オフィーリア追憶。3
「オフィーリアさん、一体どういうつもりですの?」
中庭のベンチで一人寛いでいたオフィーリアの前に、ディアーナと誰だか分からない少女が二人現れた。
いかにも取り巻きです、と言わんばかりの二人はベンチに座ったオフィーリアを見下ろす。
「何の事でしょう?」
オフィーリアは笑顔でとぼけながら、レオンハルトは心の中で声をあげる。
「マジで、ディアーナ悪役令嬢なのか?いや…いやぁ~…想像つかない…イジメとか、香月は滅茶苦茶嫌いだったしな…その香月が前世のディアーナがイジメ??」
脳内一人会議中のレオンハルトを置き去りに、オフィーリアはディアーナの取り巻きらしき少女達に詰め寄られる。
「殿下はディアーナ様の婚約者なのよ!あなたみたいな女が、手を出していい方じゃないのよ!」
やかましいわ、モブ。
俺だって、好きでたぶらかしてるワケじゃないわ!
本音を飲み込み、ニッコリ笑うオフィーリア。
「そんなつもりは、ございません。」
「別にいいんじゃなくて?恋愛は自由でしょ?」
ディアーナの突然の発言に、少女二人が驚きの表情を見せる。
「な、何を言ってるんですか!ディアーナ様!」
「そうですよ、さっきまでたかが子爵令嬢の分際で許せないって、お怒りだったじゃないですか!」
「……そうだっけ?いやあ…でも、まぁ…別にいいんじゃないかなぁと…思ってさぁ」
砕けた口調のディアーナは、令嬢とは程遠い、普通の…どちらかと言えばガサツな少女のようだ。
香月のような……。
「ディアーナ様、お気を確かに!お話し方が別人だわ!」
「ディアーナ様がショックでおかしくおなりに!医務室に行きましょう!」
「失礼ね!人を変人みたいに!」
少女二人は、ディアーナを引っ張りながら中庭を離れて行った。
レオンハルトは考える。
ここは香月のやっていた、ゲームの世界だ。
だから、所々にゲームに添った内容らしきものが見られる。
だが、それ以外に関しては…
そもそも、この世界は俺達が生まれた現実の世界だ。
この世界を舞台にしたゲーム、実在の人物をキャラクターとして使ったゲーム…。
「悪役令嬢ディアーナの中に、香月も居るのか…ははっ
」
ゲームとしての役割が切れる時があるはずだ…本来の世界だけが残るタイミングが。
「うああ!攻略本欲しい!」
オフィーリアはベンチで叫んだ。




