ぶのは婚約者だった時のクセみたいなものだから。ウィリアは殿下にスティーヴンと呼ぶ事を許されたんでしょう?」
「そうですが、わたくしのような……!!」
ディアーナが何か言いたげにウィリアを見ている。
何かと言うか、あの顔はもう「うぜぇ」しか言わない。
「き、気にしない事にしますわ!旅は楽しく!買い物も楽しく!ですわね!」
「ウィリア……無理しないで…ね?」
無理をさせてんのは貴女でしょうが!!
そう思ってしまう自分に苦笑い。
旅をする前の、あの町に、自分の罪の重さに、囚われたままの自分だったら、絶対に思わなかっただろう。
ディアーナ嬢いわく、いわゆるツッコミ。
「あ…そういえば、わたくしスティーヴンと一緒に探したい物がありましたの!」
「へぇ、なあに?お揃いのナニか?」
キラキラな目で答えを待つディアーナ嬢。
「お揃い…と言えばお揃いなのでしょうか?四人ぶんのナイフ、フォーク、スプーンあたりですわ。……この間、誰かさんが握って折ったので…」
「………その節は、まことに申し訳なく……レオンに腹が立ってつい…」
その、誰かさんのせいで、暫くは木の枝を刺して食事をしていた。食べにくいったらない。
「わたくし、スティーヴンを呼びに戻りますわ。」
「一人で大丈夫?なんかフラグ立ってない?」
「?フラグ?」
意味が分からないウィリアは、ディアーナから離れて人混みをかき分けながら、町の入り口付近に戻る。
町の入り口に辿り着いたウィリアは辺りを見渡すが、移動したのかレオンハルトとスティーヴンの姿は無かった。
「いつまでも、ここに居るわけありませんわね…困りましたわ…。」
はぐれたとしても、ディアーナ嬢とウィリアの髪色は目立つから、すぐ見付かるだろうと、ウィリアは入り口付近にある噴水の縁に腰を下ろした。
そう、目立つ。
「見付けたぞ、ウィリア…!この裏切り者め…!」
ウィリアは男に腕を掴まれた。男の顔を見てウィリアがヒュッと息を飲む。
スマザードに居た町の長達の一人、その男の息子でウィリアを口説き続けていた男がそこに居た。




