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番外編━━乙女ゲームってこんなんだっけ?最終話、悪魔との契約みたいです。

どうしましょう…

いえ、もう、どうしようも無いみたいですが…


わたしは今、お利口さんなお馬さんの上で揺られています。

わたしの実家にサイモンが迎えに来て…来なくていいと言ったのに迎えに来て…。


もう、馬に乗せられた後は当然の権利を主張するかのように、わたしはサイモンに後ろから抱き締められた状態で…


首やら、うなじやら、耳たぶやら、鼻先でくすぐられたり、キスされたり。


何や、この状況。

めっちゃ人の目があるし。晒しもんじゃないか。

羞恥プレイが過ぎるわ!!


「あの……サイモン様…いくら何でも、これはあんまりだと…。」


わたしの醜態を万民に晒すんじゃない!

お利口さんなお馬さんが街中を暴走する位にマジで暴れっぞ!!

そんな心の声をオーラに乗せ、背後のサイモンに向け放つ。



「……それもそうだな。」


サイモンの返事に、心で頷く。

当たり前だ!!そういう事を、人に見られながらするとか!

あり得んわ!!この変人め!


「馬上では、この先は無理があるしな……。」


は?この先?…この先の道?町?街……この先の行為か!!

無理に決まっとるだろうが!


「なら、一旦宿に…いや、でも…宿に入ると婚姻前なのにメグミンの全てを奪ってしまいそうで…」


「何で宿に入る必要があるんですか!!走らせんか!さっさと馬を走らせて城に着け!!二時間かからんだろーが!!」


頭ん中、どピンク色か!サイモン!!

わたしの推しだった、陰のある少しネガティブで、ヤンデレっぽさもあるけど、クール系なサイモンどこ行った!!


サイモンの顔が見えないもので、思わず素で訴えてしまったわたしにサイモンは喉の奥で声を殺して笑い、背後から抱き締める。

わたしの態度と、わたしの言葉が面白いらしくてわざとわたしを困らせる!

からかって楽しんでやがる!こいつ!

……そして、抱き締められるのにはビミョーに慣れてしまった自分が怖い。


「冗談だ、メグミンの全てを俺の物にするのは、婚姻後の楽しみに取っておく。…その時は覚悟しといてくれ。」


マジで?それはそれで…しんどい…。





馬が王城に着くと、わたしは馬から下ろされ…久しぶりに地面に着いた足には力が入らず、シルベルト邸に着いた時のように膝から崩れ……


てたまるか!!


膝から崩れたら、またお姫様抱っこされてしまう!

王城で、職場で、大勢が見てる前で!それは無い!


わたしは、四股を踏むように大股を開き、膝に手を置いて崩れるのを耐えた。


四股を踏むわたしと、それを見て笑いを堪えるサイモンの姿を城に来ている令嬢達が見ている。

羨望…いや、嫉妬の眼差しが突き刺さる。


サイモンは、ファンが多い。

ファンも多いが、わたしという婚約者が居るのを知っていて尚、わたしからサイモンを奪おうと狙う令嬢も多い。


後のヒールナー伯爵という肩書きと、王城勤めでスティーヴン王太子の護衛という立場は、サイモンを奪いたい令嬢達の親にとっても魅力的なのだろう。


サイモンと婚約破棄をしたいと散々言ってきたわたしだけど、そんな輩にサイモンをくれてやる気は無い!!


「お帰り、サイモン。ミランダ嬢。」


王城の門をくぐってすぐ、ジャンセンさんが立っていた。

何だかニヤニヤしている。


わたしの魂を地球からコチラに拉致って転生させ、前世の記憶を持たせたまま、腐女子のわたしを推しとくっつけようとしている。

しかもエロい事をさせてエロい漫画を描けと言う。

超イケメンな王宮騎士のジャンセンさん。

こんなナリして神様だなんてふざけてやがるわ。

本当に神でもブッ殺したろかと思う。



わたしの同人誌もサイモンやレオンハルトさんに見せやがって。


「メグミン…サイモンは、どうです?」


ジャンセンさんが、スルリと滑るようにわたしの肩に手を置くとわたしの耳元に口を寄せ、甘い声音で囁く。


「ゲームではなく、現実であるこの世界のサイモンにはね…メグミンの描いたサイモンのキャラクター要素も混ぜてあるんですよ。…私、そういう事を出来ちゃうんです。創造主なんで。」


「……は?」


「貴女の理想でしょう?一途で愛に貪欲で…そして、かなりエロい。それが、貴女がいつも描いていたサイモンです。」


「…………………」


「師匠、ミランダは俺の女です。気安く触れないで頂きたい。」


言葉を失って棒立ちになったわたしの身体を、サイモンがジャンセンから引き離す。


「フフ…仲が良い事で…新刊が楽しみですねぇ、メグミン先生。」


ジャンセンから奪うようにサイモンに抱き締められた状態でわたしは我にかえり、素の状態で大きな声を上げた。


「ば、バッカじゃないの!!描くワケ無いじゃん!て、ゆーか、そんな事しないもん!わたし、ずっと独身でいるし!推しキャラのサイモンとそんな事したら、心臓止まるわ!!」


