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生前やっていたゲームの悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。私、前世でナニかやらかしました?  作者: DAKUNちょめ
金の髪に翡翠の瞳。天使の様な乙女ゲーム主人公オフィーリア

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ディアルを恐れる海賊団の頭領と三人の側近。

テオドール王国は大陸の端に位置する国で、海に面した土地も多い。

古くから海産に関する事業はあったものの、元々が閉鎖的な国であったがゆえに海の向こうを警戒し、航路を開拓するのが遅かった。

その為に海を越えての外交を始めた国としてはまだまだ日が浅い。


もっと港湾事業等に力を注ぐべきだとの意見を持ったロザリンドの曾祖父にあたる先々代のテイラー公爵の影響を受け、彼を教育係として側に仕えさせていた第一王子のデュランは、この国の海を玄関とした国交を増やしたいと幼い頃から言い続けて来た。


デュランは幼い頃から城を脱け出し、身分を隠して港町を歩き回っていた。

若者になった頃には港町には見知らぬ者がほとんど居ない程に町に馴染んでおり、柄の悪い者達とも交流して町や航行等々の改善すべき点や要望などの情報を集め、海賊が出る事を知った。


安全な航海をする為には海上の警備体制を整える必要があると感じたデュランは側近である王国騎士達を連れて襲われる可能性の高い船に乗り込み、現れた海賊を力で捩じ伏せ、話し合いに応じた者達をまとめあげて海上の警備を任せる事に成功した。


任せるだけのつもりだったのだが、ハワードによって城を追われる事になった王子は王族であったデュランの名を棄てドラゴンと名乗る様になると、大きなな組織となった海賊団に頭領として迎え入れられてしまった。


「行く当て無いならウチに来たらいーじゃん、俺らまとめあげたん、あんただし。代わりにあんた、頭領になってくれよ。金持ちとの警備の交渉めんどい。」


「は?マジか?」的なノリで。



大海賊団のアジトは、テオドール王国から沖合いに向け半日程船を走らせた場所に浮かぶ漁村が多くある島である。


航路を開拓する上で、海流が複雑な上に岩礁が多く、航路としては避けたい場所にある為、海に関してまだまだ途上状態のテオドール王国ではあまり土地としての認識はされていない。


海賊達は操舵の腕も良く、難なく島に出入り出来るので不便は無い様だが、慣れた者でないとそう簡単には島に入れない。

王国から姿を消し生死不明とされていたデュランは、結果としてこの島に匿われていた。


障害となり得るものは排除したいと考えるハワードによって隷属状態にある者がその命を狙いデュランを探したが、誰もその島を拠点とし海賊の頭領となっている彼を見つけることは出来なかった。







一つの領程の規模を持つこの島の、海に面した高台に建ったログハウスの様な造りの大きな邸に海賊団頭領ドラゴンと側近の三人が住んでいる。

四人はテーブルを囲み、今まで目を逸らしていたデュランの今後と向き合う為の話を始めた。


「ディアル……とか言ったな……あの嬢ちゃん、いとも簡単に俺を見付けたな。たった一人で海賊を名乗るとか、有り得ない方法で。」


「行方不明の第一王子を探していたワケではないそうですよ。ロザリンド様が恋心を抱いた相手が誰か知りたかったのと、海賊王ドラゴンとやらに興味を持っただけみたいですよ。」


デュランの言葉にディアルからスリーと呼ばれた、少年から大人になったばかりの様な若い騎士が答える。


「だから、何だ…その海賊王ってのは。しかも俺を倒して自分が海賊王になるとか言っていたじゃないか。意味が分からないし、頭から床に落とされて腹立たしいんだが。」


「殿下、言葉の割には顔がにやついております。」


ディアルにワンと呼ばれた初老の騎士が含み笑いを浮かべながら言うと、側近三人の視線がデュランに集中する。

顔を赤くして、口元が緩むデュランは口元を手で覆って隠した。


「ロザリンド様が今も殿下を想っていると知って嬉しいのでしょう。ですが、あの少年が言った事が全て本当ならば…ロザリンド様が危険です。ハワード殿下は堪えがきかない方です。望む結果を早く手にしたいと考えたら、婚約破棄を言い渡す前にロザリンド様が居なくなればと思うかも知れません。」


