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53# 窓の外

「師匠!!」


身体を揺らされ、目を覚ましたディアーナはジュリっと口元のよだれを拭う。

ジャンセンの「うわぁ」と言う声と、何とも言えない嫌そうな顔を見てしまった。


「…いい夢、見れた?」

「私は亀のライダーになりたかったようです。」


「亀に…乗る人…?うん、いつも通りだね…ブレないな、姫さんの変人っぷりは」


ジャンセンはディアーナの頭を膝に乗せた状態で、強引にベッドから立ち上がる。

ディアーナの頭はジャンセンの足を滑り落ち、ディアーナ自身がベッドの下に落ちた。


「師匠!痛い!」


「その乱れた髪と、口元のよだれ何とかしてくれ。下に降りて食事に行きますよ。」


ジャンセンは部屋から出て行った。ドアの前に気配があるので、すぐ近くに居る。呼べばすぐに来てくれる。

それは分かっているのだが…


「助けを求められないのは、ツラいですわね…」


ディアーナは窓の外に目をやる。

窓の向こう側、先日ジャンセンがぶら下がっていたそこに


気を失ったウィリアを抱き締めた、ウィリアと同じ顔の美女が居た。


「理解が早くて助かるわぁ、姿を隠す魔法が切れる前に一緒に来てちょうだいねぇ?」


女は気配を察知されるのを恐れてか、部屋の中には入って来ない。

だからウィリアを人質にしてディアーナに来いと合図をする。


ディアーナは窓を開き、部屋の外に出た。

三階の窓の少し下に屋根があり、魔法陣のような物がうっすら見える。


女にそこに乗るように促され、片足を乗せるとフワリとした浮遊感があり。

姿が掻き消される寸前にディアーナは声を上げる。


「レオン!迎えに来て!」



「姫さん!!」


ドアの前に居たジャンセンが、部屋から漏れる僅かな気配を察知し、ドアを破るように急ぎ中に入って来る。


「…しくじった!窓の外か!」


窓から頭を出し、辺りを窺う。

ディアーナの姿は既に部屋には無く、窓の外に転移魔法の魔力の残滓だけがあった。


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