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番外編━━乙女ゲームってこんなんだっけ?とうとう始まる運命の卒業式

とうとう学園の卒業式の日となった。


ディアーナの断罪が行われる日。


わたしは、まだ卒業の歳では無いので本来は参加出来ないのだが、スティーヴン殿下と同じ歳の兄が卒業なので、強引にエスコートさせて参加させて貰う事にした。


「馬鹿な!僕は今日、フィアンセのコリンヌ嬢を連れて参加する予定だったのに!」


「そのコリンヌ様に、コリンヌ様のご友人の何人かと逢瀬を重ねた事を言われたくなかったら、わたしを参加させなさいよ!」


「ヒイッ!な、なぜそれを!」


たいしてイケメンでもないクセに、なぜか遊び人な兄を脅す。

前世を思い出す前は、お兄様に逆らった事など無い、物静かな妹だったわたしだけど、状況が状況だけに大人しくなんてしてらんないわ!

断罪シーンは見ないと!


いや、乙女ゲームのシーンだから見たいと言うよりは、もし、助けてあげられるならば助けたい。


殿下の糾弾に対し、異議有り!だと申し立てたい。




わたしは、唇を尖らせてぶつぶつ文句を呟く兄を睨みつける。


「あぁん!?コリンヌ様のお屋敷に駆け込んで『兄はコリンヌ様のご友人とパーティーに参加したいんですって』って言ってきたろか!?」


今のわたし、オフィーリアさんに負けない位ヤンキーみたいだと思う。


なりふり構ってらんないもの!

兄は、初めて見た妹の豹変ぶりに、ニボシみたいになっている。

干からびた死んだ魚みたい。干物より細い。


「さあ!行きましょう!お兄様!卒業パーティーへ!」




卒業式は昼に行われる。

これは卒業生が全員参加する。


卒業パーティーは夜に始まるのだが、卒業生であるならば参加は自由だ。

ただし、エスコートするかされるか、パートナーが必須。

このパーティーは卒業生の親など関係者である貴族だけではなく、招待された貴族や王族の関係者も参加する。


そんな中でディアーナは断罪される。


ゲームのワンシーンとしては、いい気味だと思って見ていたが…現実として考えたら、何と恐ろしい状況なのだろうか…。


王族や貴族の大人達が見ている前で、誰一人味方してくれる人も無く責められる、たった16歳の少女。


自分だったら…耐えられない。

彼女の行く末を思うと、思わずこみ上げてくるものがある。


夜の帳が降り、卒業パーティーの時間が近付く。

皆が祝い、笑い、楽しげな声をあげる。


そこにエスコートする男性もなく、一人現れたディアーナの顔は、今まで見た事の無い位に怒りと嫉妬に満ちた表情をしていた。


「殿下!なぜ、わたくしではなく、そのような女を!」


スティーヴン殿下と、寄り添うように隣に立つオフィーリアさんの姿を見たディアーナが、二人に足早に歩み寄りながら大きな声を出す。


ああ…ゲームの断罪シーンが始まってしまった…。

このディアーナはわたしの知っている、転生者の彼女ではない。

完全にゲームの通りの彼女だ…。

これでは、わたしが助けるつもりで異議有りと言っても、この彼女には意味が分からないだろうし、誰にも通じないんだろうな…。


なんて…気分の悪くなる表情を見せるのよ…。

嫉妬に狂った女の醜い部分をすべて寄せ集めたような…。


殿下の隣のオフィーリアさんに目を向けてみると、彼女も辛そうな顔をしている。

これが、あなたの願っていた結果ではないの?


ディアーナから一瞬目を逸らしたオフィーリアさんの表情が変わった…?


ディアーナとオフィーリアさんの表情を見るのに夢中で、殿下の言葉を聞き流していたわ!

国外追放って言った?まだ?

ディアーナは………


これはまた、初めて見る表情だ。キョトンとした…と言うよりは、目だけであちこち確認しながらの、ポカンとした表情。


これはアレだ。わたしが転生前の女子高生だった頃に、初めて行ったイベント会場で迷子になった時の…


「どこじゃ!ここは!?」


な顔だ。


先ほどまでの嫉妬に狂った女の顔をしていたディアーナは居なくなった。

もう、完全に人が変わっている。

今まで学園で見てきたディアーナに戻った…?


ディアーナは不思議そうな顔をしながらも、微妙に納得したようで、静かに会場から出て行こうとした。

泣きわめかず、殿下に縋り付こうとして回りに取り押さえられもしない。

もう、わたしの知っているゲームの内容とは変わっている。


うん、変わりすぎ!


