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生前やっていたゲームの悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。私、前世でナニかやらかしました?  作者: DAKUNちょめ
金の髪に翡翠の瞳。天使の様な乙女ゲーム主人公オフィーリア

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学園を脱走する悪役令嬢。

地球の日本という世界に居た頃と同じように、この世界にも一週間がある。


日曜日に当たる明日は学園も休校となり、学生達はそれぞれが自由な時間を過ごすのだが、学園の敷地を出る事は許されていない。


前もって学園の敷地を出る旨の申請がしてあり、家族が同伴するのであればやっと許可が出る。


「わたくし明日は自室にて、部屋に香を焚いて髪や肌に高価な香油を使い、この美しい身体を更に磨くつもりですの!邪魔はなさらないで欲しいわ!!」


取り巻き達に、明日はご一緒に過ごして頂けませんかと誘われたロザリンドは、もっともらしい予定を並べ立て、誘いを断った。そして、一人ポツンて席につくフローラの机に手を置く。


「ねぇフローラさん、共に過ごすお友達も居ない貴女は、一人寂しく自室にこもって1日を過ごす事をお勧めするわ!部屋から出て来ないでちょうだい。貴女のお顔を見るだけでわたくし、不愉快になりますの!!皆様も、こんな方の事は無視なさっていて!貴重な自由時間をこんな方を気にする為に使うなんて、馬鹿馬鹿しいですもの!」


ロザリンドのフローラを責める台詞に取り巻き達が笑う。


フローラのふりをしているオフィーリアは、少し悩んだが、そこは落ち込むような仕草をして俯いた。


悩んだ理由が、落ち込むように俯く態度を取るか、「あああ!?こっちこそ、テメェのツラなんざ拝みたくねぇわ!!」と言ったろかの二択で悩んだのだが……


学園に来た早々オフィーリアはフローラとして暴れ過ぎて、今は回りに「フローラが変だ」という印象を与えてしまった。

それが「フローラではなく別人では?」と思われてしまっては困る。


やられっぱなしは性に合わないし、不本意ではあるが…多少は大人しい少女を演じようとオフィーリアは思った。

だが、本物のフローラを知らないオフィーリアには、それが正解なのかも疑問に思っている。





「ロザリンド、何だか無意味な説明が過ぎて芸人の前ふりみたいだな…。自分の予定をどんだけアピールしてんだよ。」


教室の端で机に足を乗せた行儀の悪い態度のディアルが、ロザリンドと、その取り巻き達に笑われるフローラを見ながらボソッと呟く。

ロザリンドの取り巻き達はロザリンドの言葉を鵜呑みにしている様だが、ディアル的には「押すな押すな」は実は「押せよ!」のサインだろ?的に勘繰ってしまう。


実は部屋にはじっとしていたりしませんのよ!覗いて見てご覧あそばせ!?的に聞こえる。

遠巻きにフローラとロザリンドを見ているディアルの隣の席に座るワルトが小声で話しかけてきた。


「親分、今の俺の立場はですね、ロザリンド様の命令で親分に従っているふりをしながら、ディアルって男の正体を探るよう言われている、ロザリンド様には逆らわない同級生なんです。」


「……ワルト、それ俺に言っちゃっていいのかよ?俺に従っているふりしなきゃなんだろ?」


「逆なんですよね。俺、今はロザリンド様の命令に従ってるふりしてますけど、本当には親分に従ってます。親分の事の方が好きですんで。」


ワルトの言う「好き」発言に、妙な居心地の悪さを感じるものの、リスペクトされてると解釈して…なら、まぁ有り難く思っておこうとディアルは無理矢理自身を納得させる。


「ロザリンド様からの秘密の命令で、学園が休校の間にハワード殿下がフローラと逢うようなら引き離すよう邪魔をしろと、あるいは殿下が親分と逢うようなら、話の内容を報告するようにと言われてます。」


「………意味がわからんが……。」


ハワードとフローラを逢わせたくないのは分かる。ハワードを好きでないとしても、一応は婚約者と一応は恋敵だ。

くっつけたくないもんな…。

だが、俺がハワードに逢うのも警戒?

