33# 鍛練の後
「ただいま…あら、何かございまして?」
ジャンセンとの第一回秘密特訓を終わらせ夜営地に戻って来たが、
焚き火を挟んで背を向ける二人の男に首を傾げる。
「いや、もう何でもないから大丈夫」
大丈夫では無い顔色で言うスティーヴンに、絶対目を合わせようとしないレオンハルト。
何か知らんがめんどくさい。無視しよう。
「何でもないのですわね、では、わたくし先に休ませていただきますわ」
焚き火の前に布を敷いて枕がわりのバッグを置き、身体に掛ける布を用意する。
「……なぁ、ディアーナ……誰かと会っていた?」
不意に尋ねるレオンハルトに驚き、顔を上げたディアーナの視線が揺れる。
隠し事してますとばかりに。
「誰とも会ってませんわ。こんな岩と林しかない所に誰が居るとおっしゃるの?」
「ふぅん…なら、いいんだけど」
レオンハルトから、それ以上の追求は無かった事に安堵したディアーナは、焚き火の前に自分の寝床を作るとさっさと眠りに入った。
二人の会話を聞いていたスティーヴンは、焚き火に背を向けて眠りについたディアーナの背を悲しげに見るレオンハルトを見てしまった。
━━━…まさかジャンセン……か?━━━
岩と林しかない、この場には誰も居ない。我々四人以外は…。




