30# ラリアット炸裂
ディアーナは憤慨しながら岩場から離れ、林の中に消えて行った。
ディアーナからラリアットとかいう技を受けたレオンハルトは、喉をさすりながら馬鹿みたいに笑っており、スティーヴンは毎度の事だと無の表情になっている。
ディアーナがその場から離れ、焚き火の前に男二人が残される。無言の時間が流れる。
無言の時間が流れる。かなり流れる。
やがて、沈黙に耐えられなくなったスティーヴンが口を開いた。
「時にレオンハルト殿…聞きたい事があるのだが…」
「何だよ」
ラリアットのダメージを受け、痛むであろう喉を愛しそうに撫でながら、ぶっきらぼうに答えるレオンハルト。
━━━与えられたものなら苦痛さえ愛しいとか?……いかん、ディアーナ嬢が変態呼ばわりするから、レオンハルト殿の行動が本当に変態にしか見えない……かつて私が恋していたオフィーリアの元がコレか?━━━
邪念を払拭するように首を振って、レオンハルトに尋ねる。
「前々から聞きたいと思っていたのだが、私との逢瀬の時の、あのオフィーリアの言葉は…レオンハルト殿が芝居をしていたのか?」
「え…それ、聞く?」
レオンハルトの顔が曇る。が、本人が知りたいならいいか、位の軽い口調で話し出した。
「俺は、まわりには俺の姿がオフィーリアに見えるように魔法使っていたし、人が居る場所で王子サマと会ってる時は、なるべく女っぽい台詞言ったりしていたけどな…………………」
言いよどむレオンハルトは、長い沈黙を生む。だが、答えを待っているスティーヴンの姿が、お預けを食らっている犬のようで……
根負けしたレオンハルトは頭をガシガシと掻きながら、話を続ける。
「王子サマと二人きりの時は、王子サマに魔法かけていたからな…なので、その時に王子サマが聞いたオフィーリアの言葉は、すべて王子サマの理想であり妄想でした!」
「わ、私の妄想?」
「そ、自分に都合の良い幻覚が見える的な…?俺は無言で突っ立っていただけ。」
「…………………」
「『これ以上、私を君に溺れさせる気なのか』とか暑苦しい顔で言われた時は、俺、妄想の中で何を言わされたんだと思ったし、さすがに罪悪感あったけど。」
「…………………」
スティーヴンは微動だにしない。石化状態である。
「え~と…………ドンマイ!」
「どこの国の言葉ですかソレ!馬鹿にされた気しかしないんですが!」
いい笑顔のレオンハルトに涙目で噛み付く勢いのスティーヴン。
━━━そもそも、なぜ女の振りをしてまで私に近付いた!?からかう為だけか?アホか!━━━━




