36# 影と募る不安【レオンハルト目線】
商業都市シャンクを離れてから、ディアーナの様子がおかしい。
いや、理由は分かっている。
影という存在がディアーナにくっついているからだ。
シャンクを出てからディアーナは、一人の時間を欲するようになった。
元々が、鍛練したいだの強くなりたいだの言っていたので、まぁ…何となく分かっていた。
今さらながら…
なぜ、ディアーナが俺に「護身の術を教えて下さらない?」と言って来た時に、寝技なんか教えようとしてしまったのか…。
そのせいでディアーナが俺を警戒して近付かなくなってしまった。
そこで現れたのが影だ。
王子サマや、令嬢ディアーナを影から護衛するのは当然だろうが、もう姿見せてるし影ではないな!
それにしてもくっつき過ぎだろ!と、最初は子供じみた嫉妬をしたのだが……。
今、心がざわついているのは、そんな単純な理由ではない。
影 が、読めない。その存在の在り処が分からない。
あまりに気配を殺すのが上手いので、反射的に「奴」を探ってしまった。
人の技ではない、神の域の業で。
力を行使した瞬間、目が合った。
奴は目を細め、涼しい顔で微笑を浮かべた。
何者なのか、何であるのか、何処から来たのか、全て読めない。
人の身で出来る隠蔽ではない。
ゆえに、おそらく人間ではない。
長い長い時を生きて来て、初めてまみえる異色の存在。
それが、ディアーナの傍らに居る。
目的が分からない。
俺なのか、ディアーナなのか……。
それが、とてつもなく恐ろしい。




