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55# 海藻づくし

「…ん…」


ディアーナが薄く目を開く。


━━━やだ、また私連れ去られて眠らされてる…いや、いやいや、今回は私が隙を見せて連れ去られたワケではない! ウィリアさんが人質になっていたから、自ら来たのよ!!━━━━


少し冷静になって、今の状況を考える。


「…磯くさい…」

自分自身の身体を見下ろすと岩肌の壁にはりつけられるように、身動き出来ないよう多くの海藻で拘束されている。


「私は、ラッコか?昆布やワカメで縛られているとか…」


辺りは暗く、湿った潮の香りが強い。

海の近くのようだ。

暗さに目が慣れてきた頃に、ここが鍾乳洞である事に気付く。

レオンハルト達が崩落したと言っていた鍾乳洞とは別の場所だろうか?

目を凝らして辺りをよくよく見てみる。

濡れた地面の上に、ウィリアが横たわっていた。


「ウィリアさん!ウィリアさん!大丈夫ですか?」


声をかける度にワカメが口に入る。磯くさいわ!


「大丈夫よぉ、可愛い娘ですもの、すぐに殺したりはしないわぁ」

鍾乳洞の奥から、ウィリアに似た女がやって来た。

歩く足音は聞こえない。

耳に届くのは、巨大な何かがズリズリと地面を這う気味の悪い音だけだ。


「ああ、聞いてますわ…下は蛇なんですってね…私、蛇はキライではないんですけどねぇ…」


「あら、嬉しい事を言ってくれるのねぇ」

「焼いたら意外に美味しいので…」

「……………………ちょっと驚いてしまったわ」


女は言いながら、天井の一部を長い尾で穿ち、大きな穴を開ける。

月明かりがスポットライトのように鍾乳洞の中に注がれ、辺りが明るくなると、女の全身が見えた。


「ラミアとか…っぽいけど、ヌメヌメしてるわ…下半身はウナギ…ではないわね」

ゲームの記憶が垣間見えたので、ちょっと照らし合わせてみたが、よく分からない。


「月の光を浴びるとねぇ、私の魔力が回復するのよ。さっきの転移魔法で減っちゃったからねぇ」


連れ去られた時は昼ごはん前だった。今は月が昇り、夜となっている。

お昼ごはん、食べそこねた。

大きな溜息をつくと、口にワカメが入る。


「ええい!磯くさいわ!空腹でも生ワカメなんて食わんわ!…いや、日本人だった時は食べたな…醤油とワサビあったらね!」


「本当に変わった子ねぇ…でも、もうそろそろ私の身体に魔力が満ちるわ。そうしたら、貴女の口の中に…入らせて貰うわよ…うふふ」


すっごい怖い事を言われた。入るワケ無いじゃないか。


身体を拘束していた海藻が自動で外されていく。壁から解放され、力無く地面に倒れそうになったディアーナの身体を、女が抱き留めた。

そして、口付けでもするかのように見つめ合う。


━━━あ、これイケメン相手ならトキメいちゃうシチュエーションだわ!…イケメン…レオンハルト…うわぁ無いな!━━━


女の口から触手のような物が這い出し、ズヌっと蛇の頭の様な物が出て来た。


「食べれません!お腹いっぱいなんで!」


ディアーナが、大声を出した所で月明かりがかげった。

天井に開けた大穴から、ヒーローのように男達が舞い降りる。

タン! タン!

着地した足音が響く。……2つ?



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