「独身?…俺のものにはならないと?…それは無理だと言ってるじゃないか……」


僅かに苛立ちを含んだサイモンの声がわたしの耳元に囁く。

わたしを抱き締める腕に力がこめられ、これは抱き締めると言うよりは拘束に近い。息が詰まりそう…苦しい…。


「俺は君を逃がさないと言ったろう?まだ逃げるつもりならば、このままヒールナー邸に連れて行く。そして、もう邸から出さない。」


ヤバイ!ヤバイ!ディアーナを誘拐したバッドEDサイモンが出る!それは危険だわ!人としてヤバイ!犯罪者っぽい!

お城で、そんな顔を見せちゃイカンでしょう!


「に、逃げたりしません!わ、わたしの心の準備期間さえ貰えたら、ちゃんと妻になりますわ!じゅ、十年位後に!!」


抱き締めるサイモンの顔を、恐る恐る見る。

あ、ダメなやつだ。


すっごい冷たい目で笑ってる…。


「ミランダ、今日このまま君を俺のものにする。婚姻するまで我慢するとか悠長な事を言ってる間に、君をさらう男が現れたら俺は耐えられない。」


サイモンは、わたしの太モモを持つようにして、わたしの身体を肩に担ぎ上げた。わたしは米俵か!


「ギャー!!あり得ん!そんなの駄目です!!は、半年待ってて下さいよ!半年待っててくれたら、花嫁衣装を着たわたしを好きに出来るじゃないですか!!」


その場を逃れる為とは言え、何と恐ろしい約束をしてしまったのだろう。


サイモンは担ぎ上げたわたしの身体を下ろし、正面から見詰め、皆の見てる前でキスをした。

王城の門の前でな!!


「約束だ、メグミン。俺のメグミン…。」


「はい…約束……悪魔との契約みたいですね。」


青白い顔で頷くわたしと対照的に、ジャンセンさんが凄く嬉しそうな顔をしている。

可愛い息子のサイモンが、愛する人を見付けて幸せになりつつあるから嬉しい。


って顔じゃないんだよな。


あれは賭けに勝ったからだ。

サイモンがわたしを手に入れる事にベットしたジャンセンさんが賭けに勝ち、逃げる事が出来なかったわたしが賭けに負けた…。


「エロ直行、夜の帳に聖なる契り2サイモン×メグミン発行決定ですね!」


嬉しそうに言って来るジャンセンさんに、力無く笑って答える。


「……ごっつぁんです……。」




半年後………


サイモン様……わたしは、この人の妻になりました。


ゲームではスティーヴン王子より人気のキャラでしたね。


地球の夜とばファンの皆様……羨ましいですか?

身が持ちませんよ……

執筆するネタは……たまっていくんですよ。


でも執筆する時間なんか、くれやしねぇ!!

「そんな暇があったら俺とピーーーー」状態です!!


ぶっちゃけるわ!わたしの描いたサイモンよりエロいわ!

リアル生サイモン!


今のわたし…幸せ?なのかしら……

サイモンが幸せなのは確かだと思う。

わたしを独占出来たサイモンは笑顔が絶えない。

わたしの存在が彼を笑顔にさせているのだと考えたら…優越感もあるし、まぁわたしも幸せなんでしょうね。


前世では16歳で死んでしまったけど、今度はサイモンの隣でゆっくり歳をとっていきたいわ…。







「お嬢さん、その本、気に入ったのかい?薄っぺらくて面白い本だろう?その本はドージンシーンといって、ラジェアベリアって国で大昔に作られた本なんだ!ラジェアベリアって国で出来たマンガって文化の原点らしいぜ!……まあ、言葉は読めないし…中身はちょっと……大人向けだがな。」


古書の店で年季の入った薄い本を手にしたディアーナが笑う。


「うふふ、懐かしい友達を思い出したの……買わせて頂くわ、この夜の帳に聖なる契り2を」


「お嬢さん、読めるのかい!?」


「ええ、読めるの……日本語で書いてあるものね……私へのメッセージも書いてあるのね、ふふ」



『わたしと同じく、地球の日本から来た神の御子の妻へ。


もう一度貴女に会いたかったけど、この先会えるか分からないからここに記すわ。


この世界に来て、貴女は幸せ?愛するレオンハルトさんに会えて幸せ?きっと幸せよね。


わたしは今、サイモンに会えて幸せよ。』


「私も幸せよ……メグミン。」


ディアーナは買った本を胸に抱いてレオンハルトの元へ駆ける。


遥か昔の友人の思い出を語り合う為に。


「メグミンのエロ本見付けたわよー!!!」




━━終わり━━━




夜の帳に聖なる契り2、サイモン×メグミンを書いております。

大人向けです。

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