ワンが顎髭に手を当てながら渋い顔をする。

その顔を見たデュランもまた、不安に眉を寄せた。


「ロザリンドを守りたい…だが、今の俺にはそれをする力が無い……国に戻れば俺は捕らえられてしまう。」


「殿下は、ロザリンド様を妻として迎え入れる心構えをするだけで良いのです。公爵令嬢の地位を捨て、平民の女性となったロザリンド様を、大海賊団の頭領夫人として迎え入れれば。………そうさせろと、あの少女が私に言いました。」


デュランと同じ年齢位の騎士が僅かに微笑みながら言った。

ディアルにツーと呼ばれた彼は、幼なじみと言える程に長くデュランの側仕えをしていた騎士でもある。


「殿下をヘタレのまま放置したら私に、じゃあまんすぅぷれっくすをお見舞いすると、去り際に恐ろしい宣言をしていきましたので、殿下にはその、ヘタレとかいう状態を脱却して貰わないと……俺の脳天がハゲる……。」


微笑んだ顔を横に背けてぶつぶつと呟くツーに、ワンとスリーの二人が震える。

あの少女はやる。やると言ったら、やる。

下手したらツーだけでなく、俺達全員にカマすかも知れない。


殿下がされていた、あのワケの分からない背後から抱き締められた状態で背面に逆さに投げられ、床に脳天を打ち付けられた上に股が恥ずかしい位パッカリ開く屈辱的な技を。


「ふむ…我々が動く事が出来ないとなると…ロザリンド様の御身はどうやって御守りすれば……」


深く考え込む際にはワンは顎髭に手を当てる。

渋い顔をして考えを巡らせている様だ。


「気にしなくても、大丈夫と言ってましたよ?『こっちで何とかするけど、覚悟だけはしとけ!色々と!』って。」


深く考えるのが苦手なスリーが、ディアルに言われた事をそのまま伝える。

「ええー………?色々と?」

そんな顔をするデュランとワンを見て、ツーが微笑んだ。


「信じましょう、あの少女を。どうやって前に進めば良いか分からないでいた我々の背中を渇を入れる様に後押ししてくれた…あの少女が望む様にデュラン様がロザリンド様と結ばれるならば、私はどんな事でも致します。…………ええ、いざとなれば俺は喜んで殿下をぶん殴ろう……。」


「お前、途中から言ってる事も表情も怖いんだけど!!!お前って昔っからそう!俺を主君だと思ってないよな!」


デュランがツーを指差しながら文句を言えば、それを見てワンとスリーが笑う。


笑い、笑われつつ、四人の胸にはロザリンドの無事を願う以外にも不安が多々ある。

それぞれがそれを口に出す事が出来ぬまま、今はロザリンドが

今もデュランを好きだという事実を喜ぶに留めた。




ディアルが学園から姿を消した翌々日、暫く自室にこもっていたロザリンドは学園に通う様になった。


体調を崩したから静養していたと言うロザリンドの回りに取り巻きの女生徒が群がる。


「心配しておりましたわ!」「お加減はいかがですの!?」「ロザリンド様がおいでにならない学園は、太陽が翳ったかの様でしたわ!」


ロザリンドは満面の笑顔を皆に向ける。

顔に出してはいけないと分かっていても、今のロザリンドにはデュランの無事を確認出来ただけでもう、舞い上がる程に嬉しい。


「もう、大丈夫ですわ!!わたくし、とても元気になりましてよ!!!」


何か嬉しい事があったのか?と誰の目にも分かる程に、輝く笑顔で喜びをアピールするロザリンドの前に、ふらりと現れたフローラが、ロザリンドの足元でつまずいて床にペタンと座り込んだ。

足元に座るフローラを見下ろしたロザリンドが、涙目で見上げるフローラと目が合う。


「ロザリンド様…ひどい……いきなり足を……私をつまずかせようとして………いきなり膝カックンするなんて……」


━━膝カックン!?ナニそれ!!

