スティーヴンとウィリア3
ジャンセンから、信じられない告白を受けた私は頭を抱えて項垂れる。
「ウィリア嬢は…今、王城でどういう扱いを…?」
城に放り出して来ただなんて…しかも父の前に。
私の添えた書簡を読んでくれていたとしても…。
被害者であるとはいえ、彼女は魔物を生んだ町の巫女であり、父や母を殺害した町の長達と悪行を隠し続けた。
犯罪者の一人として扱われていたら…。
「私に聞かれても困ります。知りませんよ、そんなの。」
面倒臭そうにジャンセンが答える。
「だから、一緒に来いって言ってんじゃないですか」
え?そんな事言われてた?
スティーヴンはジャンセンに襟首を掴まれると、そのまま転移魔法を使われた。
そして、玉座の前に放り出された。
ほんとに放り出されたので、みっともなく尻もちをついてしまった。
「うおっ!す、スティーヴン?スティーヴンか!?」
「ち、父上…?」
よつん這いで、痛む臀部を撫でながら久しぶりの父との対面…玉座でこんな姿晒させんなよ!創造主!
「し、失礼を…陛下の御前で…」
慌てて立ち上がり、右手を胸の前に出し膝を折る姿勢を取る。
「玉座の前とは言え、正式な場では無いのだ、気にせずとも良い…久しぶりだな、スティーヴン…元気そうだな…」
「はい、父上もお変わりなく…あの、それで実は…」
「感動のご対面は、私が居なくなってからにしてくれません?て、言うか帰りますけど。」
ジャンセンは身体を消しかける。
「ちょ!ジャンセン!私は、二人の元にどうやって帰れば…!」
「転移魔法で帰れば?何度も迎えに来るの面倒臭いから、使えるようにしときますよ。あの二人が居る場所と、城の行き来だけ出来るように。」
それは…私にウィリア嬢の世話と、あの二人の世話をしろと…
「頼みましたよ、おかん」
だから!!神の御子と神の娘!
身内に変な言葉を流行らせるんじゃない!
ジャンセンは、国王と私の前で消えて居なくなった。
玉座の間には、私達の他にも何人か居たが…強い威圧を受けたようで、誰も何者だとか追及出来なかったようだ。
「あの者が…そ………であると?」
父は、信じられないが信じるしか無いのかみたいな、複雑な顔をしている。
「父上、書簡にも書きましたが…名前を呼ばないで下さいね、プチっとしに来ますから。…レオンハルト殿より恐ろしく…そして、面倒臭い方です…」
面倒臭い方と言うか、面倒臭がりな方と言うか…。
面倒事をすべて私に押し付けるのはやめて欲しい。
「ところで父上、ウィリア嬢なのですが…今、どのような扱いを…?まさか、牢にとか…」
「……お前の書簡に、俺の女だからと書かれていたからな…お前の部屋に…。」
なんか、とんでもない言葉を聞いた。
「わ、私が!そんな事を書くわけ無いじゃないですか!」
「分かっておるが、だったら書いたのはあの方なんだろう!?無視するなど恐ろしくて出来んわ!」
ああ…!くそぅ! 書き方や、言い回しを私に似せる気もないあたり、ジャンセンしかいない…!
しかも、レオンハルト殿がディアーナ嬢に言っていた言葉を使い回して…!
何だ、あの父親!




