11# 魔獣現る
「今から行く村はな、家畜の羊が魔物化したらしい……巨大化して人を襲おうとしたようだ」
真剣な面持ちで話すレオンハルトにディアーナとスティーヴンは固唾を飲む。
「巨大化って…どの位…」
スティーヴンが尋ねる。
「頭の高さが5メートル程の高さにあるらしい…巨大な魔獣と成り果てたようだ…」
神妙な顔で答えるレオンハルトは、ディアーナの方に視線を移すと、不安げなディアーナに悪戯めいた笑みを浮かべる。
「で、角も超巨大化したもんだから、その重みで地面に頭がめり込んで埋まったらしいぞ」
「「はぁ?!」」
ディアーナとスティーヴンの声が被る。
「メェーって鳴きながらブッ倒れたんで、そのまま倒して食ったらしい……まぁちょっとした羊焼き肉祭りになったそうだ」
いや、それ何の報告だ!
「だからもう魔獣は居ないし戦う事も無いんだけど、瘴気の発生源だけは直しとかないとだし」
「からかうのも、いい加減にして下さいまし!!」
悪戯が成功したかのように声を殺して笑うレオンハルトに、近くにあった松ぼっくりのような乾いた木の実を投げつける。
「はははっ!悪かったって!」
レオンハルトは投げ付けた木の実を左手でキャッチすると、クスクス笑いながらその木の実を擬人化した人形のように扱い、ふざけた声音を出す。
「ゴメンよーだからオイラを投げないでクレヨー」
━━━え…?こんな会話…前もしなかった?…ゲームの中で見たのかしら…?…レオンハルトはゲームに出なかったわよね…じゃあ、誰と?━━━
「まったく、ふざけた話だ!これが神の御子のやる事か!」
憤慨するスティーヴンの声に思考が途切れた。