この、ワケのわからなさ、さすが偽フローラだわ!!

ディアルと同類の変態!!!!


足元にペタンと座り込んだまま、目を潤ませるオフィーリアを見てロザリンドは我に返った。

自身はフローラを苛める、軽蔑されるような女を演じておらねばならぬ事と、デュランの無事を喜びはしたがフローラの安否がいまだ不明である事。


「……あら、フローラさん……余りにも存在感が無くて気付きませんでしたわ。ごめんあそばせ。皆様、教室に参りましょう。」


ロザリンドはピンク色の巻き髪を手の甲でフワリと掬い、取り巻き達をぞろぞろ従えて教室に向かって行った。

その背を見ながらオフィーリアが「やれやれ」と立ち上がり、辺りをぐるりと見回す。


「お目々がお花畑になってる奴は……今の所見当たらないか。まぁ、警戒だけは必要だわな。ハワード親衛隊が何をしでかすか分かんねぇし。」



夕方になり、寮に戻ったロザリンドは制服を脱いで部屋着になると、ベッドに腰掛けた。


「久しぶりに学園に出て、疲れたわ。変態フローラが現れて、わたくしが意地の悪い女の役を続けるよう言われたわよ。」


ロザリンドがはぁあと、大きなため息をつきながら1日の報告をすれば、侍女のジージョが苦笑する。


「お嬢様は感情を隠すのが下手ですからね。お嬢様は今まで通りのお嬢様を演じておらねばなりません。何かがあったのだと、回りに気付かれてはなりませんもの……。」


「浮かれんな、馬鹿と書いたメモを渡されたわよ。膝カックンの絵も描いてあったわ。あの状態で出来るわけないし!するわけ無いし!」


膝カックン?ジージョが不思議そうな顔をする。


「受かれんな……ですか……先ほど寮の庭先で、ランドル殿下の従者の方から伝言がありました…。ハワード殿下が人を使い、デュラン殿下の情報を得ようとしていると…。」


この会話も聞かれているかも知れない。

そう思いロザリンドとジージョは口をつぐんだ。


二人はランドルから、ハワードがランドルに命を狙われているとディアルとオフィーリアに言った事を聞いていた。


今のハワードにとって、ランドルは王太子候補から排除したい人物だ。

だが、デュランも無事であるとなったなら無実が証明される前に排除してしまいたいだろうと。


ハワードは常に麗しの被害者を演じ、観客を魅了して自身の信奉者を作ってゆく。

ランドルがハワードの命を狙っているという作り話は、まだディアル達にしかしてないかも知れない。

だが舞台が整えば幕が上がり、ハワードはランドルを排除する為に、彼を悪人に仕立てるのだろう。

デュランにした様に。


「……王太子の命を狙ったなんて言われたら……ランドル殿下はどうなるの?偽物だとしても証拠まで揃えられたら……デュラン様の様に真偽不明のまま姿を消す前に捕らえられたら……。」


「……犯罪者として処刑……となる可能性もございます。」


ジージョの返答にロザリンドがヒュッと息を飲む。

ハワードが、デュランやランドルを何処まで貶めたいのかが分からない。

ロザリンドは改めて、まだ浮かれる様な場合ではない事を知った。

言葉を無くし、部屋着の胸の辺りをキュッと掴む。


コンコン


不意に部屋のドアをノックする音が響く。

ロザリンドとジージョは顔を合わせ、ロザリンドが窓の外に目を向ける。

話し込んでいる間に外はすっかり暗くなっており、約束もなく人がいきなり訪問するような時間ではなくなっていた。


「もう夜よ…?こんな時間に一体……」


「お嬢様は離れて下がっていて下さい。」


ジージョが警戒しながらドアの側に行き、そっとドアを開いた。



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