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44# 愛するがゆえに

崩落から免れ、脱出したレオンハルトとジャンセンは暫く完全に塞がった鍾乳洞への入り口を見ていたが、やがてジャンセンが踵を返した。


「一足先に帰ります」

咄嗟に向かい側の壁に向けレオンハルトの足が延び、ジャンセンの行き先を塞ぐ。


「どこ行くんだよ、色男。俺の相手もしてくれよ。」

「ならず者ですか?あなたは…少し位は感謝してくれませんかね?命の恩人に。」


至近距離で睨み合う。翡翠の瞳にも、漆黒の瞳にも、焔が揺らぐ。

「お前が、ただの人間だったら俺もここまで神経質にはならねぇよ。お前、何者だ?」


「…態度悪いですね…神の息子のくせに……。何者か…ですか…私は、あなたと同じような者、と言えば分かります?」


レオンハルトは驚愕の表情を見せた。

長く生きて来た中で出会った事が無かったからだ。

自分と同じく、神の手によって造られた者に。


「私を、ここに寄越した方は、レオンハルト様に対してかなりご立腹でらして……だって、そうでしょう?あなた、死ねないじゃないですか」


レオンハルトは、創造主によってこの世に生み出されてから、永い永い時を修復人として生きて来た。


「あなたが、どんなポンコツになっても修理しながら大事に大事に使おうかと思っていたのに、修理もままならない」


人間ではない、レオンハルトは治癒魔法や治療を一切受け付けない。

傷付いても壊れかけても、痛みや苦痛は蓄積されていくのに治す術が━━━たった一つしかない。


「だったら新しいのを作って、修理も出来ない前のは使い捨てでもいいのでは?」


「やめろ!!!言うな!!!」

叫ぶようにレオンハルトが声をあげる。


「修理?修理だと!?俺の傷付いた身体を癒せるのが、唯一ディアーナと身体を重ねる事だけだって、分かってて言ってんのか!?しかも、身体だけじゃない、心も繋がってないと意味が無いんだぞ!」


我慢してきた、ずっと。叫びたかった、胸の内を吐露したかった。


「愛する女を、傷付けてでも、無理矢理抱けってのか!」


「…知りませんよ、そんなこと」

冷たい漆黒の瞳はレオンハルトからそらされ、ジャンセンはフワリと飛び上がる。


「私は遠慮しませんよ。彼女は私にとっても大切な人です。…聖女でなくても構わない位にね。奪われたくなかったら、足掻いてみせて下さい。」


レオンハルトは、死刑宣告を受けたような気がした。

崖の上に消えたジャンセンの居た方を、ずっと見ていた。


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