14# 商業都市シャンク
王都を離れて数週間、ディアーナ達はシャンクという商業都市に来ていた。
王都ほどの規模は無くとも都市と呼ばれるだけあり、久方ぶりに見る人の多さに目を輝かせる。
田舎ばかり見て来たから、人混みが懐かしい!
「本当に武器を買うつもりなのか?ディアーナ。」
納得いかない、と顔に書いてあるレオンハルトとスティーヴンに何度も頷く。
「当然ですわ、わたくし魔法も剣も使えませんし、ハッキリと申し上げて足手まといですもの!お二人が戦っている間位は、自分で自分の身を守りたいのです。」
そう、聖女になり得るからと言って今は聖女でも何でもない。
むしろ箱入り令嬢で刃物なんて、食事の際のナイフ以外持った事すらない。
だが、現代日本人だった私が心の中で声をあげるのだ!
「万一に備えて、せめて暗器位は隠し持っとこうぜ!!」
心の声を口に出して言ってしまった。
レオンハルトは俯き加減に額を押さえて笑いを堪えている。
スティーヴンは目を大きく開いて驚きの表情をしているが…。
「ディアーナ嬢は…何か…変わったよな…?いや、かなり前から思ってはいたけど…」
「は、はしたなくて申し訳ございません!」
ハッと令嬢ディアーナに戻ると、恥ずかしさに顔を赤くする。
━━━ヤバいヤバい、素の自分出しちゃった!殿下に素がバレ……ん?でも、もう侯爵令嬢には戻れないんだし……殿下は婚約者でもないし……別に良いかも?━━━
「はしたなくて申し訳ございませんが、これがわたくしなのですわ。」
開き直る事にしたディアーナは、はにかんだ笑みを零す。
「ああ、そ、そうか…それが、そなたの素顔なのだな…。」
スティーヴンの顔が僅かに桜色に染まり、口元を隠すようにして顔を背けるとポツリと呟く。
「…悪くない…」
レオンハルトの顔が青く染まった後に赤く染まり、その口から凍る吐息が吐き出されるのを
ディアーナは見なかった事にした。




