52# 兄妹
ディアーナは夢を見ている。
見た事の無い風景、聞いた事の無い喧騒。
でも、どこか懐かしい。
そして、見た事も聞いた事も無い筈の物を知っている自分が居る。
ランドセルを背負った少年が走って来る。
その後ろを、同じくランドセルを背負った少女が追い掛けて来る。全速力で。
「待って、お兄ちゃん」
「着いてくるなよ!」
微笑ましく思いながら、ディアーナは幼い兄妹のやり取りを、第三者の目線で見ている。
「一人で修行、ズルい!あたしも連れてって!」
妹は兄に跳び蹴りを食らわす。
「修行じゃねーし!連れて行けないから!」
兄はランドセルを腕にはめ、盾のように妹の蹴りをガードする。
ズザザザッ…
砂埃をあげ、対峙する二人。
「ふふっやるわね!お兄ちゃん!どうしても連れていかないとゆーなら、あたしにも考えがあるわ!」
いや、そんな考え多分何も無かったな。
あれは私だ。何となくだが覚えている。
何か、どこかで覚えたソレっぽいセリフを言って見たかっただけだ。
とりあえず、微笑ましいと感じたのは大きな間違いだった。
「ど、どーしても行きたいって言うなら、※※※※が、将来、俺のお嫁さんになってくれるなら、その内連れてってやるよ」
立ち止まって照れたように顔を赤らめ、どさくさに紛れて、言ってやったぞみたいな表情の兄に対し、妹の表情が無になる。
「いや、兄妹だからムリ。」
「だよな!!お前、急に冷静になんなよ!」
心なしか涙目の兄に、思わず同情するディアーナ。
━━━━何て不憫!━━━━
「あたし、将来は仮◯ライダーになるので!」
「何だソレ!」
「あはは!お兄ちゃんがあたしにナイショで行ってるトコ、あたしも行けるようになったらお嫁さんになってもいーかも」
「……本当に?」
少年の顔が、大人びた憂いを帯びた男の顔になる。
「ほんと~だよー」
幼い妹は、その表情の違いに気付いてない。
第三者の目線でいるディアーナは気付いてしまった。
━━━何て、切ない顔をしていたのよ…お兄ちゃん━━━