「ディアーナ様!お待ちになって下さい!婚約破棄なされたのですよね?」


会場から出ようとしたディアーナを呼び止めたオフィーリアさんが、跪いてディアーナにプロポーズしました!!


「ならば私と結婚して戴けませんか?ディアーナ嬢…私の聖女…」


美少女が美少女に求婚。

ちょっと驚き過ぎて、口から胃袋出す所だっだわ!カエルみたいに!

ディアーナを聖女だと言った!

じゃあ、主人公のあなたは何なんだ!!

……オフィーリアさんが、男に変わったぁぁぁ!!



そして、パーティー会場に居たわたし達はオフィーリアさんの本当の姿を知った。


この世界を創った、創造主の御子だと。

しかも各国のトップ辺りしか知らないという、極秘重要人物。

つか、ゲームタイトルの聖女、主人公ではなかったのね!

メグミンを聖女にする為に頑張っていたのに!


って言うか、オフィーリアさんの正体イケメンだな!

長い緩やかなウェーブの金髪に、翡翠の瞳の青年。

ゲームに攻略対象として出なかった事が悔やまれる!


ああ…その見た目で、ガサツ男子…ヤンキーも入っていたわね、怖かったもん。

でも、キライではありません…ちょっとチャラいけど…


「…妹よ、今日のお前は何か変だ…朝は僕を脅したり、パーティーが始まってからは悲しげな顔をしていたり……そして、今は気味が悪い位にニヤニヤしている…何なんだ。」


兄はこの想像を越えた出来事と、元オフィーリアさんの「まわりに秘密をバラしたら、テメェらプチるからな!」な脅しにびくびくしている。

我が兄ながら、かなりな小心者だな。


「うふふ…何か色々納得したのと、まあ、妄想、暴走が止まらないのですわ。」


オフィーリアさん…だった人は、レオンハルトという名前らしい。

ディアーナはレオンハルトさんと国を出るとの事。

彼に強く望まれ、国王が後押し…と言うか、国王ですら彼に逆らえないので決定。

ディアーナは納得していないみたいだけど、彼と旅に出る。これはもう覆せない決定事項のようだ。


なぜか殿下も旅に同行する事になってしまっているし。


そして、この日この会場に居なかった者達の間には、ディングレイ侯爵令嬢はスティーヴン殿下から婚約破棄を言い渡され、国外追放となったのだと認識されてしまった。


数日後、ディアーナが国を追われ身一つで出て行ったと噂が流れた。


ちなみに殿下は殿下で、どこぞの子爵令嬢にうつつを抜かして、その娘と遊び歩く旅に出たと噂が流れた。



この先、ディアーナが元オフィーリアさんとどういう関係になっていくのか…わたしには知る術がない。


あのオフィーリアさんの感じだと、ディアーナを不幸にしたりはしないと思う。

深い愛を感じたもの……出来れば…二人がどうなったのか知りたいけれど…。どこかで会えたらいいな…。




って、日々思っていたら…あれから2年近く…。

帰ってきてますね!!王宮に居るわ!!


ディアーナが学園を退学という形で去った後、わたしも学園を自主退学いたしました。

何だか張り合いが無くなったと言いますか…ディアーナもオフィーリアさんも居ない学園がつまらなくなったのです。


だったら結婚を急がせようと父が婚約者候補の話を次々と持って来るのですが、興味無いし!鬱陶しいなぁ!と思って思わず


「うっせぇわ!ほっとけ!」と怒鳴ってしまったのを機に、父も兄もわたしに逆らわなくなりまして…。


このままじゃいかんと、せめて少しでも自立の目処が立つよう仕事でも探さなきゃなんて思い始めたわたしに、王宮で仕事をしないか?とスカウトがきたのです。


「あなたの描く絵を拝見しました。この世界には無いタイプの絵をお描きになる…それは新しい文化になりますよ。その絵で、この国の歴史や、物語を描いてみませんか?」


ラジェアベリア国の歴史書が、同人誌スタイルに…いいのか、それ…。


「神話も漫画で描いて貰う事になるかも知れませんね…神様、壁ドンとか…。」


「わたしの漫画で、神を描くのですか…?何だかバチが当たりそう…。よこしまな妄想が…プラスされそうですもの。」


「むしろ、喜ぶんじゃないですかね?」


王宮騎士のジャンセンさん…この人も攻略対象に居て欲しかった位にイケメン。

ん…?壁ドンとか、漫画って単語をサラリ口にしなかった?


この人にスカウトされたわたしは、王宮で仕事をしています。


今日は、第二王子のピエール様の婚約御披露目パーティー。


わたしは関係者ではないので、参加は出来ないのですが王宮で働く者として、見る事は出来ます。


懐かしい顔を見付けました。





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