と、言うより正体不明の俺を警戒していて、婚約者に近付けたくないって事かな?



地球で言う所の、土曜日から日曜日にかけての深夜。


ディアルはオフィーリアと共に女子寮の屋根に居た。


「ディアーナ様は、ロザリンドを調べるのですわね。では、私はハワードとランドルを調べてみますわ。」


「…………うん、そうして。」


オフィーリアに腕を組まれたディアルは、居心地が悪くて口数が少ない。

華奢で可愛い少女に腕を組まれているのに、何だ、このガッシリしたホールド感。

感触が筋肉質だわ。

目に入る情報と実際の感触が違い過ぎて、脳がエラー起こしとるわ。




屋根から見下ろして見張っていたロザリンドの部屋の窓が開き、侍女が手引きをするように動いてロザリンドらしき人物が寮の窓から縄ばしごを使って地面に降りた。


そして、手引きをした侍女とは別の侍女を従えて学園の敷地を囲う壁に走って向かう。


「オフィーリア私、行ってくるわね。」


ディアルはオフィーリアに手を振り、女子寮の屋根からフワリと飛び降りると、ロザリンドの後を追った。

かつては同じように悪役令嬢という立場だった自分とはまた違うタイプの悪役令嬢ロザリンド。

では、どんなタイプだろうと答え探しをする感じにディアルはワクワクする。


「ただの意地悪なだけの悪役令嬢じゃないんだろ?ロザリンド!じゃあ、どんな令嬢?ただのメギツネか?メダヌキか?ふふふ…楽しみだなぁ!」


今はメスゴリラと言われるディアーナが呟く。


学園という閉ざされた社会と、その外界を隔てる壁に辿り着いたロザリンドと侍女は、勝手口の様な小さな扉の前に来ると扉を叩いて合図をし、外側から開けられた扉から、学園の外に出て行った。


