スティーヴンとウィリア2【ウィリア回想】
ウィリアは困惑していた。
あの、母の姿をした魔物に拐われた日。
レオンハルト様達が現れて母を…いえ、母を操っていた魔物を倒しました。
魔物に操られていた母の遺体が魔物の消滅に伴い消えて無くなった時、私は悲しみにうちひしがれ…る暇もなく、目の前のおかしな状況に翻弄されたのです。
ディアーナ様が落石のせいで倒れると、レオンハルト様が鬼のような形相を見せ、呪いの文句のようにプチプチ言い出しました。
レオンハルト様を抱いて現れた黒髪の神秘的な容姿の青年は、レオンハルト様が町を破壊しようとするのを「すれば?」と賛成。
私は二人が恐ろしくなり「お慈悲を!」と泣いて縋りました。
すると、黒髪の神秘的な青年は私を…
まるで荷物を扱うかのように脇にかかえ込み、転移魔法とやらでこの城に連れて来たのです。
この人、男性であるレオンハルト様は横向きで抱きかかえていたのに、なぜ女の私を荷物扱いするのかしら…。
しかも城に着いた途端、私はドサリと国王陛下の前に落とされ、その黒髪の男はよく分からない巻物を誰かの顔面に向かって投げつけて姿を消したのです。
「…………」
その場にいた、国王陛下はじめ、側近の方々や近衛の方々…国の重鎮の方々と私は、何が起こったか分からずに誰も言葉を発せずにおりました。
顔面に巻物を投げつけられた方がその中を見て、初めて私が誰か、私を連れて来た男が誰か、この事態の発案者が誰か分かったようで。
陛下に何やらお伝えしたようでした。
「その方、ウィリアといったか…私が誰か分かるか…?」
「は、はい…ラジェアベリア国王陛下…スティーヴン殿下の父君にあらせられる…」
「書簡は間違いなくスティーヴンの字で、町で起こった事やウィリア嬢を保護して欲しい旨書かれておるが…最後にな、スティーヴンじゃない字で、スティーヴンを語って追伸がしたためてあってな…」
「追伸…ですか?一体どのような…?」
「…うむ…読むぞ、『コイツ、俺の女だから』」
「なんですって!?」
誰よ!そんなの書いたの!そんな言葉を国王陛下に読ませたの!
「…うむ…悪いがウィリアよ、そなたを連れて来た青年、あの者の意向を無視するわけにはいかんのだ…よって…」
「はい…?」
「皆のもの!この者は!スティーヴンの女である!」
「はいー!?」
陛下が大々的に公言してしまいました。
小さな港町の海の巫女の私が…王太子殿下の…
ちょっと待って、女ってナニ?
想い人とか、婚約者とか…そんな、高望みしなかったとしても女って何なの!?結局のところ!