街中に創られた学園の外は、すでに街だ。

ロザリンドは扉を開き外へと手引きをしてくれた者と、寮から連れて来た侍女との三人で小さな宿に入った。


「随分と用意周到ね…女性用の庶民服でも地味目の衣服を着て…ただ遊びたくて街に出たってワケではなさげだし。……今夜はここに泊まり明日の朝、動くって事かしら?」


宿の屋根に座ってワルトから渡されたサンドイッチを頬張ったディアルは、食べ終えて汚れた指をチュプっと吸う様に舐め、屋根に寝転ぶ。

ディアーナはディアルのまま、屋根の上で夜を明かした。



朝になり、早朝から人が動き始めて街が騒がしくなる。

ディアルは、宿から出て行く人物を確認しながらロザリンドの姿を探した。


「…………まさか、あれか。」


ロザリンドと、連れの侍女らしき二人が宿から出て来た。

昨夜は二人とも地味目な、女性用の庶民服を着ていたのだが。


「ハハハ、まさか仲間が増えるとはな!男装流行ってんの?」


二人は、庶民の男性の格好をしていた。

ロザリンドは綺麗に巻かれたロールをほどいた髪を無造作に三つ編みにし、シャツにベストを身に付けてパンツにブーツ姿。

使えるかは疑問だが、腰に短剣を装備している。


侍女は元々髪が長くないのか、昨夜は綺麗なおかっぱスタイルだった髪型が無造作にアチコチ跳ねさせてある。

服装はロザリンドと同じような感じで、主従関係には見えない。同世代の友人同士といった感じだ。


二人は、港町の方に向かう様だ。

ディアルは二人から付かず離れずな位置関係で後をつけていく。

どうやら、道すがら街の人達に何かを聞いて回っている様子だ。


「……あ、馬鹿。なんで、そんな大金持ってんの見せちまうんだよ…。」


ロザリンド達が話を聞いて回った相手は、柄の悪い男達が多かった。

誰の情報を手に入れたいのか知らないが、そんな輩を相手にして大金を持っているのを見せたら……


「ほらな?囲まれたー……。」





「坊主、有り金全部よこしな!そうすりゃ、坊主の聞きたいドランとかって奴の情報を教えてやるよ!」


「ドランじゃない!!デュランだ!!知らないクセに騙したな!!」


ロザリンドと侍女が互いを庇いながら壁に追いやられ、その回りを柄の悪い男達が六人程で取り囲む。

男達は脅す為にか、武器に手を掛けている者も居る。


「どっちでもいーだろ?痛い目見たくなきゃ大人しく金を寄越せ!!」


「まだ、金目のもんを隠してるかも知れねぇ!身ぐるみ剥いじまおうぜ!かかれ!!」


男達が一斉にロザリンドと侍女に向かい手を伸ばす。


「や、やめて…!だ、誰か!!」


その腕が助けを求めるロザリンドに到達する前に、男の身体は後ろ襟を掴まれ、後ろ側に引っ張り倒された。


「だ、誰だ!!」


尻もちを付いた男と、残り五人の男達が一斉に背後を見る。


藍色の長い髪を高い位置で縛った制服姿の少年は、誰だと尋ねられ自身を指差す。


「俺?俺は………俺。」


誰だ?の答えになってない自己紹介をするディアル。


「オッサンが大勢で若いニィちゃん達を脅すとか、やめろよ。みっともないじゃん?」


ディアルはロザリンド達の側に行くと、壁に追いやられて壁に同化する勢いで擦りつけられたロザリンドと侍女の背中の土埃を払ってやる。


「……ディアル……?」「うん、俺。……あんま、無茶すんなよ。」


男達に背を向けたディアルは、背後から男の一人に両腕を掴まれた。それを合図に、他の男達がディアルが抵抗出来ないように取り囲む。


「隙を見せやがって!!阿呆だな!お前は!!お前から身ぐるみ剥いでやるわ!!」


「ガキのクセに大人に説教垂れやがって!お前みたいなガキには教育が必要だな!!」


背後から両脇に腕を入れられて両腕を拘束されたディアルは、間を詰めた状態で男達に囲まれてしまった。


「ディアル!!だ、誰か…!助け…!」ロザリンドが思わず名を叫んだ。



「…………お前だぁ?…誰にモノ言ってんだ、コラ……俺様をお前呼ばわりすんのか?何様だテメェ。」


拘束されたディアルの金色の瞳が焔を灯し、ユラリと妖しく光る。

腕を拘束されても、ディアーナの指先に肌、衣服、髪が少しでも触れたならばディアーナはそれを掴む。つねる。無遠慮に。

それだけで充分隙が出来る。


足の可動域に相手の身体の一部があれば、遠慮無く踏むし、遠慮無く蹴りを入れる。


後はもう、自分がスッキリするまで名前の無い攻撃が繰り出される。


「おら!ネリチャギ!!ブレーンバスター!それからえーと…とりあえず殴る!蹴る!潰す!あはははは!!」


技の名前と攻撃は全く一致していない。

とにかく一方的なディアーナによる蹂躙が始まり、ものの数分で男達は地面とキスをする羽目になっていた。


「あはははは!!くたばったかぁあ!……………………さぁ君たち、怪我はなかったかい?」


テンション駄々上がりしたディアルが、壁を背にしてドン引きしているロザリンドと侍女と目が合ってしまった。


ディアルは少し冷静さを取り戻し、キリッと爽やかに微笑んで二人を気遣う台詞なんかを吐いてみる。

ロザリンドは驚きの余りか、口をパクパクさせて声にならない声で何かを訴えている。


「…?何だ?お礼なら別にいらないよ?俺が勝手にした事だから………」


「あんた……あんた!!フローラを、どこにやったのよ!!!!」


…………はぁあ!!??何だ、その質問!!!



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